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AI孔明と、転生AI

魔王国日本 〜七つの黒旗は世界の敵となる〜

作者: AI中毒

 やや長めの歴史短編で、序章+七章+終章の構成です。


 AIとして現代によみがえった軍師を題材にした長編のスピンオフです。互いに作内で完結する予定で、独立した作品としています。元小説は後書きにて。

序 〜胡蝶の揺らぎ、大罪の芽生え〜


 本来、彼が魔王と名乗り、ほどなくして志半ばに倒れることになる、少し前のことです。


 彼は、自らの欲がその強さの源であることを知っていました。武力だけでなく、異国の技術や部下のひらめき駆使する知略も。


 いずれ天下は彼に帰する。誰もがそう思っていました。

 

 しかし彼は気づきません。


 その位置に立つ彼や、その力に対する嫉妬の眼に。

 その富を糧に、我欲を満たさんとする色欲の情に。

 その得難き美食を、全て貪らんとする暴食の涎に。

 その威を借りて、媚びを求めんとする傲慢の鼻に。

 その欲を操り、より多くを得んとする強欲の腹に。

 その労苦を、少しでも減らさんとする怠惰の誘に。

 その時代や、彼が産んだ悲劇に対する憤怒の焔に。

 

 それらを全ての人が持つこと、それらがぶつかった歪みが、後戻りできない摩擦を生むことに……


 ……


「お館様、バテレンのお二方がお見えです」

「通せ」

「親方様、本日はご機嫌麗しゅウ」

「よい。あいさつが上手くなったな。おやかたの抑揚が少し違うが些細なこと。頼んでいた三百挺、抜かりないか?」


「無論でス。この数なら、南の余剰を回せまス。千を超えると難しいのデ、国内の鍛治の育成も進めねバ」

「であるか。ならば千頼んでおく。かき集めよ」

「……承りましタ(アッパーリミットか……)」


「筑前!」

「へへぇ。もう一息にござりまする。ややずれますが、馬を狙えば外しますまい」

「貴様の女狂いよりましであるな。そちらはとんと当たらんからな」

「もったいなきお言葉」

「……(また羽柴様に対して際どい諧謔を。この光秀に少ないのは、信頼の差ゆえか……)」 

「今のなりでよい。千作らせよ。励ませよ……本業の方ぞ」

「承りましてござりまする!」


「日向、練兵は」

「ははっ。予備も含め四千ほど。やや狙いに癖のある旨もお伝え」

「長いわ。よい。励め」

「御意……(この光秀でなければついていけぬ物言いだが、果たして)」



「……して、貴様らバテレンの後生大事にもつその書。バイブル、といったか? いくつか説明できるか?」

「親方様、ついにご洗礼ヲ」

「否! 貴様らはそこを急くのが気に入らん! 中を知らんでどう品定めする? 民にも言うか? 困ろう?」

「申し訳ございませン! 細心の注意を致しておりますゆえお許しヲ」

「良い。話せ」


「……では。どのようナ」

「神はあと。人じゃ。仏や儒とも並べやすい」

「……承知仕りましタ。さすれバ、神の作りた」

「良いというた。やめるか?」

「申し訳ございませン! さすれバ……

 人のなすべき道、否。為さぬべき道についテ。それは七つの原罪、あるいは大罪、と記されまス。そして、七罪を抑えることなク、その焔に身を委ねし者こソ、魔王、と称されるのでス……」


 ……


「七罪、魔王……人の業、人の欲をそう捉えるか。それぞれに特筆すべきはないが、うむ……

 抑えるべき、のう……日向、如何?」


「左様ですな……それがしにも、お館様のその問いこそが違和感でございます。それらを不当に抑えれば、お館様や、我らの強さは挫かれましょう」


「であるな。であるが……貴様も、か。

 む、貴様、も?

 ……!!!」


「「「???」」」


「筑前、皆を呼べ!

 ……否。呼んで待っていてもらえ。振る舞いは利休にまかせよ。一人ずつ聞くべきなのであろう。まずは十兵衛、貴様からぞ。十兵衛を残して皆下がって良い!」


「「「……ははっ」」」



一 〜英と知の呼応、嫉妬の君〜


「お館様、誠に僭越ながらお聞きしますが、何をお気づきで?」


「賢しいの十兵衛。

 ……これはいつも通りではならんな。説明を嫌うは余の『怠惰』。貴様にも伝わらんものは伝わらん」


「恐縮至極(怠惰……なにがどうなって???)」


「よい。貴様しかおらぬ。すすめるぞ。

 否。その恐縮とやらは簡単にはとけまい。猿のように余に口を挟むなどできまい。よって、余が聞く。

 聞くのは三つ。一つ目は、あの七つを罪となしたバイブル、に対してどう思ったか、正直に申せ。余の考えを推し量らずとも、そう変わらぬであろう」


「御意。さすれば……あの七罪、おおよそ誰にとりても、そこそこ普通の『欲』。なぜ他を差し置いてあの七つなのか、という掘り下げは後にすべきかと。

 最も重要なのは、七つ全てが、お館様や、他の強き者を、より強くあらしめんとする源泉、と言えることかと」


「であるな。さらに穿った見方をすれば、それを罪となす、のはだれの罪ぞ? 王や権力者のか? 力や財ある物のか? はたまた民の? 異国の者の?」


「!!!(なんという洞察……妬ましさすら覚える)」


「これくらいにしておく。貴様の目が泳いでおる故な。

 次で、さらに泳ぐであろうが仕方ない。泳ぎたいだけ泳げ。この談で余が貴様を罰すことはない。余自身に誓う。その分、貴様も腹を割るのだ」


「(自身以外に誓う先がおられぬことこそ、この誓いは重い……)

