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気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


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28話 ゴーレム








 バンブロックの目の前にいるゴーレムは、自分と同じくらいの身長である。

 しかし動きは非常に遅く、バンブロックならば十分に対応出来るであろう。


 ただ普通の剣では刃が通らないほど硬い。故にゴーレムと剣は相性が悪い。

 通常のゴーレム討伐ならば、ハンマーやメイスを使って叩き壊すのが常套じょうとう手段である。

 しかしながらバンブロックが手にするのは、小剣の部類に入るグラディウス。

 いくら魔法の剣だからと言って、この硬いゴーレムに通用する程の力があるのかとい事。

 

 それに……


ーーゴーレムに麻痺まひは効くのか?


 そう、バンブロックには麻痺魔術パラライズがある。だがゴーレムに麻痺まひが効くのかが疑問であった。実際には電撃なのだが。


「取り敢えず叩き込んでみるか」


 バンブロックはゴーレムがぶん回す腕をスルリとかわし、胴体にグラディウスを叩き込む。


ーー麻痺魔術パラライズ


 ゴーレムの表面が弾ける。


 やはり硬い。硬いが少しは表面の土が削れていた。


「くそ、やはりダメか――それなら!」


 だが土が削れたと言うことは、ゴーレムの魔核が見える所まで削ってやれば良い。

 ゴーレムの体の中心位置、つまり胸の辺りには魔核が設置されている。いわゆる動力源である。 

 この魔核を露出さえ出来れば、通常の剣でも破壊可能だ。


ーー時間が掛かりそうだが、やるしかないか


 そう決心したバンブロックだったが、そう思った様に行かないものである。


 突如、鎖ダガーがゴーレムのコメカミに直撃。


 わずかに土が削れて辺りに舞う。

 あまり効いてはいないようだ。


 そして壊れた仕切り壁から顔を出したのはモナだ。


「モナか、やっと会えたな!」


「それは良いんだけどな。知らんけど、何か様子がおかしいと思わないか」


 オーク兵達の事だろう。

 それはバンブロックも気が付いている。あの慌てようは普通ではない。


 バンブロックは戦いながらも返答する。


「ああ、それは俺も気が付いているっ――くそ、硬いな!」


「ロック、多分だけどな。このゴーレムは制御出来ていないぞ」


 確かにモナの言う通りである。

 オーク兵らの動向を見ても、明らかに様子がおかしい。制御出来ていないと言う言葉が合う。


 その内ゴーレムは、あらぬ方向へと進み出した。


 仕切りを次々にぶち破り、その向かう方向は衛兵用の出入口だ。


 慌てるオーク兵達とは正反対に、観客席は大盛り上がりとなる。


 オーク兵達が阻止しようとゴーレムに群がるが、次々に蹴散らされていく。

 そして遂にゴーレムは衛兵用の出入口を破壊、闘技場からコロシアムの中へと侵入した。


 観客席にいたオーク兵達は、次々に観客席から姿を消して行く。中に入ったゴーレムに対処するためだろう。


 その時バンブロックは周りを見渡す。

 

 オーク兵達は混乱状態である。

 しかも衛兵用の扉が開いている。


 バンブロックの脳裏にある言葉が浮かぶ。


――奴隷どれい蜂起ほうき――


 この混乱に乗じて他の剣闘士達を解放して協力すれば、ここから抜け出せるのではないか。

 それに治療室へ行けば、治癒魔術が使えるエルフのルミナスがいる。

 このコロシアムなら、蜂起ほうきする為の人材は揃っている。

 こんなチャンスはもう来ないかもしれない。


 バンブロックはゴーレムの後を追うように、壊された衛兵用の扉へと走る。


「ロック! コボルトがいたぞっ」


 モナの声に足が止まる。


 振り返ると、モナがコボルトと対峙していた。てっきり一人目のコボルトは、ゴーレムに殺られたとばかり思っていたのだが、どうやらしぶとく生きていた様だ。


 振り向いたは良いが、次の行動を躊躇ちゅうちょするバンブロック。


ーー逃げるなら今しかない。しかし……


 バンブロックは葛藤かっとうする。


「ロック、何してる。早く手伝ってくれっ」


 バンブロックはもう1度振り返り、壊れた衛兵用の扉を見る。


ーーここでモナを置いて行く?


「知らんけど、こいつ強いぞ」


ーー目の前の仲間を見捨てるのか?


「クッソ!」


 バンブロックは走り出す。


 向かうは対戦相手のコボルト!




ーー麻痺魔術パラライズ




 白く輝くグラディウス。


 そのグラディウスをコボルトの脳天に叩き込んだ。


 悲鳴さえ上げず、硬直して痙攣けいれんするコボルト。


 そして被っていた骨製のヘルムがパカリと割れ、コボルトはその場に崩れ落ちた。


 き返る観客。


 観客はこれが見たかったのだ。  

 こんな混乱状態にも関わらず、観客席からは割れんばかりの歓声が鳴り止まない。


「ロック、知らんけど、ちょっと焦らし過ぎだろ」


「ああ、すまん。ゴーレムがな……ちょっと気になったんだよ。まあ、ても試合には勝ったしな」

 

 何とか誤魔化すバンブロック。


 その頃になるとオーク兵の何人かが、壊れた衛兵用の扉の前で立哨を始めていた。混乱は収まったらしい。

 それを横目で見ながらバンブロックは思う。


ーー結局俺はここから出られないのか


 少し落胆するバンブロックだったが、その耳には今だに止まない歓声が聞こえ、表情は消して暗いものではなかった。





 その日の帰り道、獣車の列がいつもと違う道に入った。バンブロックは、何度か見たことのある景色の道だ。


 そして獣車は目的の場所に到着した。

 奴隷商人の店が立ち並ぶ区域である。


 通りの両側には宣伝の為か、屈強な戦士風の奴隷や娼婦の様な奴隷が、足枷あしかせを着けられて店先に立たされていた。


 それを見てバンブロックはあせりだす。自分は他へ売られるのではないかと思ったからだ。

 思い返せば最近はそうでもないが、初めはかなり反抗的な態度をとっていた。売られも仕方ない程に。

 それに最近は人気が出て来ているから、売ればかなりの金額になるはずである。

 しかし他へ売られるのが嫌な訳ではない。モナやププと別れるのが辛いだけだ。


 獣車がとある店の前で止まる。


ーーこの店って、ププを買った店だよな


 そんな事を考えていると、オーク兵がバンブロックに足枷あしかせめ、檻から外に出した。ここまできたら間違いない。

 バンブロックは、重い足取りで地面に足を降ろした。

 そして店の中へと消えて行く。


 ウマッハ達が先に店内へ入っていて、店主のオークと何やら会話をしていた。その中にはププもいた。


 バンブロックがウマッハの所に行くと、店主はウマッハを部屋の奥へと案内する。バンブロックもそれに付いて行かされる。

 ププに色々と聞きたいが、この状況ではそれも出来ない。

 

 そして最終的に案内された場所は、奴隷の入った檻が置かれた倉庫だった。

   

 

 






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