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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
10章 街の事件簿
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メルロの荷物

メルロが怪事件の調査で街の教会をまわっている間、屋敷の中で、屋敷の面々が集まっていた。


ハンス:そろそろ、メルロの記憶が戻る兆候はないのか?


ジョセフ:まだ何も手掛かりはないようだ。一体何が原因でしょうか?


マーガレット:なにかの事故が原因かもしれないわ。その衝撃で記憶が飛んだのかもしれないわ。


アンナ:でも、メルロは生きていて、それが一番の幸いよ。


クララ:本当にそうね。でも、記憶が戻るといいわね。


エレナ:そうだわね。なにかひとつでも手掛かりがあればいいのだけれど。


フレデリカ:あの、私、思い出したことがあるの。メルロを拾ったとき、彼の荷物の中身が何が何だかわからないものがたくさん入ってたのよ。


ハンス:何が何だかわからないもの?


ジョセフ:それはどういうことだ?


フレデリカ:うーん、形が奇妙だったり、いい匂いがするものだったり、何かを包んでいるような袋に入っていたものがあったりと様々だったわ。


マーガレット:不気味ね…。何が入っているのか気になるわ。


アンナ:もしかして、メルロの記憶喪失と何か関係があるかもしれないわね。


クララ:でも、私たちがメルロに聞いても、彼自身も覚えていないかもしれないわね。


エレナ:そうね、でも、何か手掛かりがあれば、調べてみるのもいいかもしれないわね。


ハンス:そうだね。では、フレデリカ、その袋を見つけた場所など、詳細を聞かせてくれると嬉しいな。


フレデリカ:はい、わかりました。その時のことを思い出して、詳細をお伝えします。


フレデリカは、荷物を見つけた時のことを話し始めた。


フレデリカ:「あの時、私は寄宿舎学校での同級生のベアトリスが主人をしている商会からの帰り道に盗賊に襲われたんです。でも、盗賊に逃げられた後で叫び声がした方へ向かったら、メルロと彼のものと思われる荷物を見つけたんです。」


ジョセフ:「それはすごい偶然ですね。」


フレデリカ:「そうなんです。でも、荷物の中にはいろいろなものがあったんですよ。四角い綺麗な板で指で押せる部分が幾つかあって押してみてもすぐ止まるしすぐ元に戻っていったい何に使うのかわからない。」


ハンス:「それは不思議なものですね。」


フレデリカ:「そうですね。あと、軽そうな容器に何かの液体が入っていて上に小さい円柱のようなものがあって、回すと取れて中身が見えるんです。そして中の液体はいい匂いがするんです。」


マーガレット:「それは何だろう?」


フレデリカ:「わかりません。他にも、包んでいるような袋に入っていた長い棒のようなものや、鉄や焼きものでもない軽い鍋のようなものがありました。」


エレナ:「本当にいろいろなものがあるんですね。でも、それをメルロに渡すのを忘れてしまったんですか?」


フレデリカ:「はい、そうなんです。どこに置いたかも思い出せないし、話すのを忘れていました。ごめんなさい。」



ジョセフ: ああ、確かに思い出した。フレデリカ様が馬車の荷台にメルロと荷物を載せて連れてきたんだ。荷物は確か、納屋の二階に置いたはずだ。


ハンス: そうか、ジョセフも荷物があるのを見たんだな?。


ジョセフ: そうだ。でも、中身は何だったんだろう?


マーガレット: それが気になるわね。四角い板や軽い容器、長い棒のようなもの……。何に使うものかしら?


アンナ: 匂いのいい容器は、おそらく香水か何かだろうね。


クララ: 香水?それにしては、回すと中身が見えるっていうの話よね。


エレナ: 他にもたくさんあったっていうから、何かしらの仕事に使う道具とかじゃないの?


フレデリカ: うーん、それがわからないわ。それに、メルロにそれを話すのを忘れてたわ。


ハンス: 大丈夫、私たちで探せば何とかなるさ。まずは、納屋の二階に行ってみよう。



ジョセフが納屋の二階に行って荷物を確認し、壁にあいた穴を見つけた後、屋敷の面々が集まって話し合っていました。


ハンス:「棒のようなものがないってことは、盗まれたんじゃないかな。ただ、それを包んでいたんじゃないかっていう袋はあったね。」


マーガレット:「でも、ここは街から離れているでしょ?誰がこんなところに来て盗むっていうんだろう。」


アンナ:「それに、あの荷物はかなり大きいし、馬車で運んだのに、いつ盗まれたっていうんだろう。」


クララ:「四角い板に描かれていた黒い長方形って何だろう。何かの印なのかな?」


エレナ:「液体は石鹸かもしれないわね。手でこすると泡立つっていうのは石鹸の特徴じゃない?。なんかいい匂いだったけど、何かの花の香りだと思うわ。容器に書いてる文字は何か読めそうだった。アリ〇ール?だったかな?」


フレデリカ:「私が見つけたときは、棒のようなものがあったのに、今はないなんて不思議。」


ジョセフ:「壁にあいた穴も気になるな。何かを探りに来た盗人がやったんじゃないかと思うんだけど、でも二階なんだよな。一階ならありえそうなんだけどね。」


ハンス:「それにしても、この軽い鍋はなんでできているのか分からないな。木のような質感だけど、木ではないようだし。」


マーガレット:「他にもいろいろあるけど、この荷物は本当にメルロのものだったんだろうか。何かがおかしいような気がするけど。」



フレデリカは、メルロと荷物を見つける前に不思議な出来事があったと話し始めました。


「あの時、私が盗賊に襲われた後で叫び声が聞こえた方へいったら、何かが私に話しかけたんです。姿は見えなかったけど、声だけでした。言葉は聞いたことがないものでしたが、意味は伝わってきました。不思議な体験でした。」


「何を言われたのか覚えていますか?」と、アンナが尋ねました。


「『男を助けろ』と言われた気がしたんです。でも、知らない言葉なのに意味が解るのはどういうことなのか分からず、怖かったです。」


「男を助けろって、何かしらの予兆だったのかもしれないね。それがあなたがメルロを見つけることに繋がったんだよ。」と、ハンスが言いました。


フレデリカは少し驚いたような表情を浮かべ、言いました。


「そうかもしれないですね。確かに、その声に導かれてメルロとあの荷物を見つけることができました。」


会話が終わると、フレデリカはメルロと荷物を見つける前の不思議な出来事について、皆に話すことができたようで、ほっとしたような表情を見せました。


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