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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
12章 女主人の伝説
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毒蛇バリバリ伝説⑤

アンナは疑念を抱きながら言った。「でも、それはただの偶然かもしれませんよ。クマとの奪い合いと拳闘の技術を結びつけるのは無理があります。」


ハンスは微笑みながら答えた。


「それは君たちにとってはただの偶然かもだし、ありえない話かもしれないけど、フリッカにとっては運命の出会いだったんだ。彼女は『ぽんすけ』から学び、『ぽんすけ』との奪い合いを通じて成長したんだよ。」


クララは深く息を吐きながら言った。「それでも、クマと闘うなんて危険すぎるし、無謀ですよ。フリッカは何か大切なものを失ってしまうかもしれないじゃないですか。」


ハンスは真剣な表情で続けた。「大切な何かってなんだい。フリッカにとっては『ぽんすけ』との奪い合いが彼女の成長にとって欠かせないものだったんだ。彼女は自分の弱さを克服し、自信をつけることができたんだよ。」


エレナは心配そうに言った。「でも、それは本当に必要だったのでしょうか?フリッカは他の方法で成長できなかったのですか?」


ハンスは考え込んだ後、ゆっくりと答えた。


「確かに、フリッカは他の方法で成長することもできたかもしれない。でも、彼女が『ぽんすけ』との奪い合いを選んだのは、彼女自身がそう望んだからなんだ。」


「それが彼女の決断であり、彼女の挑戦なんだよ。そう、これが彼女の『全力全開』なんだ。それに、彼女は『ぽんすけ』愛していたようだし、自分よりも力のある『ぽんすけ』を師匠として慕っていたんだよ。」


4人はハンスの言葉を受け止めながら、まだ納得はしていなかった。


「皆、途中でちょっと忘れていたかも知れないがね、これは終わった話なんだよ。『ぽんすけ』が息絶えた事によってね。」と、そこでようやくクマが息絶えた話に戻ってきた。


「そうよ。それ!、長かった、ホントに長かった。一体、なにがあったの?」マーガレットは声を少し大きくして尋ねた。


「フリッカはその日、『ぽんすけ』を発見した後、後ろから驚かそうとしたそうなんだがね、『ぽんすけ』はいつもと様子が違ってフリッカに襲い掛かろうとしたそうなんだ。」


アンナ「ええ!?」


クララ「ちょっと!?」


エレナ「まずいじゃないですか!?」


「そう、フリッカも逆に驚いてな、足元に転がっている枯れ木に足を取られて尻餅を付いてしまったんだ。すると、長い朽ち木の枝の端に乗ってしまってね、ちょうどてこの様になってしまったんだろう、反対側の鋭い枝の先が『ぽんすけ』に向いてしまったそうなんだ。『ぽんすけ』は避ける暇もなく自らの体に枝を刺してしまい絶命してしまったんだよ。」


マーガレットは結末について改めて尋ねた。「つまり、『ぽんすけ』は自らのミスで命を落としたということですか?」


ハンスはうなずきながら続けた。「そうかも知れないし、ただ運が悪かったという見方もある。フリッカが『ぽんすけ』に近づいた時、彼女も驚いて思わず転んでしまい、枯れ木の枝が偶然そこにあったという事だよ。」


アンナは困惑しながら言った。「なんという偶然の連鎖なの。まさかフリッカも『ぽんすけ』に驚かされることになるなんて予想もしていなかったでしょうに。」


クララも同じく困惑した表情で「これは本当に奇妙な運命の巡り合わせですね。フリッカの成長を助けていた相手が、最終的にはフリッカの目の前で命を落とすなんて。」と言った。


エレナは少し考え込んだ後、静かに言う。「運命というものは本当に複雑で不可解です。この結果を予測することはできなかったでしょう。」


「でも、何なんですかね?本当に『ぽんすけ』がフリッカの言った通りだったら、やっぱり中にヒトが入ってませんかねw」とエレナは不謹慎と思いつつも笑いながら話した。


他の3人も苦笑いしていた。


「自分もそう思ってな、泣き止まないフリッカを山小屋に連れて帰って寝かせた後、『ぽんすけ』を捌いたんだ。ヒトは入っていなかったよ。」


マーガレット「な、何てことをするの?」


アンナ「そ、そうですよ。!?」


クララ「なんで捌いちゃったんですか!?」


エレナ「可哀そうじゃないですか!?」


「落ち着いてくれ、自分はフリッカのために行動したんだ。フリッカは『ぽんすけ』との奪い合いを通じて成長し、強くなった。『ぽんすけ』は彼女にとって特別な存在であり、彼女の成長の象徴でもあったんだ。」


