御屋形様を照り付けるフリッカ
「ハンスさん、そんなにフレデリカさんが輝いていたとは、ほかの人たちとは違いますね」とアンナが驚いたように言った。
「ええ、屋敷の中でも特別な存在だったからね」とハンスは微笑んで答えた。
「でも、それって大げさじゃないですか?」とエレナが疑問を呈する。
「いや、そんな事はない」とハンスは慌てたように言い、続けた。
「自分が言うのも何だが、御屋形様とフレデリカとの会話から、彼女がどれだけ特別な存在だったか、そしてどれだけ輝いていたかを知っている。」
「本当に?何か特別なことがあったの?」とマーガレットが興味津々で尋ねる。
「それは、今の自分たちが知っていることとは全く違う話なので、ここでは詳しく話せないが……」とハンスは少し神秘的に言い残して、口を閉ざそうとした。
「いや、そうだ、今ここでマーガレットが知っている昔のフレデリカの話、そして自分が知っていることを認識合わせをしよう。」と、ハンスが提案する。
「はい、よろしくお願いします。」と、マーガレットが返事をする。
ハンスは「御屋形様がお持ち帰りになった品物の中に、フレデリカの絵があったんだ。それがとても可愛らしかった。」と話す。
マーガレットは「そうだったんですね。私は子供の頃にフレデリカと一緒に遊んだり、手紙を書き合ったりしていました。とても元気いっぱいで、いつも私たちを楽しませてくれました」と話す。
ハンスは「御屋形様とフレデリカは、とても仲が良かった。特にフレデリカは御屋形様に対して、深い愛情を抱いていたようだよ。」と話す。
「ええ、そうですね。私はただフレデリカが明るくて元気いっぱいで、いつも私たちを笑わせてくれたことを覚えています。」とマーガレットが答えた。
「自分は御屋形様とフレデリカとの会話を聞いていたのですが、彼女はとても賢く、将来が期待できると御屋形様もおっしゃっていたよ。」とハンスが続けた。
「そうだったのですか。私はただ、彼女が大人になっても、あのままの明るさと元気さを失わないことを願っていました。」とマーガレットが言った。
ハンスは、フレデリカが御屋形様の迎えにいの一番で駆けつけた話について補足した。
徐々に駆けつけてそのまま抱き着くようになっていたが、回数を重ねるたびに力強さを帯びてきて抱き着くというよりは体当たりのようになっていったと語る。
「ええ、あの頃の彼女はほんとうにエネルギッシュでしたね」とマーガレットは笑みを浮かべながら話しました。
「でも、ハンスの言うように、あの子の力強い体当たりはだんだんと増していったんです。最初はただ抱き着くだけだったのに、それが体当たりに変わっていったんですよ。」
「ああ、それを御屋形様から聞いたんだ。最初は彼女が自分に抱き着いているという感覚にとまどっていたと言っていたが、回数を重ねるごとにその強さに慣れていき、最終的には彼女が自分を体当たりで迎えてくれるのを楽しみにしていたそうだ」とハンスが続けました。
「御屋形様は、はじめこそ、フレデリカの元気な姿勢に癒やされていたようだったが、その体当たりは日増しに強くなっていって、御屋形様の笑顔が段々薄れていった。その理由は、御屋形様がフレデリカの体当たりに耐えられなくなってきたからだそうだ。」ハンスが話し終えると、マーガレットは驚きの表情を浮かべた。
「この事は、御屋形様から相談を受けて分かったことなんだよ。」とハンスが続けた。
「そんなことがあったんだ」とマーガレットが驚く。
「そうだ。で、自分が御屋形様に提案したのが、闘牛士の体捌きで体当たりをかわす技術を身に着けることだったんだ。」とハンスは話を続けた。
「特訓をしたの?」とマーガレットが興味津々で聞く。
「そうだ。御屋形様と一緒に特訓して、闘牛士になったつもりで体を動かしたんだ。それで御屋形様もフレデリカの体当たりをかわす技術を身に着けたんだよ」とハンスはにやりと笑った。
ハンスは、その特訓の成果で御屋形様が特訓を終えてついにフレデリカの体当たりをかわすことに成功したと、満足げな表情で語りました。
「でも、翌日になると、フレデリカはすぐにやり方を変えてきた。」と、ハンスは肩を落としながら続けました。
「それまでの体当たりよりも、さらに力強くなっていたんだ。御屋形様も、その威力に驚いていた。」
