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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
6章 駆け巡る噂
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噂話

ベアトリスは、フレデリカの領内の街に何か大変なことが起こっているらしいという噂を聞いたと話しました。


「そういえば、あなたの領内の街で大変な事が起こっているらしいじゃない?」


「大変な事?」


フレデリカが不思議そうな顔をするのでベアトリスは同席した側近のルカにどういう噂だったか尋ねました。


「泥棒騒ぎだったと聞いてます。」ルカが答えました。


「ブフ!…げほげほ。」フレデリカは咳き込みました。


「大丈夫?」ベアトリスとルカは心配しましたが、フレデリカは大丈夫と答えました。


「で、どんな泥棒なんだっけ?」ベアトリスはルカに尋ねました。


「なんでもほぼ毎朝出没するそうです。なんでもパンを盗むとか。」


「パン?」


騒ぎという割には貧相なものを盗むのでベアトリスは拍子抜けをした顔をしました。


続けてルカは「以前、領主自ら討伐隊を率いて対処しようとしたそうですが、失敗に終わったそうです。」と答えました。


領主といえばフレデリカの事なのでベアトリス心配そうに「どういうことなの?。大丈夫なの?。言ってくれたら人を借すよ?。」とフレデリカに尋ねました。


フレデリカは「えっと、そんなことあったかしら?」ととぼけて自分を落ち着かせるように震えながら水を飲みました。


その言葉にベアトリスは「あれ?じゃあ何かの勘違いだったのかな?」と問いかけました。


「私の友人が討伐騒ぎの場にいました。その友人から聞いた話です。」


「!?ゴフ!……グフ!グフ!グフ!グフ!」ルカが口にした予想外の情報にフレデリカは衝撃を受けて咳き込みました。


「あら、だ、大丈夫?」


「大丈夫ですか?」


ベアトリスとルカは心配して声をかけましたが、フレデリカの心中は大丈夫ではありませんでした。


(なんて面倒なことになったのかしら)


フレデリカはつじつまを合わせるためになんとか言葉をさがしました。


フレデリカが落ち着いた様子をみてからベアトリスはルカに尋ねました。


「その情報は確かなの?。詳しいことはわかる?。」ベアトリスは大変な騒ぎだという噂とフレデリカの反応が食い違う事が気になりました。


「はい。友人である彼は競技者団体『新人類研究所』に所属してまして、その街で開かれる競技会の審査会議に出席する時に見かけたのだそうです。」


「彼が見かけたのは逃亡中の泥棒の方だけだったようですが、その走り方には感服したそうです。」とルカはベアトリスの問いかけに答えました。


「競技者から見た感想からすると相当足が速いのね?」とベアトリスは分析しました。


「ただ別れ際に彼は気になることを言ってました。」とルカは思い出しながら言いました。


「どんな?」


「『なんであんなにパンが保つんだ?』とつぶやいてました。」


「どういうこと?。保つって……保存の事?。」


「わかりません。」


「フレデリカは何か知ってるの?」


振ってほしくない話を振られたフレデリカは答えに詰まりました。


「さ、さあ?。えっと、いつだったか街でなにか騒ぎがあった事は知っていたんだけれど、本当に何かを盗んだとかいう話ではなかったようなの。その時はそんなに気に留めていなかったのよ。多分そのことじゃないかしら?。」とフレデリカはとぼけました。


「そう?、でも領主自ら討伐隊を出したっていう話じゃない?」とベアトリスは疑問を口にしました。


余計な情報に対してフレデリカは苦し紛れに「そ、そこは………噂として尾ひれがついたんじゃないかなぁ?。えっと、その友人は追手の方は見てなかったんですか?」とルカに尋ねました。


「はい。泥棒だけを見かけたとの事ですので見てないと思います。」とルカは答えました。


その答えにフレデリカは胸をなでおろしました。


「ふーん?。じゃあ騒ぎはあった事は確かだけども、大変な事というわけでもなかったという事かな?。うわさはあてにならないってことかな?」


「でも、もし本当に大変な事になったら私に言ってよ?。できる限り力になるから。」


ベアトリスの暖かい言葉に「ありがとう」と感謝を言いつつ


心の中では逃げ切った達成感に安堵してました。

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