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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
11章 意思を持った剣
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持ち主の責任

メルロは自分の部屋で今日の事を思い出し、そしてまだ何も解決していない事に気付いた。


ジェームズにどう説明すればよいのか?


ハンスの言い分では秘密にせざるを得ないという事だったが、確かに本当の事を話すとイタンシンモンとやらにかけられ拷問されるとのアンナの話を思い出し、本当の事は話せないという結論にはなった。


では、なんと説明するべきなのか?


…一本足の物の怪は退治したというのはどうだろうか?初めて遭遇したのは帰りの夜道でハンスと一緒に帰っていた時だ。


その時に認知して翌日ハンスと共に退治した、しかし、その正体自体は暗くてよくわからなかった。というのはどうだろう…。


メルロは、この説明がジェームズを納得させるかどうか心配していたが、少なくとも自分たちが何か対処しようとしていたことを示すことができると思った。


そして、もしジェームズがさらに質問をする場合は、メルロは、何か不審なことを見たわけではない、ただ単に一本足の怪物がいたというだけだと説明するつもりでいた。


ハンスにも事情を話してからジェームズに報告する事にした。


よし、これで行こう。


と心に決めて寝床に横になっていると、その横で剣はピョンピョン飛び跳ねていた。


「……心配しなくても大丈夫だよ。」と瞼を閉じようとするメルロ。


「……なんでお前がここにいるんだ………」


メルロは剣を捕まえて納屋の二階に放り込んで扉を閉めた。


ドンドンと剣が扉に突撃する音が聞こえてきたが、メルロは無視した。



翌日、メルロはハンスと一緒にジェームズの元に行った。


「ジェームズさん、一昨昨日サキオトトイ、ハンスさんと僕は何かを見つけたんです。どうも、一本足の物の怪が現れたようなんす。それで、僕たちは一昨日退治したんですが、その時は暗くてよくわからなかったです。その後も調査してみたんですけど、その正体はわからなかったんです。」


ジェームズは少し驚いた様子だったが、すぐに理解したようで


「そうか、それであの不穏な雰囲気が消えたんだね。ありがとう、二人とも。でも、もし何かあったらすぐに私に報告してくれるように。」


メルロとハンスは少し安心したような顔をした。このままならば、問題は解決したようだった。



二人で屋敷に戻った後、メルロはエレナに捕まり、無理やり納屋へ連れ込まれた。


エレナは怒りに満ちた顔でメルロに言った。


「メルロさん。あなた、ケンちゃんにひどい事したわね!二階に放り込んで閉じ込めるなんてあんまりじゃない!私、昨日観てたのよ!どうして一緒に居てあげないのよ!ケンちゃんのご主人様でしょ!」


「いえ、別に主人になった憶えがありませんし、僕にはトウサン(猫)がいますし、ヤツがいるとトウサン(猫)びっくりして威嚇するんですよ。」と答えた。


「ヤツってその呼び方ひどい!、でも、それでもあなたはケンちゃんの世話係なんでしょう?責任があるでしょう?」とエレナはまだ怒っていた。


「いつそんな係ができたんですか、というかケンちゃんって、……ケンちゃんは元気でしたか?」とメルロは聞いた。


「元気というよりは、怒っていましたよ。(嘘)でも、あなたが来たらすぐにおとなしくなりました。(本当)ケンちゃん、あなたが好きみたいですね。(嫉妬)」


「そうですか。でも、自分も時間に余裕ができたらケンちゃんの相手しますよ。」とメルロは言った。


エレナは少し落ち着いた様子で、「わかったわ。でも、今後はケンちゃんを放置しないでね。」と言って笑顔を見せた。


「でも、そんなに好きならエレナさんがケンちゃんのご主人様になってもいいんですよ?」と声をかけるとエレナは背を向けて震えていた。


「言ってくれるじゃない…。私だってそうしたい!……でも私には無理。だって、私、昨日ケンちゃんに振られちゃったもん!」と泣きながら駆け出した。


メルロが後で聞いた話では、エレナは昨日、納屋の二階にケンちゃんが閉じ込められた様子をみて納屋の二階に迎えに行ったのだが、メルロにないがしろにされたケンちゃんは半分グレていたらしく、エレナの手を弾いてしまったらしい。


人間不信になってしまったのかと思い込んだエレナは、時間をかけてでも、ケンちゃんの凍てついた心を溶かしてあげようと思っていた矢先、ハンスと共に帰っていたメルロを見つけた時のケンちゃんの喜びようにショックを受けたらしい。


そして訳の分からない三角関係が生まれてしまった。


よく訳が分からないことになったなと思いながら、畑仕事の準備をする為、屋敷に入った。


すると遠目でフレデリカが誰かを抱きかかえている様子が目に入った。


誰かの頭を撫でて慰めているようだった。


「…どうかしたんですか?」と近づいてみるとアンナ、クララ、フレデリカが鋭い目つきでこちらを見てくる。


フレデリカが抱えているのは泣いているエレナだった。


「…お、おやぁ…」鈍いメルロでも危険な状況だと言う事が分かった。


緊急避難を試みようとしたメルロの前にアンナが立ちはだかる。


アンナ「…座れ…」


メルロ「…はい…」


クララ「…私たちの『かわいい魔王様』になにしてくれたんですかね……」


メルロ「…その、ケンちゃんについてちょっと…」


アンナ「…言え…」


メルロ「…はい…その、え、エレナさんがケンちゃんのご主人様になってくれたら…う、うれしいなぁって…いいました。」


エレナ「ちがう!そんな感じじゃない!『そんなに好きならwwエレナさんがケンちゃんのご主人様になってもいいんですよ?wwははwなれるもんならww』って馬鹿にしたノぉぉぉうわぁぁん!」


メルロ「…ちょっと…何言ってるんですか!なにか一言ついちゃってますよね!?」


アンナ「…オイ…」


メルロ「…はい…」


アンナ「…お前のトウサンジュニアは何色だ…」


メルロ「…はい…たぶん、肌色だと思います。…」


クララ「…じゃあ真っ赤に染め上げてもいいですか……」


メルロ「…その、やめていただけるとうれしいです…」


クララ「…じゃあ真っ赤で決定ですね……」


メルロ「…ちょっと…やめてくださいお願いします。…」


クララ「…女の子泣かせておいて無事でいられると思っていたんですか……」


メルロ「…いや、『子』ではないと思うの…」


アンナ・クララ「あああん!???」


メルロ「…すーーーー。…」


フレデリカ「…メルロ…」


メルロ「…はい…」


フレデリカ「…やっぱり貴方はあの剣の持ち主なのよ…」


メルロ「…はい…」


フレデリカ「…責任もって世話をしなさい…」


メルロ「…それについて・ガッ!…」(クララに蹴られる)


メルロ「…はい…」


こうしてメルロは勝手に動く剣の持ち主として正式に認められた。

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