家路での約束
フレデリカは馬の手綱を引きながら、屋敷にいる問題児のメルロを思い出した。
しかし、それに加えて勝手に動く剣「ハチ」と勝手に動くペン「アクア」の存在も頭に浮かんだ。
メルロはともかくとして、ハチやアクアは教会に知られてはいけない存在である。
フレデリカはソフィアとリリアンに対して、どのように彼らを紹介するべきか葛藤していた。
彼女は彼らが特殊な存在であり、一般的な常識から外れていることを理解していた。
教会や一般の人々に知られることは避けなければならないため、彼女は慎重なアプローチを選ぶ必要があった。
フレデリカはソフィアとリリアンに対して率直に事情を説明することに決めた。
彼女は真摯に接し、信頼関係を築くことの重要性を感じていた。
彼女はソフィアとリリアンが理解してくれることを期待し、彼らと協力して問題を解決する方法を考えることにした。
ソフィアは道中フレデリカに屋敷の皆には自分達の関係は伏せて、初めてあったかのように振舞うのはでどうかと提案した。
「?どうして?」とフレデリカがソフィアに聞いた。
ソフィアは微笑みながら説明した。
「私が主人の貴方と同格の存在と思われると、御屋敷の皆さまは委縮されてしまうのではないかと考えてます。」
フレデリカはソフィアの提案に対して一瞬躊躇した。
ソフィアの考えは理解できるものであり、彼女の配慮に感謝していた。
ソフィアの家柄が自分とは異なり、没落の危機に直面していないこともあり、彼女が持つ立場や影響力による緊張感があることも理解していた。
フレデリカは心の中で、屋敷の皆が貴族に対する作法を熟知しているわけではなく、最近では主人に対しても歯向かうことに遠慮がないメルロなどもいることを思い出した。
彼女は時と場合によっては失礼な行動をとってしまう可能性があるのではないかと心配した。
このような状況でソフィアを連れて帰ることに少し後悔した。
しかし、フレデリカはソフィアの提案を受け入れることに決めた。
彼女はソフィアの懸念を重視し、御屋敷の皆の心地よい雰囲気を崩さないためにはこの方法が最善だと考えた。
彼女はソフィアに対して感謝の気持ちを抱きながら、彼女と協力して事態をうまく解決することを目指した。
「分りました。貴方と私はベアトリスの商会で初めて会いました。これでいいかしら?」
ソフィアは微笑みながら頷いた。
「はい、それで十分です。私たちは初対面のように振る舞いましょう。」
フレデリカは安堵の表情を見せながら、ソフィアとの協力により円滑な交流ができることを喜こんだ。
その後、今度はフレデリカが提案をした。
「ただし、一日の終わりは私たち三人でお茶会しましょう。二人がどんな仕事を手伝ってくれたのか、そしてこれからどのようなことを手伝ってくれるのか、私としては雇い主として報告を聞きたいです。いいでしょうか?」
ソフィアは頷きながら快く承諾した。
「もちろんです。お茶会での報告は素晴らしいアイデアです。私たちは進捗状況や今後の計画について話し合うことができますし、お互いの役割や貢献についても共有できます。楽しみですね。」
フレデリカはソフィアの協力と理解に感謝しながら、彼女とリリアンとの間で円満な連携を築くことを確信した。
「あと、それから、私の屋敷では最近不思議な事が立て続ていてるの。」とフレデリカは切り出した。
ソフィア「?」
リリアン「不思議な事?なんですか?」
「まあ、こればかりは体験してもらった方がいいわ。でも、他の人には秘密にしてほしいの。この事はベアトリスにも秘密なのよ。」フレデリカはそう言って話を終わらせた。
リリアンは小声でソフィアに話しかけた。
「不思議な事とはなんでしょうね。お姫様。しかも友人であるベアトリスにも秘密にしているとは」
ソフィアはリリアンの問いに微笑みながら答えた。
「私も興味津々です。フレデリカさんが何か特別な出来事を経験しているようですね。彼女がそれを私たちに話すことで信頼を寄せてくれていることに感謝しなければなりません。ただ、ベアトリスには秘密にしているということは、何か重要な理由があるのかもしれませんね」
ソフィアもリリアンと同様に、フレデリカの話に興味を持っていた。
「もしかしたら蛇食女に繋がる情報に触れられるかも知れませんね。」リリアンはソフィアに小声でそう話した。
ソフィアはリリアンの言葉に頷きながら、興味深く考えた。
彼女もフレデリカの話には何か重要な情報が含まれているのかもしれないと感じていました。特に、ベアトリスに秘密にしているということは、彼女が何か重要な理由や危険性を感じている可能性があります。
リリアンの言葉に同意しながら、ソフィアは小声で続けました。
「確かに、蛇食女に関連する情報が含まれているかもしれません。もし私たちがそのような情報に触れることができれば、我々聖翼騎士団にとって大きな意味を持つかもしれません。ただし、フレデリカさんがそれを秘密にしているということは、私たちにも責任があるということです。慎重に行動し、彼女の信頼に応えなければなりません」
ソフィアとリリアンは、興味と好奇心を抱きつつも、彼女が秘密にしている出来事に対して慎重に接することを決めた。