表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/18

11話 ケープベアー








 バンブロックはバーバリライオンを知っていた。

 かつて魔物化したバーバリライオンが開拓村を襲って、村人達を何人も食い殺した事件がある。その討伐のために部隊が送られた。

 その派遣された兵士の中に、隊長になる前のバンブロックがいた。


 その時は何とか討伐に成功したのだが、犠牲も大きかった。討伐には20人近くの部隊で向かったのだが、無事に帰ってこれたのは半数ほどである。

 ただし相手が何処にいるか分からない森での戦いと、周りを囲われた闘技場の中での戦いでは条件が違うと言えばそれまでだが、バーバリライオンが強敵なのは変わらない。

 ただし今回は魔物化はしていないバーバリライオンである。


 そして剣闘士達の鍛錬場だった広場だが、建物と広場を高い柵で仕切り、戦いが出来る場所へと作り替えていく。

 たかが創立記念でここまでするかとバンブロックは思うのだが、金持ちオークなら当たり前の催し物らしいとモナに聞かされた。

 そこでバンブロックは思い起こす。


ーーそう言えば人間の貴族もそんな感じだったか。結局オークも人間も金持ちは同じってことか


 そもそも剣闘試合はグリーンスキンの社会では当たり前であり、人気の娯楽てもあった。人族の社会に吟遊詩人や演劇がある様に、グリーンスキンの街へ行けば普通にコロシアムが存在した。

 それで金持ちともなると、自宅で剣闘試合のパーティーを開催して楽しんだりもする。

 グリーンスキン社会では血なま臭い戦いが、常に生活の直ぐ近くにあった。戦闘民族と言われる所以ゆえんである。


 そして闘技場が急速に出来上がり、遂に闘技試合が行われる準備は整った。

 バンブロック達の試合の前に、この剣闘士養成所で唯一ランクAで獣人である“グワグワ”の試合があった。

 彼は長らく負傷で試合に出ていなかった為に、バンブロックは彼の試合を初めて見る。怪我からの復帰戦という訳だ。


 その対戦相手は魔物化したケープベアーである。

 体長2.5メートルで体重500キロはある。


 普通に考えて人族が敵う相手ではないが、グワグワはヒョウの顔した獣人族である。元々の身体能力が半獣人の上をいく上に、剣闘士ランクAのベテラン実力者である。

 そのグワグワならば勝てる敵であろうと、誰もが考えていた。


 だが試合が始まると怪我の後遺症なのか、グワグワの足の動きに違和感が見える。

 始めはケープベアーがひるむほどの猛攻撃を加えていたのだが、時間が経つにつれて段々と勢いが落ちていった。

 そして次第に左足を引きずる様になる。

 

 バンブロックがつぶやく。


「もう駄目だな。戦いを止めないとあいつ死ぬぞ」


 モナも同意して、真剣な眼差しで大きくうなずく。


「ああ、私もそう思う。まあ、知らんけど」


ーーなんか調子狂うよな


 それから直ぐの事だった。


 ケープベアーが走り寄る。


 グワグワが盾を構える。


 そこへ飛び掛かる様にして、ケープベアーが襲い掛かった。

 

 なんとそれを盾で受け止め、横へ受け流すグワグワ。

 

 しかし受け流される寸前、ケープベアーは大きく左腕を振るった。


 グワグワはその大きな盾の後ろに隠れて、その鋭い爪攻撃を防ぐ。


 「バキッ」という鈍い音が響いた。


 グワグワの盾はその鋭い爪を確かに防いだ。防いだのだが、その代償に盾が二つに割れてしまったのである。


 直ぐに割れた盾を捨て、距離を取ろうと後ろへと下がる。

 何とかケープベアーの鋭い爪は防いだのたが、その攻撃は余りに重い。万全の体調ならば問題無かったのだが、怪我の後遺症から踏ん張りが効かず、後ろへ下がる時にふらついてしまう。