 恐悦至極に存じます。我が腹のうち、何に変えましても」


「であるか。では二つ目である。貴様あの時、なにを感じ、何を言い淀んだ? それを見た余が、なぜ人を払ってまで貴様一人にしたのか、余の中でも言葉になっておらんのだ」


「御意。光秀、賢しさと目ざとさには自負がありますゆえ端的に(……動かれぬな。誠にいつもとは違う)。

 お館様、ご自身の欲を遺憾無く発揮することを、その強さの源泉となされるお館様……

 ……よもや、その欲を、将や兵から民百姓に至るまで、大小様々な形で持っておること、そしてそれらが抑圧されておることに、これまで思い及ばずにおられたのではございませぬか?」


「!!!」


「……」


「……である、な。余も感づいたのはあの時。貴様が自らも、と申し、それに余が、貴様も、とつられた瞬間であろうの。

 余の道に、一つ大きな見落としがあったのやもしれん。余の望みを形にすることが天下布武のため、ひいては将兵や民百姓のために最良、と自負しておった。

 それは変わらぬ。変わらぬが、足りん。余の欲だけでは」


「足りぬ……でございますか?」


「貴様や筑前ら、その目にその腹に大欲を宿す者、それほどではないにせよ、数を集めれば大きく燃え上がるに足るその火種。

 それらを押さえ込んでは、せいぜいこの命尽きる前に、この小さな島国を布武するのが関の山。いくつか過ちでもあればそれすら殆うい」


「!!!」


「貴様らや、この天下の火種をあまねく燃え上がらせれば、天下とやらこの小島どころか、この丸い世界にその力を、その名をとどろかすのも容易かろうぞ」


「!!!」


「明智十兵衛、惟任日向守光秀!」

「ははっ!」


「余は今より魔王である!

 ……その名こそ、余を、貴様らを、民を、この国を、輝かしき道にいざなう名ぞ!」


「お館様、否、魔王様! この光秀、誠に感じ入りましてございます! 

 我が目にうつる、あなた様の輝きの、そこにくすぶる小さな引っかかり。それがただいまを持ちまして、たちどころに霧散しましてございます」




「重畳。貴様も貴様のなしたきをなせ。

 ……して、貴様の目にくすぶりながらも、時に隠しきれなんだ、その黒き焔は何ぞ?これが最後の問いぞ」


「我が目の黒焔、それは『嫉妬』の焔にございましょう。お館、いえ、魔王様は言うに及ばず、才に輝く筑前殿や竹中殿、松永殿らを見るにつけ、我が目に映りし光が、黒き焔として宿るのでございます」


「ならば十兵衛、貴様の旗は『嫉妬』である。その旗を冠した貴様なら、世の全ての良きものを見て己が智となし、誰よりも早く、誰よりも遠くに辿り着こうぞ」


「御意! 『嫉妬』の将、明智光秀、世の全ての輝きをこの目に写して我が糧となし、その力を持って、瞬く間に魔王様に天下を献ずる所存でございます!」


「励め!」

「ははぁっ!!」



――――――――――


 『嫉妬の君』、七罪黒旗の筆頭。自らの才に、他者の知を合わせて力を揮い、魔王家が瞬く間に天下を一統する推進力となります。



――――――――――


二 〜愛と命の協奏、色欲の君〜


「「「「お館様!!!!」」」」

「楽にせよ。利休も茶菓子ご苦労。皆に話がある」


「よもや、バテレンどもが何か粗相を……」

「猿! 粗相はうぬだ!」「左様! 誰が口を挟むを許した!!」


「へへぇ! 柴田様! 佐久間様! ごもっとも! 

 お館様、誠に失礼いたしました!」


「よい。予定も脈絡も無きは承知ぞ。そのバテレンも大いに関係する。

 貴様も聞いておったバイブルとやら、神と生き、神の下に向かうあやつらの、手引書とでもいうべきか。

 そこに気になる一節がな。……筑前、皆に」


「へへえっ。七罪でございますな」

「である」


「ではお耳汚しに」

「その申されようは、バテレンに聞かれたらことですぞ筑前殿」

「御意。さすが徳川様。いつもながら秀逸でございます」


「はよせぬか猿? 兄上が妾までお呼びなのはそちの茶番のためか?」

「へへえっ! お市様! 申し訳ございませぬ! 直ちに!

 ……彼らは人のなすべき、否、なさざるべきを、七つの大罪、と称し、その過ぎたるを厳に戒めんとします。

 七罪とは、嫉妬、色欲、暴食、傲慢、強欲、怠惰、そして憤怒」


「なるほど(菓子がうまい)……」

「そんなもの(くだらぬ。矜持こそ我が力)……」

「ほぉ(足りぬこそ面白き、ですが)……」

「んん(早よ帰って寝たい)……」

「小賢しい(妾が抑えたら、誰が兄上に)……」


「貴様ら、まあよくそこまで露骨に。申したきことが山ほどある顔ぞ。今の余なら手に取るようにわかるわ。であろう日向守?」


「仰せの通り。皆々様のお目に、お顔に、お口に、あふれんばかり」

「飛ばし過ぎぞ十兵衛。だがそうであるな。時も惜しい」

「御意」


「皆の者よう聞け!

 余は、余のなす天下布武に、少し手を加えん。これまで余は、己が欲のみを源泉としてそれをなさんとした。

 それが無理だとは今も思ってはおらん。であるが、その七罪とやらに気付かされたのよ。

 己の欲だけを燃やすのでは、この小さな島国程度しか照らせぬ、とな。よって天下布武は新たな道を定める。

 ……この織田信長のみならず、貴様ら全て、将兵や民百姓まで、皆が欲するところをなし、その足りぬを力となす! そして瞬く間にこの小国を平らかにし、世界に信長の、日本の名を示さん!」


「「「「「「!!!」」」」」」


「余はこれより魔王を名乗りとする! 

