人の話はまず聞きましょう。
朝の畑仕事をしている内に、フレデリカが帰ってきた。
メルロは彼女に子供たちの失踪について調査した結果を報告した。そしてジェームズにもそれは報告している事も伝えた。
また、ハンスと共に一本足の物の怪についても話した。
フレデリカは、「一本足の物の怪」という言葉に注目した。
彼女は本から何ページかめくり、何かを探していた。そして、何かを見つけたらしく、ページを閉じた。
「これはとても興味深いものです。これは、この地域に伝わる伝説の一つです。それは『片脚のトロール』と呼ばれています。彼は、夜になると出現し、人々を脅かし、時には攻撃すると言われています。」
「でも、それは伝説に過ぎないのでは?」とメルロは言った。
「そうですが、もしかしたら何か手がかりになるかもしれません。私たちは、この伝説について調べてみる必要があります。」とフレデリカは言った。
ハンスとメルロは互いに目を合わせながら言い辛そうに切り出した。
「調査は必要ありません。一本足の物の怪は捕まえました。」とメルロは報告した。
フレデリカは唖然としていた。そして声を絞り出して言った。
「え?、捕まえたって、え?、どこに!?」フレデリカは驚きのあまりにカクカクしながら言った。
「今、納屋の二階に閉じ込めてる。」とハンスが言う。
「…結局なんだったの!?」とフレデリカが尋ねてくる。当然の反応だ。
「それが……、なんと表現するのが正しいのかちょっと…」とメルロは歯切れの悪い回答をした。
「『片脚のトロール』とか言うやつじゃない事は確かだ。」とハンスが言う。
それを聞いたフレデリカは段々膨れっ面になっていった。
「…ちょっと。二人して私を馬鹿にするつもりなの!?」
「いや、違う違う、そうじゃ、そうじゃない。」とハンスは慌てて否定する。
「本当になんて言ったらいいのか分からなくて困ってるんです。本当に物の怪と言ってもいいんじゃないかとさえ思っているんです。」とメルロも困り顔で言った。
「…で、結局なんだったの?=3」不機嫌な顔でフレデリカは再び尋ねた。
「一本の棒でした。」とメルロが話す。
「あ、いや、剣だったよな?、一本の剣だ。」と訂正を促すハンス
「あ、そうでした、一本の剣でした。」とメルロが訂正する。
「…なに?、なんなの?、最近お二人は仲がおよろしいらしいじゃない?、お二人はいったいナ・ニ・ヲ企んでいるのカシラ?」目を細め、鼻で笑うような仕草でフレデリカは言った。
そんな嘘で私を騙せると考えてるのが笑えるわとでも言いたげだった。
「いやいや、そうじゃないんですって!」とメルロ
「嘘なんて言ってない。全部本当の事だ。ただな?」とハンス
メルロ「勝手に動くんです。」
ハンス「勝手に動くんだ。」
「…えっ?」
メルロ「勝手に動くんです。!!」
ハンス「勝手に動くんだ。!!」
しばらくしてフレデリカは、トントンと人差し指で机をただき出して何事かを考えているようで、二人を交互に見回した。
「……( ´_ゝ`)フーン。いいでしょう。お二人が?その気なら?その閉じ込めたという納屋に行ってみましょう?」と未だに疑心暗鬼の様子でフレデリカが答えた。
3人で納屋に行き、ハンスが二階に上がった時、すぐに慌てて降りてきて納屋の外回りの二階部分を見渡した。
メルロはその意図に気が付き、反対側に回って同じように納屋の外回りを見渡した。
「えっ、なになにどうしたの!?」とハンスに尋ねる。
「いや、今日はやけに静かだなってちょっと心配になっただけだ。」と答えるハンス。
ハンスは納屋の二階の扉を開き、目的のモノを見つけたとたん安堵して納屋の二階から降りてきて外にいるフレデリカの下へ戻っていった。
「これだよこれ。」とハンスは袋に包まれた棒を差し出す。
「これは…そうよ!これよ!。見当たらなかった荷物ってこんな感じだった!まっすぐって訳ではなくて、途中で突起かなんかがあって膨らんでいたのよ!なくなっていたと思っていたら見つかったのね!」と興奮するフレデリカ
そして二人が止める間もなく袋の口の結び目を解いてしまっていた。
「フーン。これ剣なのね?刀身ってどうなってるのかしら♪」興味津々といったようすで調べるフレデリカ。
「あああ!!気を付けてください!不用意に握ってしまうと」とメルロが止めようとしたが、フレデリカは既に剣を抜こうとしていた。
「えっ何!?」とメルロに目を向けたが既に遅かった。
メルロ・ハンス「「あッ」」
フレデリカは体が勝手に動くのを感じた。
鞘から抜かれた刀身がキラリと光った瞬間、鞘が投げ捨てられ、ヒュンヒュンヒュンと剣を振り回すフレデリカがそこにいた。
「えっ?ちょっと」ヒュンヒュンヒュン
「なにこれ?」ヒュンヒュンヒュン
「なにこれ?、なにこれー!?」ヒュンヒュンヒュン
「誰か、誰か助けてぇぇぇぇ!?」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
こうなってしまうと皆避難する以外に方法がなかった。
メルロ・ハンス「「あぁぁぁ、人の話を聞かないから………」」
しばらくしてから解放されたフレデリカは疲れ果てて、足腰が立たず、生まれたての小鹿のようにプルプル震えていた。