帰ってきた被害者
エレナは眠そうな顔であくびをしながら、目を覚まして顔を洗っていた。
エレナは屋敷の外にでてみると、霧が深く立ち込めていることに気付いた。
朝の日差しが霧によって遮られ、外の景色はぼんやりとしか見えない。
「今日も霧が濃いな」とエレナはつぶやいた。
霧の中では、音もかすかに聞こえる。
エレナは静寂な雰囲気に包まれながらも、この霧の中には何か不思議な魅力があると感じていた。
エレナは外に出て背筋を伸ばしていた。
「おはよう、エレナ。」と、アンナがエレナが優しく声をかけた。
「アンナ。おはよう。」エレナはアンナに挨拶を返した。
アンナはエレナに昨日の夕食時の様子について尋ねてきた。
「…昨日さ、なんか変な雰囲気じゃなかった?。特にフレデリカやハンスさんとかさ。」
エレナは少し考えた後、アンナの質問に答えた。
「確かに、昨日の夕食時は少し変な雰囲気が漂っていたかもしれない。フレデリカやハンスさんが何かを心配しているように見えたし、話が途切れ途切れだったよね。でも具体的なことはわからないんだ。何かあったのかな?」
アンナは少し困った様子で答えた。
「昨日、メルロがいなかったじゃない?。実は、昨日の日中に誘拐されたかもしれないという話があってさ。フレデリカがそう言ってたのを聞いたんだけど、詳しいことはよくわからないのよ。でも何人かが同じように心配そうな顔をしてたから、信憑性が高いのかなと思って。」
エレナは驚きの表情を浮かべた。
「!!道理で昨日姿をみせなかったのね。本当に誘拐されたの?もしそうならそれは大変だわ。どうしよう、…この事はクララに黙っておくべきかな………。」
エレナは深く考え込んだ。
メルロが誘拐された可能性があるという情報は重要なものであり、クララにも知らせるべきかどうか迷っていた。
しかし、エレナはクララとの信頼関係を大切にしていた。
彼女が同じような立場に置かれた場合、情報を隠されることに不安を感じるだろうと考えた。
「アンナ、私たちはクララにこのことを伝えるべきだと思うわ。クララは私達の一員であり、この事件に関わる情報を共有する権利があるから。もしも彼女が心配するのを防ぎたいなら、私たちが一緒に対処することが大切よ。」
アンナもエレナの意見に同意した。
「そうだね、エレナの言う通りだよ。クララは私たちの信頼できる仲間だから、彼女にもこの事実を話すべきだと思う。一緒に行動すれば、メルロを見つけ出す可能性も高まるかもしれないし、安心して行動できると思うよ。」
エレナとアンナは意見をまとめ、クララにこの事実を伝えることに決めた。
その直後の事だった。
深い霧の中からエレナとアンナの間にヌルっと唐突に人影が現れた。
アンナ・エレナ「「!うわ!?」」
アンナとエレナは驚きの声をあげた。
その人影はよちよち歩きでもしているかのように少しずつ前に進んでいた。
そして二人に気が付いたらしく左右を向いて二人に声をかけてきた。
「……あ?、…エレナさん?……アンナさん?…ここはどこ?……」
その人影は先ほどの話題の中心に位置していたメルロだった。
「…え、ど、どこって…」
「ゴクリっ…お、お屋敷だけど…?。」
「………あ?…ああ、そう………」
やつれた顔をしたメルロは気のない返事をしたままよちよちと前に進んでいった。
「……き、昨日帰ってこなかったけど…ど、どこ行ってたの?…。」
アンナはその後ろ姿に尋ねた。
「………え?…昨日?……今日…じゃなくて?…」
メルロは振り返らずに質問に対し、質問で答えた。
「…昨日、街に出てたよね。…その後、アンタ帰ってこなかったのよ?…昨日の事、憶えてる?」
エレナもメルロの後ろ姿に声をかけた。
「…えっと直近だと…ジェームズさんところへ行って……その後……思い出せない……なんか…体がだるい……なんでだろう?……」
メルロはそう呟いて屋敷の中に入っていった。
アンナ・エレナ「「………………………」」
アンナとエレナはどうしてよいかわからずその場に立ち尽くした。