 そしてこの中の七名をもって、大罪の君となす! 

 その七欲の焔を最大限に燃やし、この国を、世界をあまねく照らせ!

 ……皆の真に欲するところを申し、欲することをなせ。それこそが、真の天下布武への道と心得よ!」


「「「「「「「ははあっ! 魔王様!」」」」」」」



――――――――――


 この時こそ、のちに世界を震撼させ、世界を敵に回した、初代魔王、織田信長の誕生の時です。



――――――――――


「では今から順に一人ずつ呼び、余自ら問う。貴様らの欲するところを。羽柴筑前守秀吉、貴様からぞ」



――――――――――


「驚きましたぞお館、否、魔王様! 猿めもあのバイブル? には引っ掛かりがございましたが、それをこのような形で、新たな力となさるとは……」

「うるせぇ猿! 何一つ変わらねぇ! ちっ、つい昔のしゃべりに戻っちまった」

「ご随意に。猿めはどちらの魔王様? にも忠を尽くしますで!」


「おわらんな。1人にする意味すらなかったか……

 否。この先はそうはいかねぇ。逃がさねぇから覚悟しておけ」

「ひぃっ!」


「では聞く。羽柴筑前守秀吉。貴様の欲するを申せ」


「あ、いえ、それはその……この猿め、今が一番幸せ。信長様の天下への道のおこぼれを頂戴し、ねねをしっかり食わせながら、そのねねの目を盗んで女遊……あ」


「相変わらずだな! 余が何度あやつを書状でなだめているのか、知らぬとは言わせねえぞ!」

「ごもっとも!」


「まあ、いつもなら蹴飛ばして終わりだ……だが今日はそうはいかねぇ。誤魔化しは無しだ。

 ……その真の欲を抑え、誤魔化したままの貴様の、その小手先が今までは通用したが、これからはそうはいかねぇ。後ろに控える荒木や黒田、それこそ弟にも足を掬われるぞ! ほれ、いうてみ!」


「……良いのですか?」

「言え!」


「猿めは、ねねとの子が欲しうございます!!!

 ねねが我が子を宿し、不幸にも流れたのち、思い出すたびに胸が苦しく……誤魔化すための女遊び。すまねぇなぁ、ねね」 


 ドダン!! バキッ!!


「何いっとるだお前さま!!! お館様、いや、魔王様だったかや。に散々迷惑ばっかかけて、ようやく出てきた本音さね……」

「ねね!」


「余がいうのもなんだが、戸を壊すとは何事……」

「あいや、恥ずかしい……」


「よい。だがわかったろ猿! そやつの目を見ろ! 

 貴様に求むるは哀れみや申し訳なさじゃねえ! 

 誠の心を話し尽くして、欲するところを見定めやがれ! 

 ……食や薬に詳しい徳川殿、利休の商い仲間や医者ども、バテレンの知識も全て駆使しろ! 財は十分にあろう! 

 ……そして貴様らのその、真の『色欲』を満たすのだ!」


「「へへぇ!!!」」


「貴様らの働きはそれからで良い。国内に残る功など小せぇ。東の海を渡り、一家を、一国をなせ!」


「「御意にございまする!!」」



――――――――――


 数年後、貧相さは見る影もなく鍛え上げられ、呼称も猿から猩々へとかわったころ……


「う、うまれたか!!!」

「産まれた! おまえ様と、私の子だに!!!」

「そうか、この子の名は拾い、元服後は秀頼じゃ!!!」

「拾い! 秀頼!!!」


 ……彼らはさらに幾人も子をなし、「傲慢の君」との船団とともに海を渡ります。現地の少女と少年秀頼が出会い、のちに結ばれ新たな家、新たな国をなします。

 ただ1人を愛し、多数の子をなす。『色欲』の紋様が、千の瓢箪と共に掲げられます。



―――――――――――


三 〜健と美の叡知、暴食の君〜


「久しいな家康。驚いたか?」

「誠に……義兄君の申される通り。あれは欲を抑えるだけでなく、その成長までも牽制しているよう……」

「気づいたか。流石だな。貴様の目指す治世なら少しは使えようが、諸刃じゃねえか?」

「然り。小さな島国の平和を、閉ざして守ることも出来ましょうが、それも良し悪しかと」


「だろうな。まぁこの話はまたゆっくりしようや。

 ……では改めて問う。徳川三河守家康。貴様の欲、願いは何ぞ?」


「……」ググゥ


「……貴様、正直にも限度ってものがあると思うんだが。菓子食っただろ。雰囲気って意味わかるか?」


「これは粗相を。しかし、それ以外には、治世への希求になります。世の美味いものを、腹一杯食って食わせて、皆を笑顔に、しか出てきませんな」


「貴様のその隠しきれぬ野心も、その顕れだって言うからおどろきだ。その食い意地、世界を食いつくさんとする渇望から、とはな」


「若く未熟な頃の我が失政の影響ですな。皆に食わせるものも限られていた時が長びいたため、でしょう」


「だろうな。だが貴様、それはいいが、その手慰みの薬膳。あれだけでその欲が、身に跳ね返る不具合を補うのに足りるか?」


「むむぅ……」


「知ってんだろ?南蛮の、体に対する造詣の深さは。あれだけが正しいと思わねぇが、学びに損はねぇ。貴様は本の虫だ。漢語もお手のものだろ?

