スネークイーターの咆哮
フレデリカは深いため息をつきながら、女貴族・ヴィクトリアの屋敷に向かっていた。
彼女は悪い予感がしていた。
以前、「トウサンジュニアの主」という不名誉な名前がフレデリカにつけられた噂を、ヴィクトリアから教えられたからだ。
もしかしたら、「パン泥棒と蛇食女」の噂も、この女貴族には伝わっているかもしれないと思うと、不安が募っていった。
ヴィクトリアとフレデリカが取引を終え、お茶を飲みながらくつろいでいたとき、ヴィクトリアが不穏な表情を浮かべたまま口を開いた。
「フレデリカ、聞いてほしいことがあるわ。」
「どうしたのですか?」とフレデリカが問いかけると、ヴィクトリアは深い溜め息をついた。
「あなたについて、とある噂を聞いたのよ。以前、あなたがトウサンジュニアの主であるという噂が流れたことを知っているでしょう?」
フレデリカは表情を変えず、ヴィクトリアの話を静かに聞いた。
「そして、最近では『パン泥棒』と『蛇食女』の噂も広まっているわ。私はあなたがそれらの噂に関わっているとは思っていないけれど、もし本当なら危険よ。」
フレデリカは少し驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「ヴィクトリア様、私はその噂には全く関わっていません。(嘘)ただ、真実を知るために調査はしています。」
ヴィクトリアはうなずき、深くため息をついた。
「そういうことなら良かったわ。でも、周りの人たちもあなたが無実であることを知っているわけではないから、気をつけるように。」
フレデリカは頷き、黙ってその言葉を受け止めた。
ヴィクトリアが「パン泥棒の噂はどこから聞いたの?」と執事に問いかけると、執事のジョンソンが口を開いた。
「ここ最近、街で噂されているようです。それによると、パン泥棒は記憶喪失のようですね。誰とも知れない仲間に自分を知らせるために駆け回っているとか。」と彼は答えた。
フレデリカはジョンソンの言葉を聞きながら、心の中で思いをめぐらせた。
(メルロが記憶喪失であることは確かだし、彼が駆け回っているのは何かしらの理由があるのも分かっている。でも、『誰とも知れない仲間に自分を知らせるために駆け回っているらしい』なんて初めて聞いたわ。まあ、元々メルロが街を駆け回る理由を知らなかったから、それも納得だけど。)
そして、フレデリカは罪悪感を感じた。
彼女はメルロの友達である蛇を知らずに食べてしまったことを思い出したのだ。
そして、パン泥棒の件で叱ろうとしていたが、すこし大目に見てやってもよいかもと思い始めた。
(メルロ、やっぱり大変なのよね。『パン泥棒』をやっていることは許せないけど、ちょっと大目に見てあげてもいいかもしれないわ。)
「街ではパン泥棒が英雄視されているとは、嘆かわしいことですね」とジョンソンが話しました。
その言葉に、ヴィクトリアは苦笑いしながら、
「それは確かに嘆かわしいことですが、時には物事がそうなってしまうものです。」と答えました。
「でも、そういった流れを作り出したのは我々貴族の方々ではないかと思います。私たちが適切な報酬を払っていれば、彼らはそんな行為に走ることもなかったでしょう。」とヴィクトリアは続けました。
ジョンソンは苦い表情でうなずきましたが、その後は黙り込んでしまいました。
ジョンソンは話を続けて、以下のように語った。
「しかし私はあの街で偶然ではありますが、パン泥棒と思わしき人物の声を聴いたのです。」
それを聞いたフレデリカは一瞬固まった。
ジョンソンは続ける。
「姿までは確認できませんでしたが、酒場で聞いた声は、何か悪意に満ちているように感じました。」
「その人たちは、パン泥棒を指南しているようでした。指南していた人の名前は、確かヨハンと呼ばれていました。」
「内容はとぎれとぎれで、よく聞こえませんでしたが、適当な大きさの石を墓に見立てて悲しむ様子を見せることで、とある人物から叱られないようにする、というようなことを言っていたようです。」とジョンソンは話した。
ヴィクトリアはジョンソンの話を聞いて、顔を曇らせた。
彼女は「これは、非常に深刻な問題ですね。パン泥棒を指南している人物がいるということは、この事件がより大きな問題に発展する可能性があるということです。ヨハンという名前は、どこかで聞いたことがあるような気がします。調べてみます」と言った。
フレデリカはヨハンという名前に心当たりがあった。
そして以前、妻帯者でありながらフレデリカに告白してきた男だと思い出した。
それよりもその指南内容もなにか最近にたような事があったような……………。
…………………あれか。
ジョンソンが聞いたヨハンの指南内容とメルロがフレデリカに悲しんで見せた行動が一致した瞬間、フレデリカのこころの奥底でなにかの火が灯った。
ジョンソン:「それに、パン泥棒は『そのうちもっとすごいことをして蛇食女に目にものを見せてやる。』と宣言していたんですよ。これは悪意以外のな」
(言い終わる前にフレデリカが怒鳴り出す)
フレデリカ:「(#゜Д゜)あんのやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
(ジョンソンとヴィクトリアが驚愕し、唖然とする様子を見せる)
フレデリカは怒りの波が引いた後、深呼吸をしてから落ち着いた表情に戻りました。
そして、ヴィクトリアとジョンソンに向かって
「取り乱しまして申し訳ございません。用事が出来ましたので本日はこれにて失礼させていただきます。本日はありがとうございました。それでは失礼いたします。」と言い、頭を下げて別れの挨拶をしました。
ヴィクトリアとジョンソンも驚きと恐怖心から回復し、フレデリカの態度にほっとした様子で返事をしました。
フレデリカは素早く振り返って、石段を降りて街へと向かいました。
その顔は達観した様子であったという。
いそぎ馬車を走らせるフレデリカは心の中でつぶやいた。
(まっていろヨ…パン泥棒!!)




