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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
12章 女主人の伝説
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遭遇

エレナは一人、街に買い物に来ていた。


彼女は手に持ったバッグを握りしめ、道を歩いていた。


用事を済ませ、屋敷での仕事がひと段落したら、今日はアンナ、クララと共に酒場に向かう予定だった。


その事を思い出し、クララの事をどうしようかと考えていた。


自分や、アンナはあれから少しずつ慣れていったのでエロいオーラに身もだえするという事は、少なくなった。


しかし、たまにクララがメルロに話しかける瞬間はたまにドキッとする。


彼女は絶対、街中を一人歩きさせてはいけない存在だ。


そんなクララを一人、街の酒場に放り込もうものなら、酒場の狼どもは何をするかわからない。


どうするべきか…おしゃれという事にして仮面でも被らせるか?


でも一人だけ被らせるのも変だろうし、むしろ注目を浴びてしまう。


そうでなくとも今の彼女は明るくまぶしい存在として見られがちだ。


まてよ、我々三人が仮面を被れば男どもの注意は分散するかも知れない…。


いやいや、まてまて、だったらあの酒場の店主に「仮面の居酒屋」として売り上げアップの提案をしてみるのはどうだろう…!


そうなってくれれば我々三人が仮面を付けていても不思議はない。


数日は、事情をしらない来客に紙で作った簡単な仮面を渡せばいい。


最近は外から来る客も多いので街の名物にもなりそうだ。店主も載ってくるだろう。


となれば話は早い。さっそく…


「うわ!」っとエレナは足元をひっかけ転んでしまった。


「大丈夫ですか!」と男性が手を差し伸べてきた。


「あ、ありがとうございます。」エレナが見上げる。手を差し伸べた男性はジェームズだった。



「エレナさんも買い物だったのですね。」とジェームズ


「ええ、ジェームズさんもですか?。ありがとうございました。はい。屋敷で使ういろいろなものを買い出ししてました。ほッ、良かった、危うく台無しになるところでした。」と礼を言いつつ、自分の状況を確認した。


「それはよかった。道を歩くときは、他に気を取られなように気を付けないといけませんね。かくゆう私も先ほど購入してきた本を、今すぐにでも読みたいという衝動を抑えながら歩いてます。」とジェームズが注意を促した。見るとその手には本1冊と先ほど近くの屋台で購入したであろう焼いたソーセージと揚げたジャガイモが握られてた。


「…どんな本なんですか?」とエレナが尋ねる。


「最近、街でも話題になっているシリーズでしてね。『マビノギオン偽典』というんです。聖職者の私がこういう本を好むのは、、周りからは、あまり良く思われないとはわかっているんですが、私はこういう甘酸っぱい恋愛話がすきでしてねw。2,3冊の新刊が予告されていたんですが、なんと10冊もでたんですよ。もううれしくてうれしくてw」とジェームズは喜々としてエレナに語り掛ける。


「それは面白そうですね。私も読んでみたいです。」とエレナは笑顔で返した。


ジェームズはうれしそうに「ぜひぜひ、読んでみてください!一緒に感想を語り合いましょう!」と言い、エレナと共に歩いた。


「ところでジェームズさん。この街の屋台にまつわる噂って知ってます。」とエレナが切り出す。


「ああ、あの『夢が叶う』という噂ですね?詳しくは知らないのですが、何かのアイテムを集めると夢が叶うってお話しですよね。素敵なお話ですよねぇ。どんなアイテムだろ。」とジェームズが返答する。


すると、いきなりエレナが歩みを止めた。


それに気が付いたジェームズはエレナに声をかけた。


「?どうされました。?」


「………ジェームズさん。……あなたがそんな人だと思いませんでした。…私は先ほど知らないふりをさせていただきましたが……あなた、知っていらっしゃるんじゃないんですか?…知ってて女性の私にそんなふしだらな物を薦めてくるなんて…見損ないました。」エレナが冷たい眼差しを向ける。


「ええ!?、ど、ど、どどいう事ですか。」エレナのあまりの豹変ぶりに心を乱されるジェームズ。


すると、エレナが耳を貸せという仕草をする。


「??」それに答えてジェームズが耳を貸す。


エレナが何事かをジェームズに吹き込む。


するとジェームズは、慌てて近くの階段に腰を掛け本を開き、手にしている屋台の包装紙と交互に目を配らせる、しばらくして驚愕の表情を浮かべる。


本に書かれた一文を、包装紙の模様として書かれた文字で、エレナに言われた通りに置き換えてみると卑猥な一文が浮かび上がった。


「こ、これは?ええ?、い、一体どうして?、え、エレナさん。私は知らなかったんです。」と慌てるジェームズにエレナが冷たい声をかける。


「…ジェームズさん。ちょっとお話しましょうか。」とエレナは目を細くし、口角を上げ、薄く口を開いてジェームズに話し掛けた。


こうしてジェームズは、この地に住まう『かわいい魔王』と初めて顔を合わせることとなった。

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