嵐 前編
「ふむ、リリアン?連れてきなさい。」と穏やかに言うマクシム。
「…はい。」と観念した顔でリリアンは返事をして部屋の外へ出て行った。
「お?、ついにお目にかかれるのね。」少し浮かれるベアトリス。
「え?、ウチの従業員?」フレデリカは驚愕した。
ソフィアは来たばかりだというのに?しかし、そういう事に時間は必要ないとも言う。
フレデリカの頭の中にすぐに浮かび上がったのはハンスだった。
ソフィア(「言い方は気を付けて」と有れほど言ったのに、リリアン!?)
ソフィアはこの一連の騒動がリリアンの報告にある事、そして、マクシムが考えている自分の「いいひと」が誰なのか理解した。
「お連れしました。」とリリアンが戻ってきた。
そして顔を出したのはメルロだった。
「おお、君か!?」とマクシムは声をかける。
「!?メ、メルロ!?」フレデリカには予想外だった。
「フーン。メルロって言うんだ。」初めて顔をみるベアトリスは興味津々だった。
「…………ふむ。君は平民なのかな?」マクシムはメルロの恰好から身分を探った。
「?…は、初めましてメルロと言います。」とマクシムに挨拶する。
「此方の方は?」とメルロはリリアンやソフィア、フレデリカに目を向けて説明を求める。
「…………わ、ワタクシの父です。」とソフィアは観念してメルロに紹介した。
「マクシムだ。よろしく。」とマクシムはメルロに握手を求める。
「よ、よろしくお願いします。」メルロは気圧されていた。握手には力がこもっており、顔は笑っていたが目が笑っていなかったからだ。
(コイツか!我が娘を堕落の道へ誘いこんだのは!…落ち着け、まずはするべき事するんだ。煮るなり焼くなりは後でいい。)
マクシムの頭の中では、娘ソフィアと従者リリアンが裸でピースをし、その間でだらしない笑顔でしたり顔のくず男のイメージがあった。
しかし、その顔はモザイクが掛かっていた。
そのモザイクが今、鮮明になった。
「よし、ソフィア、メルロ君、二人共服を脱げ」と笑いながら話すマクシム。
メルロ「へ?」
ソフィア「え?」
「二人そろったので準備はできた。さあ!、どうした?、時間は待ってはくれないぞ!?」とまるで教壇にいる教師のように淡々と、且つ急がせようとしてくるマクシム
メルロ「一体何をするんですか?」
ソフィア「一体何をさせようというのです?」
「子作りに決まっているだろうに!?今やれ!すぐやれ!ここでやれ!」マクシムの顔には狂気が浮かんでいた。
メルロ「ええ!?す、すみません。まだ勉強中でして…」
ソフィア「!?娘のワタクシにさせることではないでしょう!?」
「メルロ君、座学なんて無駄だ。あ、いや、ある程度まではそれでもいいが、やはり、実践あるのみだ!!さあやれ!バンバン行け!」
「ソフィア何してる?私の娘なら子供の一人や二人はすぐのハズだ!ポンポン行け!!ポンポン!!」
熱弁するマクシムにフレデリカは言った。
「お待ちください!、この家の主として、ここでそう言う行為はさせられません!!自重してください!!」
「……………失礼いたしました。フレデリカ様………では、ベットを一つ貸して下さいませんか?」とマクシムは落ち着いた様子で話すが、めちゃくちゃだった。
「貸しません!」フレデリカは断言した。
「ふむ、仕方あるまい、ソフィア、街に行くぞ!、フレデリカ様、メルロ君をお借りしますぞ?。」全く折れようとしないマクシム。笑顔の口元から見える歯は光っていた。
「か・し・ま・せ・ん!!!」フレデリカは叫んだ。
「では、どうしろと言うのです!?」もうらちが明かないといった困惑顔を見せるマクシム。
「どうも、しないでクダサイ!!?」息をゼーゼーしながら青筋を立てて叫ぶフレデリカ
「はい、二人共、落ち着いてください!」ここでベアトリスが割って入った。
「私は落ち着いているぞぉ」と言ってのけるマクシム。
「子作りを強要する人のどこが落ち着いているんですか?」とフレデリカは突っ込む。
「だが、落ち着いている」と言ってのけるマクシム。
「今ですよね!さっきまでは狂気の沙汰でしょ!?」と声をふり絞って叫ぶフレデリカ
「フレデリカ様、落ち着いて」と気の毒そうな顔でいうマクシム。
「!!!あーーーー腹立つ!」とここでフレデリカが力尽きる。
「フリッカ?どうどう。どうどうどう。」とベアトリスが落ち着かせる。
そしてベアトリスはマクシムにこう切り出した。
「マクシム様、どうしてそんなに急いでらっしゃんですか?」
「うむ、それはちょっと話すと長くなる。残念だが時間だ。私は次の用事があるのでここを去らねばならん。」とマクシムは帰り支度をする。