 その隙にケープベアーは体勢を整えると、吠え声を上げながら後ろ足で立ち上がる。


「ガアアアッ」


 もの凄い威圧感だ。

 そして右腕の爪を大きく振りかぶる。


 ここでグワグワは、今の脚の状態で防戦に入ると不利になると思い、攻撃に転じた。

 重量のある敵の場合、脚を使って動き回り敵を翻弄ほんろうするのだが、今の脚の状態だとそれが出来ない。

 だが、脚を使わなくても上半身の早さならケープベアーより自分が上。先に攻撃を与えられると考えた。


 前に大きく一歩進み、持っていた剣を真っ直ぐ突き出す。

 

 その切っ先はケープベアーの胸元へと吸い込まれた。


 グワグワは「勝った」と思ったに違いない。

 その証拠に顔からは笑みがこぼれた。


 だがケープベアーの眼光は失われていない。

 そこでグワグワは、さらに剣を奥まで差し込む。


 ケープベアーからは苦しそうな声が聞こえた。


「グルルルル……」


 刺された剣を伝って地面へと滴る鮮血。


 観客や見物している剣闘士達から感嘆の声が漏れた。  

 誰もがグワグワの勝利を確信していた。


 だが直ぐにグワグワの笑みは失せる。

 ケープベアーが右腕を振り上げたからだ。


 グワグワは咄嗟とっさに横に避けようとする。


 しかしその時、怪我をしている足に力を込め過ぎてしまった。

 すると激痛が走り、その場から動けなくなる。


 「しまった!」と思った時はもう遅かった。


 ケープベアーの爪がグワグワの右腕を襲った。


 次の瞬間、何かが空中を飛んでいく。


 そして地面に何かがボトリと落ちた。


 それはグワグワの右腕だった。


 グワグワは何が起こったのか直ぐに理解出来ず、ただ呆然と立ち尽くす。


 しかし胸に剣を刺されてもなお攻撃してくるとは、驚くべき魔物の生命力である。


 ワナワナと立ち尽くすグワグワに対し、ケープベアーが大きく口を開く。

 

「ガアアアッ」


 吠え声を響かせて、グワグワの頭に喰らい付いた。


 静まり返る広場に、何かを噛み砕く咀嚼そしゃく音が響く。


 ここでドラムが激しく叩かれた。


 勝負は付いたのである。


 我に返ったオーク兵がワラワラと広場へと入って行き、傷付いたケープベアーに槍を投げていく。


 そして無数の槍で串刺しになったケープベアーは、二人のオーク兵を道連れにして、最後は音をたてて地面に倒れた。


 奴隷の救護班がグワグワに駆け寄るのだが、その時すでに息は無かった。

 

 これには招待された観客や剣闘士が、急にざわつき始める。


 しかしこの結果に一番驚いていたのは、主人であるウマッハだった。負傷したとしても、まさか負けるとは思っていなかったのである。

 ましてやランクA剣闘士が、こうもあっさり死ぬとは想像もしていなかった。


 ランクAの剣闘士ともなると、育て上げるまでにかなりの時間と金が掛かっている。それを一瞬で失ったダメージは、剣闘士養成所を経営するウマッハにとって、余りに大きな損失だった。


 次の試合はバンブロック達であるが、そこで主催者であるウマッハが躊躇ちゅうちょし始める。

 最近人気が出て来た剣闘士が2人も出場するのだ。それも対戦相手は手加減を知らない猛獣のバーバリライオン。

 知能のある者同士の対戦であるならば、降参するか戦闘不能になれば試合は終わる。では野生のバーバリライオンはどうか。そんな事が出来るわけ無い。

 二人をここで失う訳にはいかない。ましてやモナは所有者が別にいる、借りてきた剣闘士である。

 だがここで試合を取り止めれば、主催者としての面目が立たない。

 ウマッハは迷った。


 そして結局のところ試合は行われるのだが、バンブロックとモナの装備はかなり自由に選べるようになった。

 特に防備に関しては、金属製鎧まで選択肢が広がった。少しでもリスクを減らす為である。

 それにはバンブロックとモナは大喜びであった。


 そんな中、遂にバンブロックとモナによる、バーバリライオンとの戦いが始まる。


 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