すると、マーガレットは思い出したように口を開きました。
「そういえば、私もその時を見ていました。フレデリカは本当にすごかったわ。」
*************回想シーン 始まり*************
フレデリカの父である御屋形様。彼は当時フレデリカのことを「フリッカ」と呼んでいました。
「どうしたフリッカ………そんな低い姿勢で」と、御屋形様はフレデリカに声をかけました。
「…………じりじり近づいてくるのはよしなさい」と、御屋形様は続けました。
「フリッカ。『ただいま』だ。……フリッカ?」と、御屋形様はフレデリカに話しかけました。
そして、突然、腹に強烈なタックルを食らった御屋形様は、悶絶しながら絶叫しました。「フリッカぁぁぁぁあ???!!」
*************回想シーン 終わり*************
マーガレットは思わず笑い転げそうになっていました。「当時私は心配してたのよ。あの時の御屋形様の悶絶した顔が思い出されるわ。でも、フリッカって愛称が可愛いかったわね」と話し、また笑いをこらえるようにしていました。
ハンスは、御屋形様とのレスリング特訓についても語ります。
「フレデリカの体当たりがどれだけ凄まじいかを知っているから、御屋形様は自分自身を鍛え上げる必要があると感じたんだ。そこで、自分たちはレスリングの特訓を始めたんだ。最初は御屋形様も苦戦していたが、徐々に技術を磨き、フレデリカの攻撃をかわすことができるようになっていた。」
「そんなことがあったんですか!」とマーガレットは驚きを隠せませんでした。
「フレデリカのタックルがそんなに強烈だったんですね。でも、大の大人の御屋形様が自分の娘の為にレスリングの特訓をする姿を想像すると、笑いが止まらなくなってしまいます。」と彼女は笑いながら話します。
「ああ、そうだ。御屋形様は真剣に自分を鍛え上げようとしていたので、自分も全力でサポートしたよ。」とハンスは付け加えます。
「フレデリカの攻撃的なタックルに対処するのは、本当に大変だった。大人でもなかなか裁けないほどだからね」
「ハハハハ!!、その姿を想像すると、笑いが止まりません。……ムフフフフ」とマーガレットは再び笑いながら言いました。
ハンス: そうそう、だけどフレデリカはその訓練した大人をも上回る成長を遂げていった。
そしてついに御屋形様がフレデリカの強烈タックルに倒され、白旗を挙げたんだ。
マーガレット: (笑いながら)ああ、御屋形様が白旗を挙げたんですか?それは見てみたかったなあ。
ハンス: そうだよ。その時フレデリカは「これが私の全力全開!!」と勝ち誇っていたそうだよ。
マーガレット: (笑いながら)フレデリカって、すんごいのねぇ。あのタックル、本当に大変そうですもんね。
ハンス: ああ、そうさ。そして「求めてない」と御屋形様は自分にだけ語っていたんだよ。
マーガレット: (大笑いしながら)えっ、御屋形様がそんなことを言ったんですか?それはちょっと意外ですね。
ハンス: ちょっとくやしかったんだろうなぁ。
ハンスは、ある日フレデリカにその時の事を尋ねた。御屋形様に体当たりしたり、強烈なタックルをする理由を知りたかったのだと語った。
「なぜそんなことをするのか?」とハンスが聞くと、フレデリカは自分の考えを語り始めた。
「私は、自分の底から湧き出る元気を周りに分け与えたいと思っているの。でも、母様もエレオノーラ(エレノラ)も体が強くないから、私が全力でぶつかっても中々分かってもらえない。でも父様なら、私の元気を受け止めてくれると思っていたんだけど、この間、私が抱き着こうとした時に避けられてしまったの。だから、父様を逃がさないし、許さない☆。」とフレデリカは自信満々の笑顔で答えた。
「ぷフフフ!………理由が!………理由!………フフフ!」とマーガレットは声をあげた。あまりの衝撃で笑いが止まらなくなっていた。
ハンスが話を終えた後、マーガレットはひとしきり大笑いしました。その後、顔を上げて言いました。
「確かにお日様という表現は控えめだったわね。あの子はまさに『太陽そのもの』だわ」
マーガレットは満面の笑みでそう言い、白旗を挙げました。ハンスは彼女の笑い声に続いて、ほっと一息ついたようでした。