傷心のメルロ
ヨハンとマイクは職場が一緒で、それは街の「粉ひき屋」だった。
粉ひき屋は、穀物や調味料などを粉状に挽く作業を行う場所だった。
ヨハンとマイクは共に職人として働いており、麦や小麦、スパイスなどを丁寧に挽いていた。
ヨハンは力強い体格と精密な手つきを持ち、主に穀物の粉砕を担当していた。
彼は大きな臼と杵を使い、一定のリズムで粉を挽いていく。
一方、マイクは細かいスパイスや調味料の挽き方に長けており、細やかな技術を駆使していた。
彼は小さな石臼を使い、慎重に香辛料を挽いていくのだった。
二人は互いに信頼し合い、黙々と作業を進めていった。
時折、作業の合間に話をしながら笑い合うこともあった。
粉ひき屋は賑やかな雰囲気で、周りからは食べ物のいい香りが漂っていた。
そして仕事が終わった後の彼らの日課は酒場で一杯飲んでから帰る事だった。
酒場に向かうとそこにはメルロが一人飲んだくれていた。
「メルロ、一人で飲んでるのか?、珍しいな、昨日と連続じゃないか。」とヨハンが声をかけた。
メルロはぼんやりと顔を上げて、泣きそうな顔を浮かべました。
「ああ、ヨハ~ン、マイク、お前たちも来たか…。一杯飲んでくれ。…もう聞いてくれよぉ。」
ヨハンとマイクは心配そうに近づき、メルロの隣に座った。
「どうしたんだ、メルロ。何かあったのか?」とヨハンが尋ねた。
メルロは険しい顔をしながら言った。
「カアサン(タコ)の行方が分かった。」
ヨハンとマイクは驚きながらもメルロに近づき、彼の隣に座り直した。
「カアサン(タコ)の行方が分かったって?どう言う事だ?」とヨハンが尋ねました。
メルロは深いため息をつきながら話を始めました。
「今日、アニキとジョセフさんが話していたんだ。酒場に行く前にタコが現れて、彼らはそれを見つけてタコパーティをしたってさ。」
「そう、カアサン(タコ)はハンスさんとジョセフさんに食べられちゃったんだ。僕が逃がしてしまったばかりに…。ああ…カアサン(タコ)」
ヨハンとマイクは驚きの表情を浮かべました。
「そんなことがあったのか。アニキとジョセフさんには言ったのか?あれは自分のタコだったって。」とマイクが尋ねました。
メルロは苦々しい顔を浮かべながら続けた。
「いや、言ってない。元々僕がちゃんと二人に話していればよかったんだ。何も知らないアニキたちが生きのいいタコをみつけたら、食べられちゃっても仕方なかった。そういう事に頭がまらなかった自分が悪いんだ。でも、そうだと理解してもどうしても悔しいんだ。」
ヨハンとマイクはメルロの悔しさを理解しつつも、彼に寄り添いました。
「メルロがそう感じるのは当然だよ。でも、過去を振り返って後悔するだけでは何も解決しない。今度は違う方法を考えよう」とヨハンが励ました。
マイクも同意しながら言った。「そうだよ、メルロ。もう過ぎたことは変えられない。だけど、これからの行動次第で未来は変えられるんだ。」
メルロは彼らの言葉に少しずつ心が軽くなった気がしたもののまだ引きずっていた。
「そうだな、君たちの言う通りだ。過去の過ちを後悔するだけでは何も進まない。次は違うアプローチを試してみるんだ」とメルロは頷きました。
3人は酒場で話しながら、メルロの新たな計画について考えました。
「もしかしたら、タコだけではなく、他の動物でもフレデリカを驚かせることができるかもしれないね」とヨハンが提案しました。
マイクも続けて言いました。「そうだ、メルロ。イカなんてどうだい。あれもタコに似てるぞ。あれだったらフレデリカが嫌いなものの中に含まれるかも。しかも食べても旨いぞ。」
メルロは笑顔を取り戻し、友人たちのアイデアに感謝しながら言った。
「ありがとう、ヨハン、マイク。君たちと一緒に新たな計画を考えることで、過去の出来事にとらわれずに前に進めそうだ。フレデリカを驚かせる素敵なサプライズを用意してみよう。」
3人は再び笑顔で乾杯し、新たな冒険の始まりを楽しんだ。
彼らは困難に立ち向かいながらも、友情と創造力を大切にしながら次なる挑戦に取り組んでいく事を決意した、その矢先の事だった。
その後、しばらくして、メルロ、マイク、ヨハンの3人に怒りを含んだ声がかけられた。
「おい、お前!この間はよくもやってくれたなぁ!」
声がする方を3人が見ると見知らぬ男達が数人連れだってメルロ達を睨んでいた。いや、正確にはメルロだけを睨んでいた。