仮面居酒屋にて
メルロは仮面居酒屋のカウンターの端で一人飲んでいた。
ヨハンとマイクは彼を確認した後、声をかけようとしたがまわりを寄せ付けないような雰囲気を醸し出していた為、離れたテーブルで様子を見ていた。
しばらくして、ジョン、少し遅れてクラウスもテーブルに同席した。
「なあ、メルロのやつ、どうしたんだ?」ジョンは先に来ていたヨハンとマイクに話しかける。
ヨハンは眉をひそめながら答えた。
「よくわからないんだ。最近、ちょっと元気がないみたいでさ。何か悩みがあるのかもしれないな。」
クラウスが興味津々の表情で口を挟みました。
「そうだな、最近メルロの態度が変わってきている気がする。何かあったのかな?」
マイクはメルロを見つめながら言った。
「……メイド達となんかあったのかな?」
ヨハンはマイクに尋ねた。
「?…なんで?そう思った?」
マイクは続ける。
「…ほら、アイツの呟いている事を聞いてみ?」
ヨハン、ジョン、クラウスはマイクのいう通りにメルロの呟きに耳を澄ました。
「………女共め……」メルロはそう呟いていた。
四人は顔を合わせて話をした。
「メルロが『女共』って呟いているなんて、どういうことだろう?」ジョンが不思議そうに言った。
クラウスは考え込みながら言った。
「う~ん、エレナ達と何かトラブルがあったのかもしれない。」
ヨハンは頷きながら付け加えた。
「最近、メルロが避けるような態度を取っていたとエレナから聞いたことがあるんだ。何か問題があるのかもしれない。」
ジョンは驚いていった。
「え、エレナと上手くいっていないのか?。この間幸せそうだったって話だったよな?」
マイクも頷いていった。
「そうだったけど、あれから何か有ったのかもな。『女共』って事はクララとの事も何か有ったのかも。」
すると、メルロが急に立ち上がった。
「……この恨み…晴らさずにはおけない………」
ヨハンは目を見開いて言った。
「う、恨み?」
マイクも続ける。
「……エレナ達に何か恨みがあるのか?……」
ジョンは立ち上がったメルロを見つめて言った。
「……どうするんだ。……恨みを晴らしに行こうというのか?」
クラウスは心配そうに見つめた。
「…………………………………………………」
暫くしてメルロは座り、グラスに酒をついでまた飲み始めて呟いた。
「………女共め……」
「行かねえのかよ!」ジョンは肩透かしを食らった気持ちだった。
ジョンの言葉に刺激されたクラウスが言った。
「でも、メルロがメイド達に何かしようとしているなら、思いとどまるように言わないといけないかもしれないよ。」
ヨハンは考え込んだ後、静かに言った。
「よし、メルロに話を聞いてみよう。アイツが何か悩みを抱えているなら、それを解決する手助けができるかもしれない。」
四人は意を決し、メルロのもとへ歩み寄った。
メルロは彼らが近づいてくることに気づき、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに冷静な表情に戻った。
ジョンが軽い笑顔で声をかけた。
「メルロ、どうしたんだ?最近、ちょっと元気がないって話を聞いたんだけど、何か悩みがあるのか?話を聞かせてくれよ。」
「この間、エレナとの約束があったって言っていたな?。エレナとはその後、どうなんだ?」
マイクはエレナとのその後の関係が気になったので聞いてみた。
「約束?……ああ、その約束は守っているよ。アンナとクララさんにはトウサン(猫)の妊娠は伝えてない。」
四人は顔を一瞬互いに見合わせて再びメルロに向けた。
「トウサン(猫)が妊娠??トウサン(猫)ってメルロの猫だったよな?、メスだったのか?」
ヨハンは驚いて聞いた。
「そうだよ。エレナに聞いて僕も最近分かったんだけど、メスだったらしいんだ。妊娠してるって話を聞いて、どうすればいいのか、エレナにいろいろアドバイスを貰ってたんだ。」
メルロはヨハンの問いに答えた。
「え?、じゃあ、エレナとの約束って?」
マイクは確認の為、もう一度聞いた。
「アンナとクララさんには後でびっくりさせる為に黙っておこうってエレナと約束してたんだ。でも、あの三人と一緒にいるとついしゃべっちゃいそうだったから、最近は一人で飲みに来てたんだ。」
マイクの問いにメルロは答えた。
「ん?じゃあ、エレナと最近いい感じだったって言うのは?」
クラウスが問いかけた。
「?、いい感じにアドバイスを貰っていたよ?お陰でトウサン(猫)との関係を改める事ができた。……その事には感謝してる。」
メルロは最後に渋い顔をしていた。
それを見てヨハンが言った。
「…………エレナ達となんかあったのか?…なにがあったんだ?…」
「………まだ、分からないから……言いたくない。」
メルロは静かに答えた。
ヨハンはメルロの傍に座って話す。
「……分からないか……でも、確信めいたものがあるんだな?……」
「……くっそ!…女共め……」
メルロは吐き捨てるように言った。
四人はメルロの悩みが深刻であることを感じた。
ヨハンはメルロの肩を軽く叩きながら言った。
「メルロ、君の悩みを自分達で分かち合いたいんだ。君が心の中で抱えている何かを解決する手助けができるかもしれないし、少なくとも話を聞くことはできるよ。」
メルロは一瞬たじろいだ後、深いため息をつきました。
「分かってもらえるわけがない…」
ジョンは真剣な表情で言った。
「抱えている悩みが具体的に何なのか、自分たちに話してみてくれないか?少なくとも心配しているんだ。」
「…………言えないよ。……言えるわけがない。」そう言ってメルロは頑なに話そうとはしなかった。
クラウスは今いる皆との関係を心配して話す。
「まあ、今じゃなくてもいいよ。……気持ちが落ち着いて…もし、話してもいいと思ったら自分たちにも聞かせてくれないか?それに、ちょっと飲みすぎじゃないのか?もう帰って休んだ方がいいよ?」
メルロは頷いていた。
「…そうだね。…少し飲みすぎたよ。歩ける内に帰るよ。……ありがとう皆。…おやすみ」
そう言ってメルロは1つのボトルを持って帰った。