エレナの小説
夜の酒場でいつもの三人が食事をしていました。
エレナは書きかけの小説について感想を聞きたいと言い出しました。
エレナはノートからページを取り出し、クララに手渡した。
「ほら、これが私の小説の原稿よ」とエレナが言った。
クララはページを受け取り、興味津々の様子で読み始めた。
「わあ、これは素晴らしいわ!エレナ、あなた本当に才能があるわね!」クララが感嘆した。
「ありがとう、でもまだまだ未完成なんだけど…」エレナが謙遜した。
「いいえ、私はこれが完璧だと思うわ。この物語はとても感動的で、主人公の心情がとてもよく描かれているわ。でも、作者名が…」クララが言いかけたところで、エレナが口を挟んだ。
「そう、それだけは確かよ。私、作者名を考えるのが苦手で、適当につけたのよ」とエレナが笑った。
クララは驚きの表情を浮かべ、言葉を失った。
「どうしたの、クララ?」エレナが尋ねた。
「この作者名、実はすでに有名になっている名前なのよ。もしかしてあなた、あの作家さん?」クララが興奮した。
「えっ、本当に!?私、そんなこと知らなかったわ!」エレナが驚いた。
クララは大興奮し、周りの客たちにも自慢し始めた。
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メルロが酒場に入ると、エレナとクララの周りに人だかりができていた。メルロは近づいてみると、エレナが自分の小説をクララに見せていることに気づいた。
「おい、何が起こっているんだ?」とメルロが尋ねると、クララは興奮気味に答えた。「エレナが書いた小説を見てごらん! これはもう本格的なものになる予感がするわ!」
事情を少しだけ聞く。
「エレナが小説を書いていたって?僕は知らなかったよ。それに、俺とピーターの仲がどうしてそこに関係するんだ?」メルロはクララに尋ねた。
「いや、でもエレナが二人の関係性からインスピレーションを得て、その小説を書いたんだって。すごく良い話だったよ」とクララは熱心に話す。
「そうか、それは興味深いな」とメルロは少し驚いた様子で答えた。「でも、エレナが僕とピーターの関係に興味を持ってるのは、もしかしたらただの勘違いじゃないかな?」
メルロは小説を読み始めると表情が次第に曇っていき、やがて目を瞑って口を手で覆い、苦しそうな様子で厠へと駆け込んでいった。
クララとエレナは驚いた表情でメルロが去った方向を見つめ、その後すぐに話し始めた。
「どうしたのかしら?」
「あの小説の内容が合わなかったのかな?」
「でもあれが好みだったのに...」
周囲の女性達は、クララとエレナが小説の内容に興奮していたことに気づき、会話に加わってきた。
「あの小説、私も読んだわ。私達みんなの好みにぴったりな内容でしょう?」
「そうそう、私も大好きよ。」
メルロはその様子を知らないまま、厠でしばらく座り込んでいた。小説の内容が、不快感を覚えるものであったことに戸惑いながらも、自分の好みとはかけ離れたものであることが、さらに心を乱していた。