倉庫姫
いつもいつも諦めている。
盛り上がる教室も、
先生のポジティブな言葉も、
クラスメートの冗談も、
別の人たちに向けられただけの
どうでもいいものだ。
私はボーッと
今日も 窓際の席で 空を見上げる。
こんな晴れた牢獄のなかに
あと一年間もいるのは
気の遠くなる話だった。
ずうっと鞭に打たれたまま
朝から夕方まで過ごすような苦しみ。
それが私にとっての、
学校だった。
今は春だが、
風は冷たい。
夕暮れになって、皆が帰るのを待ってから、
私は誰にも見つからないように
動き出す。
広いグラウンドの隅の
備品しかない古びた倉庫。
そこだけが私の居場所。
倉庫の窓の前、
埃だらけの場所に
スカートのまま座る。
遠くから野球部の声が聞こえるけど、
全く知らない国の人たちの
知らない言葉たちみたいだった。
ため息は 埃と混じって
生暖かく 汚れている。
ここにいる生き物は
私と虫だけ。
クモの巣のクモの方が
ずっと クラスメートたちより
身近に思えた。
この足に這い上がってくる
蟻は 優しい。
君には
私は 笑いかけられる。
時々 他人はナイフで刺してくるけど、
蟻はナイフで刺してきたりなんかしなかった。
地面に返してあげると、
フラフラしながら
どっかへ 行った。
ふと
輪の中の笑顔たちが浮かんで
苦しくなる。
胸ポケットのシャーペンの
芯を出して 腕に突き刺す。
ただ、折れて、
別に痛くはなかった。
どうでもいい 芯の跡の 灰色の点。
肌にポツンといる それを
ポツンとした私は ぼうっと見る。
教室の誰よりも 私と同じ
でも それは すぐに消えてしまうから
私は やっぱり 独りになる。
仄暗い倉庫に オレンジ色が刺して
今日も 一日 終わろうとしている。
途方もなく続く冬のように
春に焦がれて 窓を見上げる。
あと一年 毎日 耐えるということが
できないだろう けれど
何も動けず 諦める。
さっさと終わるのに長い日々。
倉庫の中にて
春を待つ。