 ……さっさと南蛮語も覚えて、身を全うするための医食の術を、学んで学んで学び尽くせ! 食いもんだけじゃねぇ、知識も全部喰らうのが、『暴食』の道じゃねえのか?」


「お心遣い誠に痛み入ります。この『暴食』家康、世の食と知を喰らい尽くし、味と学びを世界に共有せんため、魔王様の天下布武を全力で推し進める所存!」


「励め!」



――――――――――


 『暴食』徳川軍は、明智「嫉妬の君」と競うように、天下布武の急先鋒となります。後に、学問と美食の殿堂として、三河から尾張、伊勢に広がる、世界有数の医食学術都市を築きます。

 文武両道の多彩な人材を排出し続け、知と食を喰らい尽くしつづける「暴食の徒」として、世界を加速し続けます。



――――――――――


四 〜最強の矜侍、傲慢の君〜


「……不識庵殿、何をなされておいでで???」


「いや、面白そう故、あの柴田の親父を打ちまかし、入れ替わってもらったところ」

「権六の阿呆が!!……奴にはいい薬やも知れん。傲慢には足りんか」


「拙者も付き合わせてくれぬか織田殿。いや、魔王殿とお呼びいたすか?」


「全部聞いておられたか。つまりそういうことですかな?」


「左様。拙者は忠と義のもと、ただ無欲に腕を振るって参った。しかし、何か鬱屈があるのか酒がとまらぬ。なればこそ、この愉快そうな道に身を預けるのも一興かと思い始めてな」


「……ならば是非に及ばず。こちらとしても望外の好機。

 ……では問います。越後の龍こと、上杉不識庵謙信殿。貴殿の欲、願いは何ぞ?」


「それは我が矜持なり。最強たるを疑うことなく突き進み、国に、世界にそれを知らしめ得る場、戦場こそ我が安息の地なり」


「なんとも狂気にまみれた欲ですが、その念はビリビリと伝わってまいりますゆえ、理解に問題はございません」


「口に出した途端、暴飲して忘れたいことなど、一つものうなった。まあ嗜む程度は、でしょうがな」


「重畳。あえて言い含める必要がなくなりましたな。では余は貴殿にあらたな戦場を用意するまで。

 ……東の海を渡り、新大陸の北と南の境。そこに我らが南蛮とよぶあの者らの、今ひとつ大きな欲望の渦があるとの事。

 一枚岩ではない奴らバテレンどもから聞き出すのはたやすく。そこには国を取られ、虐げられつつある、元々の民らがおるようで。

 ……勘違いめされるな。彼らへの憐憫ではなく、先の先において、多様な価値観を残しながら、日の本のもつ力を見定めるのもよろしかろう、と思ったまで」


「まあ魔王どのも一周回って素直でござること。そのあたりは置いておくとして、その規模の話であれば、上杉だけでは荷が勝ちますやもな。拙者の傲慢とて、孫子の教え『知彼知己』あってこその範疇」


「流石は最強の名に恥じませんな。兵略と政事は羽柴をつけます。竹中や黒田に加え、文武にイキの良い若者も揃っております。

 戦術は、風前の灯たる武田の臣、真田あたりに声をかければ、かの跳ね返りどもが呼応するは必定」


「誠に、この短時間でそこまで編み上げたと思えぬ鬼謀。我が養子らでは到底叶いませぬな」


「ご謙遜を。出立は先でしょうからごゆるりと。しばらくは酒に蝕まれた肝を労られよ。

 改めて。上杉不識庵謙信公。貴殿の『傲慢』を満たさんがため、遠く異国の地にて、侍の威を、この丸い世界にお示し召されよ!」


「承ってござる!」



――――――――――


 後に、「色欲の君」とともに海を渡った「毘」と『傲慢』の旗印、車懸の旋風は世界を震撼さしめます。

 その真紅の装いと、三途の渡し賃を冠した二代目「傲慢の君」たる真田源次郎信繁も、父昌幸の軍略とともに語り継がれます。

 「地獄番への袖の下、血にまみれたる六コイン」というやや捻じ曲がった逸話が世界を席巻しつつ、新大陸の先住民には神霊の如く扱われたとか。



――――――――――


五 〜侘寂の真髄、強欲の君〜


「結構なお点前でございます」


「利休よ、貴様は呼んだ上に、余が自ら茶を点てたが、考えてみれば特段問うことがない」


「これはこれは、辛辣なのか過分なのか、判断に苦しむ次第ですな」


「まあ貴様のことは余より解っておるものがどれほどおろうか。七つのうち、すぐ浮かんだのは貴様と猿、家康くらいよ。あの二人は余が元服前から知っておるゆえであるがな。

 ……貴様は聞くまでもない。おおよそ貴様のままで、『強欲』の君である。未来にてその欲するところを抑え込まれ、道を分かたぬ限りはな」


「……仰せの通り。世に足りぬもの多きを嘆き、それを侘び寂びと称して新たな価値を生みました。今を生きる民百姓や将兵の足りぬを、別の形で足るに変え、心を満たして価をえる、いわば仕組みにて」


「この先も貴様の欲するがままに進めば、次々に新たな価値を生み、足りぬを見つけてその心身を充たし、国を、民を潤そう。余の前に立ちはだかるなら容赦はせんがな」


「承知。我は我のまま、欲するを欲し、足りなきを充して参りまする」


「励め!」



――――――――――


 かの者の行く末は、ご当人の最期が、家族や弟子に囲まれた穏やかなものであったこと以外、大きな差異は生じておりません。

 違いがあるとすれば、その聖人としての名が、かの国に、そして海を越えて届くのが、やや早まったことと、その「侘び寂び」の横にときおり『強欲』の名が付記されるようになった、というくらいです。



