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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
5章 女主人の幼少期
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燦然と輝く太陽

ハンスは笑みを浮かべながら、マーガレットに語りかけました。


「でもね、その後、御屋形様から私に役目が変わったんだよ。フリッカの湧き上がる元気を受け止める役ってね。」


「そうだったの?ハンスはそれでも大丈夫なの?」


「うん、大丈夫さ。でも、その後の事は長くなるから、今度ゆっくり話すよ。」


「そうね、今度ゆっくり話しましょう。ハンス、あなたって本当に頼りがいがあるわね。」


マーガレットは優しい笑顔を浮かべ、ハンスの肩を軽く叩きました。


ハンスは満足そうに笑いながら、次のように語っていました。


「彼女がどんな豪傑になるか、自分も期待していた。そして、寄宿舎学校へ行って戻られた時には、彼女は自分たちの予想をいい意味で裏切って、本当に立派なレディになっていた。」


「それは、やはり御屋形様が亡くなられたことがきっかけだったのではないかとは推測している。フレデリカは彼女の父親を失った悲しみからそうなったのだろうと。」


マーガレットも、立派なレディになって帰ってきたフレデリカを思い出し、感慨深げに語りました。


「あの子は本当に、周りを照らしつけるような明るさを持っていましたね。でも、それを引っ込めてしまった今の彼女も、その立ち振る舞いには感動します。」


そう話すハンスとマーガレットはどこか寂しげに見えた。


アンナとクララは興味深そうに聞いていた中、クララはエレナがつぶやいていることに気が付いたようでした。


クララはエレナに話しかけて、「エレナ、何か言いたいことがあるの?」と尋ねました。


するとエレナは、ハンスとマーガレットに質問を投げかけました。


「寄宿舎学校に行ったときは、御屋形様が存命だったのですか?」という質問をして、ハンスが「その通り」と答えた後、「寄宿舎学校でのフレデリカの評判は、聞いていたのですか?」と続けました。


ハンスは「まったく聞いていない」と答えました。


エレナは次に、「フレデリカが戻られたときは、卒業したあとでしたか?」と質問しました。


ハンスは、「その途中で御屋形様が亡くなられたため、葬儀に出席するために戻られた。立派なレディになっていたという感想はその時のものだ。」と答えました。


エレナは更に、「奥方様はどうなさったのですか?」と質問しました。


ハンスは、「寄宿舎学校に入る前に亡くなられた。その時はさすがに悲しみを表していたが、しばらくしてから日を追うごとに明るさを取り戻していた」と答えました。


最後にエレナは、「寄宿舎学校は続けたのですか?」と質問しました。


ハンスは、「エレオノーラの計らいで卒業まで続けた。」と答えました。



周りのアンナやクララは、エレナがなにを考えているのか不思議そうに見つめながら、黙って彼女の話を聞いていた。

エレナは話が終わると、深く考え込んだ表情を浮かべながら、しばらく黙り込んでいた。

その間、周囲は彼女の回答を待ちわびていたが、彼女は何も言わず、ただただじっと考え込んでいた。



エレナは続けて「こういう事だったのではないでしょうか?」と発言する。


「フレデリカは寄宿舎学校に入る前に御屋形様と何かを約束したのではないでしょうか。」


「なぜかというと、それほどまでの女傑が寄宿舎学校で評判を轟かせていない事がきになったのです。」


「お二人がレディになったなと気が付いた時とは、寄宿舎学校を卒業する前であったのですから、御屋形様が亡くなった事がきっかけではないのではないでしょうか。」


戸惑うハンスとマーガレットをよそにエレナはさらに続ける。


「そしてその約束事とは、家業を継ぐことではないでしょうか。」


「フレデリカは貴族相手に取引をしていく家業を継ぐため、寄宿舎学校でレディになる事を最初から目指していたのではないでしょうか。それこそ全力全開で。」


「寄宿舎学校での評判を聞かないのは、フレデリカの目標が評判の獲得ではなく貴族の取引相手に相応しいレディになる事だからです。」


「卒業まで学校を続けたのも、レディとしてのお墨付きを貰うためなのだと思います。」


「そうなりたかったのは、大好きな御屋形様との約束を果たすためだからではないでしょうか。」


エレナは静かに笑って、自分の考えを説明した。


「その約束が彼女を変えたのではなく、彼女が本来持っていた力を引き出したのだと思います。」


「フレデリカは、かつての太陽ではなく、今も燦然と輝く『太陽そのまま』なんだと思います。」


アンナとクララはエレナの発言に興味津々で、口々に「なるほど!」と感心して拍手していた。


ハンスとマーガレットはその考察に目を見開き、感動に震えていた。



ハンス:エレナ、ありがとう。フレデリカのことをこんなによく理解しているなんて、驚きだ。


マーガレット:本当に、感謝しています。フレデリカのことを話してくれて、とても興味深かったです。


エレナ:いいえ、私はただ推測しているだけです。でも、フレデリカがどんな人物なのか、少しは深掘りできたかしら。


ハンス:確かに、フレデリカのことがもっとわかった気がする。それに、彼女が寄宿舎学校でどのようにしてレディになったのかも、よくわかった。


マーガレット:そうね。フレデリカは本当に素晴らしい人物で、彼女の物事に取り組む姿勢には感銘を受けました。


エレナ:はい、フレデリカは本当に立派な女性です。私たちの自慢のご主人様です。私も彼女のように、全力で自分の目標に向かって努力してみたいと思います。


ハンス:そうだね。自分も、フレデリカのように自分の夢に向かって頑張りたいと思う。本当に、ありがとう。君たちと話せてよかった。



こうしてティータイムは締めくくった。


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