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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
14章 毒蛇に対する切り札を求めて
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いつもの日常

夏を前にして、メルロはハンスとピーターと一緒にブドウ畑の剪定作業を行っていた。


明るい陽ざしの下で、彼らはブドウの木々の周りに集まり、剪定用のはさみや鋏を手に取って作業を始めた。


メルロは慣れた手つきで木々の茂みを整えていく。


メルロは真剣な表情で枝を見ながら、「アニキ、この枝は剪定していいのかな?」と尋ねた。


ハンスは少し考えた後、熟練した目で枝を見つめながら答えた。


「この枝は成長が悪くなっているから、剪定してもいいぞ。新しい枝が育ってくるだろうから、そこにブドウの木の力を集中させるんだ。」


ピーターも一緒に作業に加わりながら、「ブドウの木を剪定すると、実がより良くなるって聞いたことあるけど、本当なんですか?」と尋ねた。


ハンスは頷きながら説明した。


「そうだよ。剪定によって余分な枝や葉を取り除くことで、木が成長しようとする力が実に集中されるんだ。その結果、実がより甘く、美味しくなるんだよ。」


三人は黙々と作業を続けながら、ブドウ畑に夏の訪れを感じていた。


太陽の光が木々を照らし、風に揺れる葉が心地よい音を奏でる。


ハンスは剪定作業を通じて、自然との触れ合いを感じながら、ブドウ畑を育てる喜びを味わっていた。


彼にとって、この畑はただの仕事場ではなく、彼自身の情熱や努力が詰まった場所だった。


夏の訪れとともに、ブドウ畑の成長が楽しみになる。


彼らは一つの目標に向かって共に努力し、美味しいブドウを収穫する日を夢見ながら、作業を続けた。



畑作業が終わると同時にハチがぴょんぴょん跳ねてやってきた。


この意思を持って勝手に動く剣『ハチ』はメルロに握られメルロと共に剣舞を舞うのが日課だった。


ただし、握った主人の都合はまったくお構いなしに動きを要求してくる存在だった。


今日も『ハチ』は激しい剣舞を要求し、メルロは絶叫しながら対応していた。


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン


「ああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああああ!」


いつもはされるがままだったメルロは少し様子が違っていた。


メルロは剣を振り回し、身の回りの空間を駆け巡るハチに合わせて身体を動かしていく。


剣舞の一瞬、メルロは剣と一体化し、力強く美しい動きを披露していた。


ハチは時には高速でメルロの周りを旋回し、時には静止し、予測不可能な動きをするため、メルロは常に集中力を保ちながら対応していかなければならなかった。


彼の絶叫は次第に緊張と興奮が混ざり合い、その瞬間の剣舞への情熱が表れていった。


周囲の人々はメルロとハチの剣舞に驚きながらも、その迫力と美しさに見入っていった。


メルロとハチの息の合った動きは、まるで一つの生命体が生まれたかのように見えた。


剣舞の終わりに、メルロは息を切らしながら悪態をついた。


「くそっ。ハアハア、またこんなに激しい剣舞を要求するんだな。ハアハア、もうやめてくれよ、ハチ」とメルロは息を切らしながら不満を漏らした。


ハチはメルロの手から離れ、空中で舞いながら近くで勝手に立っている鞘に収まった。


彼は満足そうな様子で、まるで自分の芸術作品を完成させたかのように見えた。


周囲の人々はメルロとハチの剣舞に拍手し、称賛の言葉を送った。


ジョセフ「すごい!今日の剣舞はまるで生命を持っているみたいだった!」


「メルロさんとハチの息の合った動きは本当に美しかったです!」とクララは声をかける。


メルロは少し照れながらも、皆の言葉に感謝の気持ちを込めて頭を下げた。

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