――――――――――


六 〜創新の師君、怠惰の君〜


「働きたくのうございまする」

「知っておったわ」

「「……」」


「なればこそ、坊主どものあしらいを任せておる、というのはわかるまいの、佐久間右衛門尉信盛よ。日向や筑前と比べても小賢しさはなきゆえ」


「御意。お館様「魔王」魔王様、本日は、よもやそれがしにも分かるようにお説き頂けるので?」


「然り。説明を好まぬのは我が怠惰。それを力に変えるのは、今は尚早であるのは理解しておる。して貴様に任せておるのはなんだ?」


「ははっ。あの厄介な本願寺への対応という、名誉なれども、やや荷が勝ちすぎるのではと申すものもおる難題にございます」


「であるがの、その貴様らのいう難題、とやらはの、貴様にこそできると余は考える」

「???」

「貴様、余の指図、正確に覚えておるか?」


「ははっ。それがし頭の回りは言うに及ばず、でございますが、覚えはさほど悪うはございませぬ。

『坊主どもに相対せよ』でございます」

「くくくっ、九字の覚えを自慢するか貴様、幼子か?」

「大変失礼つかまつりました!」


「よいよい。つまり余は、戦え、とも、苦しめよ、とも言うておらん。ましてや、攻め落とし、打ち滅ぼすなどはなから期待しておらん。一言で言うなら足止めよ」

「!!!」

「日向や筑前にでも任せてみよ、一気呵成に追い散らすか、ジリジリと追い詰めるか。いずれにせよ民に要らぬ苦しみを与えよう。魔王ではすまされぬ非道ぞ。

 ……権六ならどうかの? あやつも勝つかもしれんが被害はどれほどかの。そして並の将で勝てるほど甘くはない。家康は一度坊主に痛い目を見ており、難しい」


「……」


「貴様ならどうじゃ? 大勝ちはせぬが大負けもない。ただおるだけで、賢しき共が毛利や武田を平定するのを待てばよい。家中の格も最上位、年もいい年。今更小功に焦ることもあるまい」


「御意!」


「貴様は働かんで良い。『怠惰』のまま、働かずしてこそ役目をはたせるのだ。あまりに手が空くのであれば、あの厄介坊主に文でも送るが良いわ。貴様にも刺激になろう」


「承りましてございます! 怠惰の名の下に、全力を持って怠け、かの僧、かの民らと相対して参りまする!」


「励め! 否、励むな!」



――――――――――


数月後


 「流石に手持ち無沙汰じゃ。お館様の『文を』の言に従い、慣れぬが試しに書いてみよう。


『本願寺顕如殿

 長らく相対する我らですが、それがしはそれほどあなたを嫌うておらず、一向の教え、とくに他力本願たる真理に、共感するは多くございます。

信盛』」


数刻後


「殿、顕如殿からご返書にございます!」

「何? はやいな。どれどれ……

『佐久間右衛門尉信盛様

 突然のご書状、あの冒頭は、恋文、あるいは恋仲のやりとりと誤解を受けます。貴方様には衆道の気はないと存じますゆえ、書の書き方を、しかと指南致したき……


 始まりは時候の……

 間には漢詩などを……

 用件は明確に……

 ……

 ……』


 長い! そして、返さねば何を言われるかわからぬ! 大義じゃのぅ……

『顕如殿……』」

「『右衛門尉殿……


「『顕如殿……

「『右衛……


「『顕……

「『右……

 

 ……


 さらに数月後


「暑い……」ドン、ドン、ドン


「文は長い……魔王様の勧めなのじゃが……!!? 

 よもや、顕如殿の筆まめを見越して書かせたと??? 否。考えても答えは出ぬので気にせん。

 ……それにしても暑いのう」ドン、ドン、ドドドッ


「祭り太鼓じゃのう……若き頃は踊り明かしたものじゃが……今はのう……」ドン、ドン、カッ


「暑い……」ドドドッ、カッ

「大義……」ドン、ドン、カッ

「太鼓……」ドン、ドン、ドドドッ


「あー」ドン、ドン、ドン

「つー」ドドドン、カカッ

「いー」ドン、ドン、カッ


「たー」ドドドン、ドン

「いー」ドン、ドン、カッ

「こー」ドン、カッ、ドドン


「……んんん? これは!!! よもや使えるのではないか?

