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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
18章 厄災の血筋(カラミティブラッド)
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つまみ食いが好き

フレデリカはお茶を入れ直し、四人がそれぞれ一口飲んだ後、安心して話し合いを始めることにした。


彼女は先ほどの件について、ソフィアとリリアンに尋ねた。


「さて、先程の件についてお二人の意見を聞かせてください。『カラミティブラッド』という言葉、あなたたちは何か知っていますか?、知らないふりはなしね?、私の従業員が巻き込まれそうなんだから。」


ソフィアは考え込んだ表情で答える。


「はい、その言葉は、私達の一族にむけられものです。『厄災の血筋(カラミティブラッド)』これは決して喜ばれるものではありません。ですが、私達一族はそれを甘んじて受け入れております。」


フレデリカは深く考え込んだ後、続けて質問を投げかけました。


「では、その『厄災の血筋(カラミティブラッド)』とは具体的にどのような意味なのか、教えてもらえますか?私はこの言葉を聞いたことはありますが、詳しい情報は持っていません。」


ソフィアは覚悟を決めた様子で話を始めた。


「まず、その言葉通りの意味で、災いを呼ぶ一族と意味です。昔からそう呼ばれていた訳ではありません。ごく最近になってからそう呼ばれるようになりました。」


「きっかけは私の姉です。彼女の行動が私達一族や私たちに関わる人達に災いを呼びました。」


ベアトリスはソフィアに兄弟について確認した。


「そう言えばご兄弟、何人かいらっしゃってましたね。お兄さんは神聖騎士団ホーリーナイトの団長さんで、お姉さんは琴の引手をなされてましたね。きれいな方でしたよね。確か、アリアナさんでしたね。彼女が?」


「いえ、彼女は上の姉です。」ソフィアは否定した。


「あら?、ご兄弟はあなたを含めて三人ではありませんでしたか?」フレデリカも自分の記憶とは違っていたので、確認の為尋ねた。


「私にはもう一人、下の姉が居ます。皆さんのご記憶にないのは、父に勘当されているからなのです。」


フレデリカとベアトリスは、ソフィアの説明に驚いた。


ソフィアの兄弟に姉が二人いるという話は初めて聞いたからだった。


そして彼女の話を聞き入った。


「下の姉はエミリアと言います。彼女は昔からつまみ食いが好きでした。隙があれば兄のごはんや、姉のお菓子をよくつまみ食いしてました。」


「まだ、食べ物だけならよかったのですが、その内、人の持ち物にまで手を伸ばすようになりました。私も大好きだったウサギのぬいぐるみを彼女に奪われてしまった事があります。」


ベアトリスは口をはさんだ。


「貴方のお姉さんが二人いたという事は分りました。そして、その、エミリアさんでしたね。つまみ食いが好きでエスカレートして人の物にまで手を出すようになった。ここまでは分かります。」


「でも、それだけだと災いを呼ぶとまで大げさじゃな話には聞こえないように思えるんですけどね?、ねえ?」


ベアトリスはそう言って、フレデリカに同意を求めた。


フレデリカも頷いた。


その疑問にリリアンが答えた。


「判りませんか?、『人のモノに手を出すようになった』という事、それはつまり、『人のモノを盗むようになった』という事です。」


フレデリカとベアトリスはリリアンの言葉に驚きを隠せなかった。


彼女達はリリアンの言葉でエミリアの行動が単なるつまみ食いではなく、盗み行為にまで発展していたことを改めて認識した。


フレデリカもベアトリスの問いかけとリリアンの指摘に納得し、深い考え込みを見せた。


「つまり、エミリアの行動は『災い』という言葉に相応しいものなのですね」とフレデリカが言った。


「それならば、彼女の行動が他の人々にも及ぶ可能性があるということです。」


その言葉に対し、ベアトリスは疑問を投げかけた。


「待って、フレデリカのその考えだと、これからの話になるじゃない?。これは既に確定した話だから、『他の人々にも及ぶ可能性』ではなく『他の人々にも及んだ』と見るべきじゃない?、つまり、何度か盗みを働いているという事なのよ。そうじゃなければ『厄災の血筋(カラミティブラッド)』なんて大げさな呼ばれ方しないわ。」


「ベアトリスのおっしゃる通りです。彼女は何度も盗みを働いていました。その事自体、私達の寄宿舎学校時代に既に噂になっていたそうですが、私自身は知らなかったのです。」


「私に取っては明るい姉でした。街が好きでいろいろな街に出かけては綺麗な夜景を見るのが好きでした。夜景を見る時の彼女の口癖は『煌めく青い情熱(パンションブルー)』でした。」


フレデリカはソフィアの様子を見て言った。


「…お姉さんの事、本当に好きだったんですね?。」


ソフィアは頷いて言った。


「ええ…、歳が近くて大好きな姉でした。…ですが、一緒にいろいろな街を巡っていた時から彼女は盗みを働いていたようです。それを知ったのは大分後でした。」


「その頃でも、人の氷菓子や、アクセサリー、大好きなお母さまの隣の席とかワタクシもいろいろ盗られたものはありましたが、子供の悪戯程度で、その頃のワタクシはそれだけだと思っていたのですね。」


「…う~ん。でも、よくわからないわねぇ。」とベアトリスがフレデリカに囁いた。


「え?、いや、彼女、エミリアさんはつまみ食いが好きで、それがエスカレートして盗みに発展したって…それのどこが分からないって言うの?」フレデリカはベアトリスの呟きが気になって小声で話しかけた。


「よく考えてみて、だって、貴方の処のメルロさんが危ないって話に繋がらないじゃない。」とベアトリスは囁き返す。


「ハッ!、確かに」


フレデリカはベアトリスの言葉に戸惑いながらも、考えを整理しようとした。

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