Messages from …
ほんの少し前の事、星月天乃は街中で高校の頃の同級生と、偶然に再開した。その時の事である。
波木紘、久方振りに見る彼は、星月の記憶の中に居る彼とは少し違っていた。病的なまでに痩せこけていたからである。頬は痩け、骨の形状を露わにさせている。瞳には生気が感じられない。姿勢が悪くなっているからなのか、背も低く感じられた。そんな波木へ星月は言葉を掛けた。
「おい。波木だよな?顔色悪いけど大丈夫か?ちゃんと飯食ってるか?」
波木は星月の方へ視軸をずらすと蚊の鳴く様な声で、あぁ。星月か…。久し振り…。大丈夫と云いたい所だけど…。そう云って、バツの悪そうな顔をした。
「何かあったのか?良かったから悩み聞くぞ。」
星月はキラキラと瞳を輝かせながら、胸の前にGOODポーズを作った右手を差し出す。
「お前、そうゆう所変わらないのな…。」
波木の記憶が抱く星月の性格は彼女の容姿、そのものであった。実際、少女としか表現の仕様が無い容姿。純粋無垢で善悪の区別すら付いていない…。感情のままに言葉を紡ぎ、感情のままに行動する。そんな性格である。しかし波木と同じ年なのだから25の筈なのだが…。高校の時と何ら変わりはなかった。精巧な球体人形の様な可愛らしい少女。艶やかな黒髪は肩にかかるか、かからないかのラインで緩やかな形を描き、項うなじから耳にかけて少しずつ長くなっていて、前髪は眉のラインで切り揃えている。その髪型がこの少女を一層と精巧な球体人形に見せている。
「おう。とりあえず、お前倒れそうだから…。近くにあるcafeに行こうぜ。」
そう云った星月は振り向く事無くスタスタと歩いていく。波木は過去の記憶から、こうなっている星月に背くと後で痛い目を見る事を熟知していた。だから仕方無く星月の後を付いていく事となってしまった。
そして近くのcafeに入ると波木は静かに語り始める。星月は知っているよな?高校の頃、俺が付き合っていた彼女…。ソコまで言葉を並べると少し間を空けた。
星月は記憶を探る。そして、ある人物の顔が浮かんだ。浮かんだからこそ、星月は言葉に詰まっているのだった。波木には高校の頃、付き合っていた彼女が居た。だが、その子は…。星月の思考を遮る様に波木は言葉を重ねた。
「そのさ…。信じてもらえないとは思うんだけど…。彼女…。湯田紗月って死んだよな?死んだ筈だよな?」
そう。星月の記憶の彼女も、高校時代で亡くなっていたのだ。葬儀にも行ったのだから間違いである事もない。星月は、あぁ。と頷く。
すると波木は震えた声で…。最近、その彼女から手紙が届くんだ。と云い。
「死んだ筈の紗月から、奇妙なMessageが届くんだよ…。」 と続けた。