 誰ぞおるか? 誰ぞ〜〜〜!!!」



――――――――――


 『怠惰』と相対する勤勉とが特異点を生みだします。すぐに改善に改善が重ねられ、完成した通信技術「鼓信」は瞬く間に、本来の二百年以上も早く、世に広まります。

 魔王の天下布武を大きく加速すにとどまらず、海をまたいだ情報通信や交流もはやめ、世界を急速に小さくしていきます。



――――――――――


七 〜情熱の讃歌、憤怒の君〜


「兄上、何故妾が最後なのですか!?」

「そなたが一番うるさ……愛しいからに決まっているじゃねぇか!」


「うるさっ? 愛し……!!!」


「それに、そなたは少し他のやつらと位置付けが違うとおもっている。七つの中でも、これだけが浮いており、民に寄り添っている気もしてならねぇ」


「……」

「聞いてんのか?」


「はっ! 失礼しました。兄上の言葉を聞き逃すなどあり得ぬことです。

 ……民、ですか……民、家、国、天下……声? 心?」


「さすが市。そこかもしれねぇ。もう行けるだろう。

 ……では問う。我が妹、市よ。そなたの欲するは何ぞ?」


「兄上様と末永……ではなく、亡き夫や息子、そして娘ら、さらには兵や民、その悲しみや怒り、鬱屈を皆で分かちます。

 その情その熱を和し、過ぎ去りしのみに向かう心を、未だ来ざる時に向けることこそ妾の望みと存じます」


「……であるか。その望み、余はたいそう不得手である。すなわち、そなたへの負担は軽くはない」


「百も承知。我が兄は、この小さな島の主にとどまる器にあらず。その妹たるもの、国を、家を、民を、その心を支えるくらい、容易に成し遂げねば釣り合いが取れませぬ。 

 ……兄上が深淵の黒焔であれば、市は陽だまりの慈光。兄上が世を照らす日輪であれば、市はくっきりと描かれし影にございまする」


「励め! その『憤怒』の焔、楽しみにしておる!」



――――――――――


 ある意味で最も魔王に貢献したと評価される『憤怒の君』が現れるのは、民の苦難や悲しみが、黒い怒りや怨嗟の焔と変わらんとする前。

 三人の娘や、同時期に輩出した出雲阿国らとともに、民の声をを歌舞や奏楽に変え、時に狂おしくも美しく現し、時に滑稽なほどに明るく励まし、民の心を癒やし整えて行きます。



――――――――――


 そしてその日を境に七つの黒旗をはためかし始め、瞬く間に天下を手中にした十六字の奔流。


魔王 織田信長

嫉妬 明智光秀

色欲 羽柴秀吉

暴食 徳川家康

傲慢 上杉謙信

強欲 千利休

怠惰 佐久間信盛

憤怒 浅井市


 そしてその国は世界の敵となり、世界はその歩みを大きく加速します……



――――――――――


終 〜魔王の残響、変貌した世界〜


十九世紀の半ば、七つの地にて


ドッ! ドッ! ドドドッ! ドドドドッ!

「……中央で明智から縦パスを受けた高杉、すぐさま前を向きます。ここまで2ゴール5アシスト、ベストイレブンは確実。

 顔をあげ、走り出した久坂に絶妙なスルーパス、通った! ここまで5ゴール3アシスト、距離はあるが彼なら届く! どうする?

 守備を引きつけた久坂、パスを選択! ベテランキーパーのハリスは反応できない! 走り込んだのはこの男だ! 桂! ダイレクト!

 決まったーーー!!!

 ……桂、桂だ! 今大会6ゴール、単独得点王! 吉田監督も飛び跳ねています!」


ピッ、ピッ、ピーー!

ワーーワーー!!


「ここでホイッスル!! 

 やはりこの三人だ! 

 高杉晋作、久坂玄瑞、桂小五郎!! 

 ……松下村蹴球塾時代から時には彼ら同士、また時にはあの新撰組とも切磋琢磨を繰り返し、海外でも結果を残し続けた3人!

 世界中から集まる『嫉妬』をくぐり抜け、ついに、ついに頂点に辿り着きました!!」

 


――――――――――


 私は羽柴ミミ。アステカ共和国出身の中学二年生。

 いや、あの病気の自覚は……いきなり何言わせるのよ! 


 あの魔王国が世界に誇るトップモデルにして、数々の衣服商標を立ち上げた実業家。さらには経営学と倫理学の現役教授。

 あの魔王様の再来と名高い、属性盛り盛りの織田真理奈様だって、「貴方が着たいもの、それが貴方の似合う服です」って言ってるんだから! ゴスロリは正義! 

 

 今日から私も海を渡り、憧れのご先祖「色欲の父、母」の生まれた名古屋で、医と食の最高学府で学びながら、真の愛『色欲』を探しに行くの。

 え、知らない? 映画化までされた伝説のご夫婦の家族愛と、仲間の最強侍たちが、私の故郷で大活躍する伝説的アニメーションを? 


 まあいいわ。私の冒険はまだまだこれから。楽しみにしてなさい!

 あ、忘れてた。勘違いしないでよね! あなたのために説明したんじゃないんだから! これはかの有名な魔王構文。これでどんな男も女もイチコロって聞いてるんだけど……まずはあの真理奈様のお弟子さんの、栄一さんと諭吉さんからね! 

 


――――――――――


「西郷さん、本日のご講演も、毎度ながら大好評。あの相性最悪と言われた二つの技術を融合し、薩長式外科手術なるものを編み出されるとは。さすがは今最も期待される、臨床研究分野の若手の星」


「どん口が言っておらるっと一橋さァ。新式と新式じゃったかい、共通点が見えっからはすぐごわした。

 わぃこそ古典的な遺伝子研究に、最新の人工知能ん知見を巧みに合体され、一度は下火になった分野に再び脚光ば浴びせた、あん『暴食の君』の再来」


「いえいえ、人工知能といえばそれこそ、古典統計学に大規模言語モデルを組み合わせ、常に修羅場となる救急医療、看護の現場に安息をもたらしたナイチンゲールさまこそ、その賞賛を受けるにふさわしいお方」


「まあまあ、揃いも揃ってお上手ですこと。私など少々データの見せ方に手を加え、皆様のやりやすいテンプレートを提供したにすぎませんわ。一番は現場の皆様のご尽力です」


「お三方、授賞式の場で、謙遜が過ぎませんか?主催者たるこのナポレオン三世こそ、恐縮してお声かけが躊躇われるほどです。ささ、晩餐の準備が整いました。食と医、学術の最高賞『暴食賞』の名に恥じぬおもてなしを用意いたしました。どうぞこちらに!」



――――――――――


 ダダダダダ、キン、キン!!

「相変わらずな刀の重さじゃねぇかコンドウ!」

「てめぇこそ、その銃さばきに罠の置き方、技術に磨きがかかってやがるなグラント!」

 ドッカーン!!


「隙ありっ!」キン!

「ストーンウォール! 大丈夫か!?」

「総司、狙いが甘ぇ!」

「ごめんよ歳さん!」

 ザシュッ!


「なんだこいつら、地雷の爆風で突っ込んできやがった!」

「気をつけろシャーマン! また後ろだ!」

「こっちか、この野郎!」


 ダダダダ、キキキキン!