「彼女が一生忘れない思い出として、『ぽんすけ』の毛皮を作ることにしたんだ。」ハンスは焦る三人に対し落ち着きを払って自らの考えをいった。


「それに、彼女には山を降りる時にその毛皮を渡したけど、彼女は礼を言ってくれていたよ。『ありがとう、ハンス』とね。」


4人はハンスの言葉を聞いて、しばらく黙り込んでしまった。



「………話を戻そう、『ぽんすけ』の事があってから、それから暫くして、もう少しで山を降りるという時期に、あの狼が山小屋の近くに現れるようになったんだ。狼はこちらに近づいてくるでもなく、ただこちらをじっと見ていたんだ。」


マーガレットは「狼が山小屋の近くに現れたの?それはどうしてかしら?」


アンナは心配そうに言う「でも、狼がそばにいるというのはちょっと怖いですね。なぜ私たちに興味を持っているのか、何か意図があるのかもしれませんよ。」


ハンスは考え込んだ表情で続けた。


「それはわからないんだ。狼がなぜ山小屋の近くに現れるようになったのか、その理由はわからない。ただ、何かの意図があって、自分達になにかしようしていたんだとすれば、それは下山当日に起こったんだ。」


「下山当日に何かが起こったの?」マーガレットが尋ねる。


「…小屋の入り口にね、子供がいたんだ。狼の子供だ。自分は直感したんだ。この子はあの狼の子だってね。でも不思議なことに、周囲を探しても狼の姿は見当たらなかったんだ。自分とフリッカはその子を連れて屋敷に帰る事にした。」


アンナは不思議そうに「なぜその子狼を連れて帰ることにしたんですか?何か理由があったのでしょうか?」


「答えは簡単だ。ただ、その子をそのままにしては生きていけないかも知れないと考えてたんだ。」


クララとエレナはマーガレットの様子がおかしい事に気が付いた。


クララ「?」


エレナ「マーガレットさん。どうしました。?」


マーガレットは立ち上がり、震えながら口に手を当ててハンスに質問をした。「そ、その子に名前は付けたの?」


「ああ、フリッカが付けた。その子は『ぴょんきち』だ。」


「そ、そ、そんな!…」マーガレットは衝撃を受けてよろめいた。


クララとエレナはマーガレットの驚きに戸惑いながらも彼女を支え、座らせました。


クララは心配そうに声を掛ける。「マーガレットさん、大丈夫ですか?どうしてその子の名前が衝撃的なのですか?」


エレナも同様に問いかけた。「本当に驚かれていますね。何かあるのですか?」


マーガレットは口ごもりながら答えました。


「『ぴょんきち』という名前は、おととしまで私の実家で飼っていた犬の名前なのです。亡くなってしまいましたが、元はこの屋敷で飼っていたのよ。」


「確かに、あの子を最初に連れてきたのはハンスとフリッカでした。年老いてから私の実家で引き取ったのです。信じられない、あの子が狼の子だったなんて…」


彼女の声は震えており、現実離れした出来事に戸惑っていました。


クララとエレナはマーガレットの様子をみて唖然としていた。


ハンスは静かに言う。「以上が、自分とフリッカが山で体験したすべてだ。」


4人は静まり帰っていた。最初は可愛いフリッカの話が聞けるものと考えていただけなのに、これほどまでに異様で壮大な話が広がっていたとは思ってもみなかったからだ。


マーガレットは感謝の気持ちを込めて言う。「ハンス、あなたが私たちにこの驚くべき冒険を教えてくれたこと、本当に感謝するわ。これだけの出来事があったなんて、まるで小説のよう。」


アンナも同様に感謝の意を示しながら「本当に素晴らしい話です。ハンスとフリッカが経験したことは、私たちにとっても貴重なものです。」


クララとエレナも頷きながら、ハンスに感謝の言葉を伝えました。


ハンスは謙虚に微笑みながらこう答えた。


「ちなみにそこに飾ってあるのが『ぽんすけ』の毛皮だ。」


マーガレット・アンナ・クララ・エレナ「!!(;゜ロ゜ノ)ノ えええええええええ!?」


「ハハハハハハハ!、皆いい驚きっぷりだ。」


ハンスは、自分で考えていた通りに驚く4人に笑いかけながら、自分たちの冒険がどれほど奇妙で不可解なものだったかを思い返していた。


「ここまで話をして、自分で気が付いたんだけど、フレデリカは、奇妙なものを引き寄せる何を持っているのかも知れないな?」とハンスは感想を述べた。


クララ「………それは…一体」


エレナ「…どういう事ですか?」


「つい最近もあったじゃないか。メルロの事だよ。」

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