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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
6章 駆け巡る噂
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パンの正体


使用人たちはガスの話を聞いて驚いた様子で、さらに質問を投げかけます。


ローズ:「保つって何のこと?」


ガス:「パンの硬さのことです。あんなに走りこんでいたら、パンが柔らかくなってしまうはずです」


ジェーン:「蛇食女スネークイーターはいたの?」


ガス:「いいえ、いなかったです」


ウィリアム:「じゃあ、フレデリカ様はいたの?」


ガス:「追手たちがフレデリカ様一同という噂は聞きましたが、実際に姿を見たわけではありません」



「それで、もう一つ不思議なことがあるんですよ」とガスが言いました。


「パンの正体が『父さんジュニア』っていう話を聞いたことがあるんですが、何のことか全然わからなかったんですよ。」


「『父さんジュニア』って何だよ、それ」と他の使用人たちも不思議そうな表情を浮かべました。


「でも、パンに正体ってのがあるんでしょうか?」とフェルナンドが問いかけました。


皆がそれに思案すると、ガスはさらに言いました。「でも、皆さん、一つだけ思ったことがあるんです。」


「何だ、何だ?」と皆が興味津々で尋ねると、ガスは言いました。


「先程のパンの硬さの事です。あのパン、なんであんなに硬いんだろうって。」


「あの走りっぷりだと、硬さは取れるはずなんですけどね。『父さんジュニア』はそのなぞを解くカギなのかな?って」


その言葉に、皆が驚きの声を上げました。


「まさか、そのパンが何かしらの重要な証拠だったりするのか?」


そして、使用人たちは考え込む中で、フレデリカに尋ねることに決めました。


「でも、フレデリカ様、何か知っていることはありませんか?」とガスが尋ねると、フレデリカは挙動不審になったまま答えました。


「わ……わからない……です。」



うそだった。


パンに正体が『父さんジュニア』だというも知っていて『父さんジュニア』がなんなのかもよく知っていた。


パン=『父さんジュニア』にそんな大それた秘密なんてあろうはずがいない。丸裸だと。


いや、布一枚は身に着けているか………………というかそういう話ではなくて


硬さについてはわからない。それは男性陣の方がよく知っているんじゃないかと。


レディに向かって問う内容じゃないんじゃないかと抗議したかったが、パンの正体を知られたくなかったので飲み込んだ。


しかし、このガスという使用人は実は『パンの正体』を知ってるんじゃないかいう考えが浮かんできて訳が分からなくなってきていた。



ガス:「皆さん、聞いてください。街に付く直前にパン泥棒の噂をきいたんです。自分は走りには自信があったから、出くわしたら勝負しようかと思ってたんです。」


「でも、実際にパン泥棒のパンを見たら、自信をなくして引退の二文字が頭に浮かんだんです。」


「あのパンの正体は察しがついてるんですけど、『父さんジュニア』の謎はどうしてもわからなかったんです。」


「パン泥棒にあって私にないものはそれなのかも知れないのに。」


「おっと、長期合宿に遅れてしまいそうですので、自分はこれで失礼します。フレデリカ様、フェルナンド様、皆さんに別れの挨拶をさせてください。」



ガスが「失礼します」と言って、一同に別れの挨拶をし、去っていきました。


しばらくの間、静かになりましたが、その後、ガスが「あのパンの正体は察しがついてる」という言葉に、皆が気づき、堰を切ったように騒ぎ始めました。


「「「「「「「あっ!?」」」」」」」


「それは何だ!」「どういうことだ!」「パンの正体って何なんだ!」


その中でもフレデリカは挙動不審になっていました。


ガスに問いかけられたことを思い出し、彼女は何かを隠しているような態度をとっていました。


「フレデリカ様、あなたも知っているのですか?」と誰かが尋ねましたが、フレデリカは振り返らず、静かに足早に去っていきました。


「つ、次の取引先に間に合わなくなるので、えええ、失礼します。」と言い残しました。

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