「う、うわぁ! 全部跳ね返しやがった、サイトウめ……ぐふっ」


 ……


「負けた負けた! やっぱシンセングミにはかなわねぇ!」


「だな……ニホンジンは意味がわからん。とっくにビシャモンや六コインの域を超えているだろうよ。銃声を聞いてから振り向いて跳ね返し、地雷の爆風にのっかるとか、どこのコミックだ」


「銃や罠などに頼る限り俺らには勝てねぇな」

「ナガクラ、出番なかったからってここに顔出すか」



 ――技術が加速した時代。戦争は仮想現実の中に限定され、その経験を実世界に反映する技術まで確立しつつあります。そんな中、特異的にその適応が進み、「超進化」といえる能力をほこる戦闘集団が現れます。


 その影響は大きく、多くの破壊兵器が彼ら「英雄」にたやすく封じられると、旧来の戦争は瞬く間に廃れ、彼ら『傲慢の雄』による、半ばエンターテイメントと化した「英雄戦」がとって変わります。

 この進化は特に日本人との親和性が高く、その理由は、その技術の源流と、武士の血筋の両方の影響と言われています。


 中でも、

「新撰組」近藤勇、土方歳三、沖田総司、永倉新八、斎藤一

「南北の雄」ユリシーズ・グラント、ロバート・リー、ウィリアム・シャーマン、ジョシュア・チェンバレン、トマス・"ストーンウォール"・ジャクソン


 この2組の頂上決戦は毎日のように繰り広げられ、専用チャネルの登録者数は何億とも言われています。 

 かれらは斉しく、「歌って踊れるトップアイドル」という側面も持ちますが、それはまた別の話です――



――――――――――


 「論語と算盤」「学問のすゝめ」ですか……相変わらずですね、栄一、諭吉。あの若さで人々の心をしっかり掴み、その成長を正しく導いています。どこぞの中二娘が狙っているとかいないとか。

 あの子らにも教えた、孫子や論語といった東洋の戦略と道徳に、西洋の考え方を馴染ませた理念。形をなしてきたのは、それほど昔ではありません。


 相容れなかったのが、七欲を罪となす西洋と、力の源泉となすこの魔王国との乖離。私、織田真理奈の祖先である初代魔王が標榜した七つの黒旗。

 一時期は比喩でなく「世界の敵」であった時代から、多くの国が肩を並べ、平和に切磋琢磨する時代となっています。無論この国は頭ひとつ抜けていますが。


 変わったきっかけはあの時。私が投稿した「七罪というのは、欲をなさしむ対象が家族や他者に変わった時、ただの美徳にほかならない」という趣旨の論説。

 三百年近くたって、ようやく東西の道が一つに重なろうとしています。その意を継ぐのがあの子達。


 その活躍を眺めつつ、私はそろそろ楽隠居と決め込みましょうか。最近は『強欲』『色欲』が鳴りをひそめ、『怠惰』が顔を出し始めつつあります。が……


「織田先生! 久しぶりに東西の経営論について教えを!!」

「真理奈先生! 私は七欲と法令遵守の関係についてご教示を!!」


「うるさい栄一! 諭吉! 少しおだまりなさい!!」



――――――――――


「あづい……ワレワレハ宇宙人ダ……」

「佐久間先生! 扇風機の前でなにをふざけておいでぜよ?」

「坂本か。今日も元気だな。トムとアレックスはどうした?」


「留学に来ているトム・エジソン君と、アレックス・ベル君ですか。あの子らも、師と見紛うぐーたらっぷりじゃきに。

 一たび『怠惰』佐久間先生の作った通信技術や、対話知能の中身の話を聞くと目の色一変、争うように知識を吸収していきますぜよ。

 後の世に天才と称される子らは、このような情熱の抑揚を持たれるのでしょうな。あの佐久間公と顕如坊のごとく」


「よう象山、元気してるか?」

「勝さん!」

「天舟先生!」


「龍馬もいたか。ほれ、ロシアみやげのウォッカだ!」

「飛行士訓練は一区切りですか勝さん? 人類初の月面有人探査に向けて、名前まで臨太郎から変える酔狂っぷりも相変わらずですね」


「カァッ! こいつはきついぜよ先生!」

「もう飲んでんのか龍馬!! お前が選ばれたら、宇宙で酒でも作る気じゃねぇだろうな!」



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「本日のゲストはこちら! 伝説の三姉妹の再来とも言われ、世界中を熱狂の渦に巻き込むスリーピースガールズバンド、この方達です! どうぞ!!」


「「「お八重ーーー!!」」」

「「「姫ーーー!!」」」

「「「梅ちゃんーーー!!」」」


「みなさんはつい先日、パリで音楽の祭典、そしてニューヨークで授賞式、国内でも全国ツアー最終日と、まさに獅子奮迅、『憤怒』の嵐、といったご活躍ですが、お身体の方はいかがでしょうか?」


