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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
21章 エミリア襲来
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ああ、我が逃走

「ああ、ヨハン、マイク、久しぶりだな。元気そうだね。」


メルロも微笑み、一緒に仮面居酒屋へ歩きながら応えた。


ヨハンとマイクはメルロに何かあったのか尋ねた。


「あの後、どこに行ってたんだ?、何かあったのか?」


メルロは頭をかいて答えた。


「ああ、お屋敷の皆にも聞かれたけど、あの後の記憶が無いんだ。気が付いたら見知らぬ部屋にいて、体がだるかったんだ。目の前にあった扉を開いたらお屋敷の前にいたんだ。振り向いた時には扉も部屋もなにもなかったんだ。」


状況を説明しつつ、メルロはヨハンとマイクに自分の体験を話した。


「何が起きたのか、理解できないんだ。まるで時間が飛んでしまったかのように感じる。」


ヨハンとマイクは驚きを隠せなかった。そして、メルロの無事を喜びながらも心配の表情を浮かべた。


「それは不気味だな……。でも、メルロが無事で良かった。」


「本当に、心配したよ。でも、なんだか不思議な話だね。」


メルロは微笑みながら感謝の気持ちを伝えた。


「ありがとう、心配かけて悪かったね。でも、無事でいることが何よりも嬉しい。」


ヨハンとマイクも笑顔で返事した。


仮面居酒屋に到着まであと少しという時、ヨハンとマイクは前にでて、メルロは少し考え事をしていたのか二人の後ろにいて、下を向いていた。


そして、ヨハンとマイクはあと数分という距離で、大きく開かれた店の入り口に目を向けて店の中を覗くと二人の顔に緊張が走った。


そして、小声でメルロに話しかけた。


「……メルロ、止まれ。」


「……顔をあげるな。」


「ん?。どうしたの?。」


メルロは言われた通りにその場で立ち止まり、顔を上げないようにして二人に話しかけた。


「……ヤツだ。ヤツが店の中にいる。」


「あの給仕が、店の中にいる!。」


「!!?」


二人の説明にメルロの体にも緊張が走った。


「……分かった。ここは気付かれる前に逃げた方がいいな。」


メルロは二人に返事を返した。


「あッ……まずいまずいまずい!。」


「気付かれたようだ!、こっちに来る!。」


「!?……くッ」


早速の緊急事態に陥ったメルロは『ナニカえもん』に教えてもらったフェイントを試す事にした。


その時、『ナニカえもん』の言葉を思い出していた。


「……出会ってしまったら全力で逃げなさい。」


「……諦めて逃げ切れるかどうかに掛けなさい。」


逃げ切れるだろうか。


いや、逃げ切れる筈だ。


メルロはあれから『ナニカえもん』に教えてもらった障害物ありきのトレイルランニングを毎日欠かさず行っていた。


其の為、フェイントなしでも駆けっこだったらこの街の誰にも負けない自信があった。


今なら蛇食女スネークイーターさえも簡単に振り切れるかも。その位の自信を覗かせていた。


そして教えてもらったフェイントの順番を確かめた。


1.予め上着のポケットに大き目の石を2つ忍ばせておく。(既に準備万端)


2.それぞれのポケットに手を突っ込み、石を取り出せるようにする。


3.足元を気にする様子を見せながら、片膝を立ててしゃがみ込む。


4.焦らず、しかし、素早くポケットから石を取り出し、両方のかかとの下に置く。


5.両手を前に置いて前傾姿勢を取る。


6.その姿勢でお尻を上げる事でクラウチングスタートの姿勢が完成する。


「ん……?……なんだ……?」


「ヤツは一体何をしてるんだ?」


ヨハンとマイクは給仕の様子をみて狼狽えていた。


メルロは二人の言葉が気になり、給仕がいるであろう、店の入り口に視線を向けた。


(なにぃ!?、ヤツも同じ姿勢を取っている!?、ヤツもクラウチングスタートを知っているだとぉ!?。)

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