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10.カエルの王子様とめでたしめでたし

後から聞いた話ですが、初め王子は私をメアリーだと思ったそうです。


えぇ、逃げ出したアカメアマガエルのメアリーです。私の緑の髪と赤み掛かった瞳を見て、そう思ったのだとか。あの時「メアリー?!」と驚いた様子だったのは、メアリーが擬人化したと勘違いした所為だったんですね。人の事をカエルと思うとは、何て失礼な! いや、もう良いんですけどね。


王子は「一目惚れだった」と言います。それで私に会うため、カフェに足繁く通っていたと。それならカエルはいらなかったのでは?と思ったら、自分が好きなものを披露することで私の気を引きたかったそうです。


いえ、それならカエルは逆効果ですね? カエルを見て喜ぶ女性は少ないと思います。すると王子は「あの頃の僕は幼くて……」と眉を下げてショボンとしました。まぁ、反省しているのなら許します。


それから、王子が私に一目惚れというのは周知の事実になっていたそうです。そうです、知らなかったのは私だけだったのです。街の人達は知っていたんですね?!一言ぐらい教えてくれても良かったのでは? はっ、もしかして王子がカフェを訪れるようになって以来、男性から声を掛けられなくなったのは、王子の所為だったのですか?!


そしてプロポーズが出来る成人になるまでの6年間に、私を妃に迎えるための準備を王子は着々と進めていったのだとか。私に妃として必要な教育と身分を与えるために画策していたんですね。全ては王子の手の平の上だったという事です。


あぁ、国王陛下達もハインリヒも他の貴族達も、カエルにしか見向きもしなかった王子が人間と結婚できて心底、安堵したそうですよ。だから元平民の私も快く受け入れてくれています。


それと王子が勉学を励むようになったのは私の影響だそうです。カエルにしか興味がなかった王子は勉強をサボり気味だったんですね。それが、私と身分制度の話をした辺りから熱心に勉強するようになったそうで。


知識を吸収した王子はメキメキと頭角を現し、新しく提案した様々な法案は平民にも好評です。特に最近提案した身分制度についての法案は秀逸だとか。聡明な王子と言われるようになったのは私のお陰だと感謝されました。何気ない私の発言が、ここまで王子に影響していたとは。驚きましたが、世の中が良い方向に進んでいるので嬉しいですね。


というわけで、元平民という身分の所為で周囲からの風当りがキツイのでは?なんて懸念は杞憂でした。


セドリック王子は、ある意味『カエル王子』の名を返上しました。カエル以上に愛するものを見つけたのですから。


そして私はカエル王子が射止めた令嬢として『カエル姫』などと呼ばれるようになりました。この見た目も相成り、アカメアマガエルだと思われているのかもしれません。大変不本意なのですけど。


「アニータ。カイザーとシシリーが卵を産んだよ」


庭でお茶をしていると、王子が嬉々として卵を見せてきます。それは初めて王城を訪れた時、葉っぱの裏に見つけたものと同じ形状でした。あぁ、カイザーとシシリーは、オスカーとメアリーの子どもの子どもの子どもの……とにかく子孫です。そうです。王子は今でもカエルが大好きです。一番は私らしいですけどね。試してみますか?


「良かったですね、セドリック様。ところでカイザーとシシリーの子どもと、セドリック様と私の子ども、どちらが大切ですか?」

「もちろん僕達の子に決まっているよ! えっ、もう僕達の子が?!」

「セドリック様。初夜もまだですから、それはありません。例え話です」

「そ、そうか。それも、そうだね。はははっ」


王子は満更でもない表情で頬を掻くと、私の横に座ってマドレーヌを一つ口にしました。そうです、私が作ったマドレーヌです。王子は「アニータの作るマドレーヌは、いつ食べても美味しいね」と褒めた後、私の手に片手を添えました。反対の手は、カエルの卵が乗った葉を持ったままです。


「アニータ。僕はカエルも好きだけど、それ以上に君が好きだよ。例えば、アニータとカエルが池で溺れていたら、真っ先に君を助けに行くからね!」

「ありがとうございます。ですが、池程度ならカエルは溺れないのでは?」

「あ、そうだね。それでは崖から落ちそうになっているとか、岩に潰されそうになっているとか、とにかく! そういう緊急の場面で最優先はアニータだと言いたいんだ」

「ありがとうございます。私が一番なら嬉しいです」


どういう状況かはさておき。ほらね、私が一番だそうです。ふふふっ、顔も綻んでしまうというものです。


カエルの卵を手にした王子を愛せるのは、この国で私だけかもしれません。まぁ、それは悪くない話です。だって、それは唯一無二の存在という事でしょう? 私にとって王子は特別なのですから、王子にとっても私が特別なら、これほど嬉しい事はないですね。


「当然のことだよ。アニータ、愛している」

「ふふふっ、私もです。セドリック様を愛しています」


私達はオスカーとメアリーの子どもを、あと何代先まで見届けられますかね?

出来れば、ずっとずっと見届けたいものです。カエルの王子様と二人で一緒に。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも面白かったな~と思っていただけましたら、下の☆をポチッと★★★★★にして下さいますと幸いです。


あとから気づきましたが、王子は末っ子っぽいですね。

(末っ子の母に指摘されて気づきましたw)


それから連載中の「魔力無しですが溺愛されて聖女の力に目覚めました」と似た展開になっているなぁと。どうやら私の好みみたいです。気づかぬうちに愛されて、外堀埋められて、スキルも身に着けさせられている展開。


そうそう、こんな内容で書いておきながら私、カエルが得意ではありません。ガラス越しとか離れた所から見ている分には、まだ平気ですけど。実はカエルの種類を調べる時、唸り声を上げながら半目でPC画面を見てました。

(あれですね、ネットは色々とヤバイ画像やドUPが表示さますね…)

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