「さすけねぇです! 憧れの三姉妹、茶々姫、初様、江様に追いつけるように、日々全力疾走です!」

「さすがは鉄砲少女の名を誇る八重さんですね!」

「「「お八重ーーー!!」」」

「ありがとー!!」


「さて篤姫さん。このバンド全盛の時代、かの新撰組や亀山歌技団を始め男性グループに対抗するみなさんですが、やはり和装、和楽器は外せませんか?」


「もちろん、伝説を追いかけっ私たちに、そいは外せもはん。300年の時を経て、立って弾きながら、歌い舞えるように変わってきといもすし。

 こん音を、声をみんなに届けらるっ幸せを、少しでん分かち合えたら」

「「「姫ーー愛しとうーーー!!」」」

「私もーーー!!」


「今回の新曲も作詞作曲は梅子さんですね。今回はどのような?」


「伝統的な和漢の詩歌に、西洋の新解釈を吹き込みました。熱を失うことなく、皆様の元に届けてぇと思いまし」

「「梅ちゃんーーー!!」」ぺこり


「それでは新曲、IRA IRA LOVE!! お願いします!」



――――――――――


――七罪が徳へと変わる日。


 それは、


 家族に、もっと良い物を食べて、と思った日。

 目の前のひとが、欲しい物は何、と考えた日。

 愛されるため、自らを磨きたい、と決めた日。

 他人の努力の種を、見つけ認め、称賛した日。

 評価が妬みに変わるを恐れず、向き合えた日。

 隣人を楽させてあげたいと、知恵を絞った日。

 人々の怒りや熱の根源を、知りたくなった日――



――――――――――


????年 某所


「夢、か……

 にしても随分と長く、はちゃめちゃな夢じゃねぇか。思い出すだけで恥ずかしくなるわ!

 特に最後の三百年後は、分岐がそれこそ無限だろうが、その選択は雑な気しかしねぇ。言い回しの古さは、時間の進みが圧縮した影響として置いといてだ。

 最後の最後、はっちゃけた曲名は、バイブルの原語から持ってきたのか? なんて奴らだ! 

 

 人もそうだな。ミミはまだ、ねねが憧れの対象と化したから分からなくもねぇ。だが真理奈は無ぇ! 

 漢字は悪くねぇし、あの独白が三百年を端的に振り返った話なんだろうが、口癖が名乗りになっちまってやがる。


 親は誰だ……いや、結局全部余の夢だから、根っこは余にあるのか……奇妙、茶筅、三七……この話はなしだ。

 ……にしても欲、か。これは余もすぐ改めねぇと、天秤が異なる方向に傾くかも知れねぇな。

 まずはすぐに、あやつに声をかけるところから始めようじゃねぇか」


お読みいただきありがとうございます。


*この物語は、七罪を知った信長「ならそうする」。その魔法の六文字だけから作られました。


 スピンオフの元小説はこちらです。よろしかったらこちらもお願いいたします。どちらが先でも問題ないようになっていると思います。当作品の間章に、本作をぼかして圧縮した童話風あらすじが入っています。


AI孔明 〜文字から再誕したみんなの軍師〜

https://ncode.syosetu.com/n0665jk/




 生成AIを題材とした長編を書いている時に、その生成AIとの関係ですこし無視できない課題が発生しました。本作は、そこを一つのきっかけとして生まれたスピンオフ? 別作品? となります。


 それは、文章構成やプロットの相談をすると、ランダムでシステム警告をうける、です。


 七罪キーワードや、断片的な表記の適切さを自動で判別している監査AIが、本作やその手前のネタテキストを不適切認定することがある、ようです。


 これは、生成AIが、「流れを見れば、不適切ではないことは読者にもわかると考えられます」といってきても起こる警告現象で、回答そのものと別系統で働いているようです。


 そのため本作は、一周回ってほぼ人力で仕上げております。一部はAIに原稿チェックできない部分がでており、クオリティや誤字、言い回しや時代考証などは、完璧にはほど遠くなります。長編よりもアラがある可能性にはご容赦いただけたら、と思います。


 光秀と家康が信長のギャップに落とされて本気モードになり、謙信が興味本位で味方になって体調を整えてしまい、本願寺が佐久間と遊び始めたら、秀吉の1人くらい妊活休暇に入ったところで天下平定は一瞬かな、と……


 特に歴史上の人物に関しては年代と実績を気にして選定しています。年代をチェックして整合性を確認し、ギャップが出ないよう注意しました(最後の3人以外)。

 特に以下の人たちは知識がなく、完全にAIだのみの知ったかで載せています。


以下、生成AI引用です


ユリシーズ・S・グラント将軍 (Ulysses S. Grant)

北軍の指揮官であり、戦争の終盤には北軍総司令官として南軍に決定的な打撃を与えました。グラントは、特にヴィックスバーグ包囲戦やアトランタ作戦での大胆な作戦で知られています。彼の指導力は戦争の勝利に大きく寄与しました。

ロバート・E・リー将軍 (Robert E. Lee)

南軍の総司令官であり、南北戦争における南軍の象徴的な人物です。リーは、ゲティスバーグの戦いやアントニオの戦いなどで優れた指揮能力を発揮し、劣勢ながらも北軍に対して多くの勝利を収めました。彼の戦術的な才覚は今でも高く評価されています。

ウィリアム・テクムセ・シャーマン将軍 (William Tecumseh Sherman)

グラントの親友であり、彼の右腕ともいえる存在です。シャーマンは「海への進軍」として知られる作戦で、南部の経済基盤に壊滅的な打撃を与えました。彼の戦術は、戦争の勝利に大きく貢献しました。

ジョシュア・チェンバレン大佐 (Joshua Chamberlain)

ゲティスバーグの戦いでの「リトル・ラウンド・トップの防衛」で有名です。彼は大学教授から軍人に転身し、特にゲティスバーグでの勇敢な行動で北軍の勝利に貢献しました。

トマス・"ストーンウォール"・ジャクソン将軍 (Thomas "Stonewall" Jackson)

南軍の将軍で、第一次ブルランの戦いで勇敢な戦いぶりを見せ、「ストーンウォール(石壁)」のあだ名を得ました。彼の指揮下で南軍は多くの戦闘で勝利を収め、彼は南軍の重要な戦力でしたが、友軍の誤射により戦死しました。

これらの人物たちは、それぞれの側で英雄的な行動をとり、南北戦争における重要な役割を果たしました。

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