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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
13章 記憶を探す
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夢の中での会話

「…あの、さっきの件なんですが、僕の荷物や、過去の自分ってどこにあるか分かりますか?。」と減り下って問いかけた。自分で自分に減り下っているように気がしてなんだか混乱してきた。


「え?、いや、無いよ。」と自分に似た誰かが非情な返答をしてくる。


自分はさらに混乱した。「え?、いや、そんな事ないでしょ。だって、四角い板には自分の姿絵があったし、ハチはなんだか付き合いの長い相棒のように慕ってくるし、あなたの過去があるなら僕の過去もどこかにあるでしょ」ともう一度問いかけた。


「だから、アレは自分の荷物だし、この体にあるのは私の過去であって君じゃない。そんなに重要かな?君の過去。」とまたも非情な返答をしてくる。


「いや、そんな事言われたら、いつまで経っても自分が何者なのかわからないじゃないですか?」と不満をもらした後、混乱と不安に包まれた。


「過去を探した処で無いものは無いんだから、何者になるのかは、これからの行動によって決まってくるんだよ。」そう夢の中の人物は諭してきた。


「あの荷物は私のだけど使っていいよ。まあ、使えたらだけどね。過去の記憶も私の記憶しかないけど見れたら見ても構わないよ。ちょっと恥ずかしいけどね。まあ、辿り着いてみないとわからないけど、今の君に有用な情報が満載だと思うよ。」と自分に似た何かは荷物や過去の記憶を見る事を許可してくる。


しかし、自分はがっかりした。


「でも、それは自分の過去じゃないんでしょ。」


自分に似た何かが話してくる。「そうだよ、だって、ここには無いからね。無いものは無いんだから過去の自分を探す事に意味はないよ。だって、君は生まれ変わったんだ。名前だってもらったでしょ。そう、『メルロ』って」


そこでまた目を覚ました。



「あ、目を覚ましたのね。」とフレデリカが声を掛けてくる。


部屋の外から「駄目だって、あんたが近づくとまた倒れちゃうよ?」とアンナがクララに話している声が聞こえていた。


「なんでそんな事をいうんですか?ひどい!」とアンナを避難するクララの声が聞こえてくる。


ナイスだ姉御アンナ。今日はそのまま引き留めて置いてね、お願い。そう思いながら自分は、夢の事を思い出し、もう少しで何かわかりそうだったのに目が覚めてしまったのでガッカリして溜息をもらす。


「……ちょっと、主人が心配して声をかけたのにガッカリするなんて失礼じゃないかしら?」とフレデリカが文句をいってきた。


その不満を表す声に、自分は気を失う前の出来事を思い出していた。


ハチを振っていた時に、いつものように自分は、その勢いに負けて叫び声をあげていた。『ちょっとうるさいわよ!ご近所迷惑でしょ』と言われた事を思い出して心を乱した。


その言葉はあまりに理不尽に感じた。だいいち、この屋敷の土地は広いから、気にするほどのご近所様いないでしょ。そう思うなら代わりにハチを握ってくれないかな?そう考えていた事を思いだしてイラついた。


なんなんだ、この蛇食女スネークイーターは、ちょっと自意識過剰じゃないのか!


いや、落ち着け自分。


ここは当たり障りのないようにやり過ごすのが大人というものらしい。姉御アンナにそう言っていた気がする。


「すみません、フレデリカ。せっかく目を覚ましたのに目の前にいるのがクララさんじゃなくてガッカリしてただけです。」


フレデリカは少し和らいだ表情で近寄ってくる


「まあ、そうなの?でも、よかったわって全然よくない何だとこら!」と豹変する蛇食女スネークイーター


「あッ…すみません。つい本音が。」と自分は謝る。


「それ誤ったつもり!?ねぇ!?…………チッ目を覚まさなければよかったのよ。」と従業員にひどいモラハラをしてくるご主人様


「ごめんなさい。目の前にいるのがクララさんじゃなくてガッカリしてた事は確かなんですが、主人の心配を無下にしたつもりはありませんでした。」


フレデリカは安心した顔で近くの椅子に座る。


「そうなの?それなら、よかったわって全く無下にしてるじゃない!やんのかこら!」とまた豹変する。面白いなぁこの怪物。


「いえ、その夢の中で何か重要なことに近づいていた気がしていたんです。目が覚めてしまって、それが残念でたまらなかったんです。」と自分は正直に話す。


フレデリカは少し和らいだ表情で言った。「そうなの?でも、夢の中での出来事は現実ではないのよ。大切なのは目の前の現実。主人も心配していたから、気を使ってあげてほしいの。」


さっきの事まだきにしてるのか、しょうがないな。


自分は頭を下げて謝罪した。「本当にすみません、フレデリカ。僕は混乱していて、うまく気持ちを伝えられなかったようです。主人のことを思いやる気持ちを忘れずに、大切に接していきます。」


フレデリカは微笑みながら言いました。「そう言ってくれるなら、主人も安心するわ。メルロ、あなたは素敵な従業員だから、きっと主人も幸せになれるはずよ。」


そんなんでいいのか、チョロいなご主人様。


「ありがとうございます、フレデリカ。僕は主人の幸せのために全力を尽くします。」と自分は心にもない事を口にした。吐きそう。


互いに微笑み合い、この場をなんとか切り抜けた自分は、自分に似た誰かが夢の中で語っていた事を思い出していた。


自分に似た誰かの記憶なら探せるんだったら、そこから始めてみようか。そう考えていた。


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