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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
11章 意思を持った剣
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名前を決めよう

「ケンちゃんの名前を決めようと思っているんです。」とメルロは言った。


同席しているのはハンス、フレデリカ、アンナ、クララと珍しい組み合わせだった。


「そうだな、ケンちゃんに似合う名前か…」ハンスは考え込んだ。


「はい。今の『ケンちゃん』のままだとエレナが名付け親になってしまうので、『ワタシのケンちゃんを奪ったヤツ』って思われてます。間違いなく。そのエレナからのプレッシャーを何とかしたいと思っているんです。」


「それにエレナは、ケンちゃんに対して異常なまでの執着があります。自分がケンちゃんの持ち主である以上は、エレナをこの執着から解き放たないと、なにかしらの事件が起きそうで怖いんです。これは自分の為だけではなく、エレナの為でもあります。」


メルロはあの後も夜はケンちゃんを納屋に閉じ込めていた。


その度にエレナからの視線が送られてくるのだが無理やり無視している。


何せケンちゃんは油断のならない奴なので、寝ている間に握らせてくるかも知れないのだ。


本当だったら、こういう事は、酒場の男達と酒を酌み交わしながら一緒に考えてもらうのだが、ケンちゃんの存在は酒場の男たちにも秘密にしなけばいけない。


そうしないと教会にケンちゃんの存在が知られてしまう。そうなったら自分も含め、屋敷の人たち皆、噂のイタンシンモンにかけられてしまう。


蛇食女スネークイーターと違ってかなりデリケートな問題なのだ。


だというのに当のケンちゃんは、畑仕事をするみんなの後をついて回る。


たまに握ってもらいたそうな仕草をするときがあるが、皆には仕事中の時は「ダメよ、ダメダメ」と断ってもらっている。


皆もケンちゃんを握ってしまうとどうなるかよくわかっているので受け入れてくれている。


断られても全くめげる様子を見せないケンちゃんは、断る人から離れ、また別の人の後をついて回る。


「ケンちゃん、ごめんね」|・ω・*)チラ エレナも断っているが、やめてほしい。断った後でこっちを睨んでくるのはやめてほしい。


ピーターとの初遭遇の時、ピーターは腰を抜かしていた。


ピーターにはどうにか誰にも話さないように秘密にしてもらっている。


そして畑仕事が終わったら自分はケンちゃんを握る。


すると「待ってました」と言わんばかりに自分自身を振るわせてくるケンちゃん。その勢いは全く衰える気配が見受けられない。


「うわあぁぁぁぁああぁぁぁああぁああぁぁぁ!」


その度に自分は叫び声をあげる。慣れない。全然慣れない。


「少し静かにね」とこっちの事情をお構いなしに注文を付けてくる蛇食女スネークイーター。恨めしい、ヤツが恨めしい。


その容赦ない剣舞の要求の後は毎度のように足腰が立たなくなる。


それでも、自分はその後に週に何度かは酒場に向かう。


それが日常となっていた。

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