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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
10章 街の事件簿
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裏切者のメルロ

メルロが夜の酒場に入ると、アンナ、クララ、エレナの席から「あの裏切者が来たわ!」と声が上がった。


アンナが「あんた私達がいない間に、こっそりと私たちの話をジェームズに漏らしたでしょう?」と責めた。


クララは「あなたは私たちを信じてくれなかった。あんたは私たちを裏切ったんだわ」と言い放った。


エレナも「あんたは私たちを裏切った。私たちはあんたを信じていたのに」と憤慨した様子だった。


メルロは驚きつつも、冷静に彼女たちの非難を受け止め、機嫌を直してもらうことに努めた。



「それじゃあ、お待たせしていますね。では、注文をお伺いします。アンナさんは何になさいますか?」


「ワインよ。グラスで。裏切者。」


「クララさんは?」


「私はビールがいいわ。瓶で。裏切者。」


「エレナさんはどうされますか?」


「私はお茶でいいわ。裏切者。」


(店の人に注文を頼んだ後、3人のテーブルに向かって)


「それじゃあ、アンナさんはグラスのワイン、クララさんは瓶のビール、エレナさんはお茶ですね。」


(アンナ、クララ、エレナが確認の為に注文を口に出し、最後に裏切者と言うと)


「えっ、なんだって? どうしてそんなことを言うんですか?」と、メルロは戸惑いを隠せなかった。



ジョン、マイク、ヨハン、クラウスはアンナ、クララ、エレナの態度に戸惑いながらも、同席していた。メルロが店の人に注文を頼んでいる間、ジョンが口を開いた。


「アンナさん、クララさん、エレナさん、何があったんですか?」と彼は尋ねた。


3人は彼に一瞬、驚きの表情を見せたが、すぐに顔をしかめ、言葉を返した。


「裏切り者には言葉がないわ」とアンナが言った。


「そうよ、あなたたちと同じように仲間だったはずなのに、裏切って私たちを困らせたのよ」とクララが続けた。


ヨハンはそんな3人の様子に微笑みかけながら、言葉を投げかけた。「でも、彼が本当に裏切ったんですか?私たちはまだ真相を知らないと思いますが」


クラウスもそれに同意し、「そうですね。先入観を持たず、もう少し話を聞かせてもらえませんか?」と尋ねた。


3人はしばらく考え込んだ後、メルロたちに視線を向け、「じゃあ、話を聞いてみましょう」と言った。


メルロは自分がフレデリカに会いに行ったことを話し、「売ろう」という意図はなかったが、もし蛇食女スネークイーターが本当に悪事を働いているなら、彼女を正すために手を打ちたかったと説明した。


3人はそれに対して、「お前は自分を正当化しようとしているだけだ。教会に売ろうとしていたのは明らかだ」と反論した。


メルロは落ち着いて説明した。「いや、そういうことじゃない。蛇食女スネークイーターが何かやらかしたのか、調べてみたかったんだ。噂で子供たちが失踪してると聞いたから、それも含めて調査をしていたんだ」。ジョン、マイク、ヨハン、クラウスがうなずき、アンナ、クララ、エレナも少しは納得した様子だった。


すると、アンナが「でも、蛇食女スネークイーターが何か悪いことをしたという証拠はないわよ。あなたたちはただの噂を信じて、彼女を疑っているだけじゃない?」と言った。


メルロは考え込んだ。「そうかもしれない。確かに犯人は蛇食女スネークイーターじゃなかったです。」と言った。


確かに犯人は魔女と呼ばれる女性だった。現実は噂とはかけ離れていた。


アンナ、クララ、エレナがうなずくと、クラウスが「でも、もう十分じゃないか?メルロも反省してるし、これ以上蒸し返すのは危険だぞ」と忠告した。


3人はまだ納得していない様子だったが、その後は追究される事はなかった。しかし、会話の端々で「裏切者」と呼ばれるのはメルロとしては心が痛かった。


そろそろ解散という時だった。


酒場にいた者たちは皆、二人以上で連れだって帰る様子が見られた。


メルロは周囲の人々が二人以上で連れだって帰る様子に、不思議な感覚を覚えていた。


彼らが危険を感じているのか、あるいは単に友人たちと一緒に帰りたいだけなのか。


メルロはそれを見て、自分自身の孤独を痛感した。


自分には本当に自分を知る仲間がいるのだろうか、と。そんな不安がメルロの心を襲っていた。

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