キスしないと出られない部屋
『キスしないと出られない部屋』
「は、はあ?」
「なんだよ、、これ」
焦りと怒りを露にしていたのは時鮫 雫
その隣で呆れ顔を浮かべていたのは天野 海星
小学生から幼馴染である高校生の2人はある日突然「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められてしまった
「意味わっかんないんだけど…てかなんであんたと!?」
「いやこっちのセリフな、とりあえず何か使えそうなものが無いか調べよう。雫はあっちをお願い」
「はあ…さっさとこんな部屋出よ」
無機質な部屋にはベッドが一つ、腰下ぐらいの高さのタンスなどが置いてあった
途中鍵などもあったが使う場所など無く扉をこじ開けようとしてもビクともしなかった
「はあっはあ…どうっすんのよ、これ」
「うーん…やっぱりキs」
「無理だからあ!なんでそもそも海星と!?もっといい人いたでしょ!」
「いやおい、本人の前で失礼過ぎるだろ」
駄々をこねる雫と呆れている海星は時計のない部屋ではもう何分、何時間経ったのかさえ分からず次第に思考も低下していく
「なんか、ボタンとか…ないのー、もう疲れたあ」
「あるわけないだろ、何周探したと思ってんだ」
「ううー」
体感ではもう何時間と経っている筈だがお腹が減る気配はなくただ気の滅入るような暇を持て余していた
「……どうすんのよ、これえ」
「そんなの…はあ」
何か覚悟を決めるように目を見つめ互いにため息をつく
正座で向かい合い暫くの間睨めっこをした
「なんで、はあ…意味わかんない」
「俺だって意味わかんねえよ、クラスで人気の巴さんとかが良かったよ」
「はあ?それ本人の前で言う!?」
「わ、私からするから!待つのなんか恥ずいし!」
「俺だって恥ずいよ!」
「知らないわよ!!」
ゴクッ
海星の目を見つめ息を飲む
「す、するから…ね」
「う、うん」
海星の視界が暗くなると同時に数センチ下の唇に柔らかい感触が当たった
体感3秒程経ったあと雫は勢いよく離れ鍵の空いた扉の方へ急ぐ
「あ、ちょ!」
「こっちくんなあ!もう!!」
そうしてお互いファーストキスを捧げ合い、無事に「キスしないと出られない部屋」を脱出したのだった