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気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


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27話 闘技場の迷路






 バンブロックとププが揃った所で、モナは食事の注文をする。


 注文が終わると、モナは目を泳がせながら質問してくる。“何気なく聞いているだけだぞ”と言うのを、アピールしている様にも見える。


「さっきのさ、何で手をつないでたんだよ……し、知らんけど」


 自分で言い出しておいて、何故か動揺するモナ。

 それに対し落ち着いた返答をするププ。


「ロックさんが呆然ぼうぜんとしてましたので、半ば強引に連れて来まして、結果としてこうなりました。決して悪意はありません。お目障りでしたら謝罪します」


「い、いや、それなら良いんだけどな……」


 嫌悪けんおな雰囲気を悟ったバンブロックは、慌てて話をらす。


「あ、そう言えばドンパンは食べに来ないのか」


 するとモナが少し落ち込んだ様子を見せる。

 そしてププがその疑問に返答した。


「ドンパンさんの脚はつながらないと、治癒士が判断されました」


 やっぱりか、と思うバンブロック。


「それで彼はどうなる?」


「自ら治療を断りました」


「それって……」


「そうです。戦士としての価値がないなら、この先を生きて行く意味が無いと言ったそうです」


 モナが悲しそうな顔をしている。

 そう言えば、モナとドンパンは同じ養成所だったと思い出すバンブロック。

 見知った者が死んで行くのは、心が打たれる。

 バンブロックは部下達のことを思い出す。


「そう言えば俺以外で、人間領内から連れて来られた奴隷を見なかったか?」


 2人は首を横に降った。

 そしてププが説明する。


「人間なら一目で分かりますが、それ以外の種族だと何処から連れて来られたかなんて、見当もつきませんからね」


 言われてみればそうである。

 

 その内、頼んだ食事がテーブルに到着。

 相変わらずの屑野菜のスープと黒パン。

 バンブロックには、スープと黒パンが食べられるのは有難いが、余り旨くはない。

 無いよりは全然良いのだが。


 食事を終えると少し元気を取り戻したバンブロックは、1人控え室へと戻る。


 そして何試合か後に、いつもの様に迎えのオーク兵が来た。

 今回は鎧を支給されなかったが、お決まりのドクロヘルムだけは渡された。


 冬夜祭が終わると急に寒く成ると聞いていた通り、昼間でも最近は腰布だけでは辛くなってきた所だ。

 しかし今回は腰布とヘルムだけの戦いなのだ。ちょっと震えるバンブロック。


ーーという事はモナもきっと薄着だな。フフ


 ちょっと想像して興奮するバンブロックだった。


 今回案内されたのはいつもの入場扉の前では無く、衛兵用の扉の前だった。

 余り大きくはない出入り口だ。

  

 そこでラックから、武器を選ぶことを許される。


 もちろんバンブロックは白く輝くグラディウスと、木製のヒーターシールドを手に取った。

 ヒーターシールドを選ぶ理由は、盾にかどがあるからだ。

 丸盾と違いかどがあれば、鋭角な武器と成り得る。


 しばし扉の前で待つ。

 闘技場を作り変えているらしい。

 迷路となる仕切りを設置しているのであろう。

 どうやらこの試合が、今日のメインイベントになるようだが、バンブロックはまだそれを知らない。


 そして場内ではいつもの様に、解説者が声高らかに話を始めた。

 ここでやっと魔術封じの首輪が外される。


 試合開始は近い。


 そして突然扉が開いた。


 オーク兵に押されて闘技場へと入るバンブロック。


 それは確かに迷路だった。

 観客席からでも見えるように、天井の無い迷路だ。


 しばらく歩くと、闘技場の中央でガシャンと音がした。

 バンブロックには聞き慣れた音。

 檻の扉が開く音だ。


ーーこれは魔物か猛獣を解き放ったな


 バンブロックは、奴らの考えそうな事だと思った。


 とは言ってもやる事は変わらない。

 バンブロックは警戒しながらも迷路を進む。

 時には後ろも警戒し、時には立ち止まり音にも警戒する。そして観客の視線の先にも注意する。

 

 そこでバンブロックに足音らしきものが聞こえた。

 それは重く、引きずる様な音。


 観客席が急に『ワッ』と盛り上がる。


 その足音に、誰かが出くわした様だ。


 次に同じ辺りから『キャンキャン』と犬の鳴き声が聞こえた。


ーーコボルトめ、寄せば良いのに手を出したな


 意外と近くだが、壁の幾つか向こう側。

 観客達はその音の方に視線を向けている。

 しかしバンブロックの前方辺りにも、視線を時々向ける者が何人かいた。


ーー誰かが来ているらしいな。モナかコボルトか……


 バンブロックは歩くのを止めた。

 待ち受けるつもりだ。


 すると前方で鼻を高く上げて、スンスンするコボルトが曲がり角から出て来た。


 バンブロックは先に相手に気が付いたが、コボルトも直ぐにバンブロックに気が付いた。


 数メートルの距離で対峙した両者。


 コボルトは丸盾にショートソード。それに骨製の狼型ヘルムを被っていた。


「一騎打ちなら得意だ」


 バンブロックそう言って、ドクロヘルム越しにニヤリと笑う。

 余裕を見せつつ観客の視線を見ると、バンブロックの直ぐ横の辺りにも視線が向けられていた。


ーー壁1枚隔てて向こう側って所か


 観客席からの喧騒けんそうで、足音が聞こえづらい。


 コボルトは待ちきれずに、吠えながら走り出した。


『ガウウ!』


 コボルトが地面を蹴って飛び掛かる。


 その時だ。


 突然壁が突き破られた。


 観客が『オォ』とどよめく。


 壁と言うより仕切りなのだが、こうもあっさり突き破られるとは誰も予想はしていなかったのだろう。

 その証拠に観客席で立哨していたオーク衛兵らが、慌てている様子が見える。

 かと言ってここで試合が中断するはずもない。


 仕切りを突き破って来たのは、土で出来た人型の魔物、“ゴーレム”であった。


 仕切りを突破したゴーレムは、ちょうど飛び掛って来たコボルトとぶつかり、それを押し潰す様に倒れた。それはバンブロックの目の前である。


 ゴーレムは起き上がりながら、コボルトを踏み潰す。そして骨が砕ける音をさせながら、バンブロックの方に向き直る。

 重量のあるゴーレムに踏み潰されたら、コボルトなどもう見る影もない。


 バンブロックもゴーレムは知っていた。

 鉱山の廃坑はいこうに良く現れる魔物で、兵士の時に何度か討伐に向かったこともある。

 元々は魔術師が大変な苦労をして作り出し、使役魔物として活用するものだが、放って置くと野生化して単なる魔物となる。

 それを捕まえてここに連れて来たのか、作り出したのかは分からない。


 そんなゴーレムにも欠点はある。

 重量があるからこそ動きが鈍いのである。








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