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ある記憶喪失者の日常  作者: ねぶた
13章 記憶を探す
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大立ち回り

「あ、メルロさん帰ったの?」とヨハンの伴侶は自分の旦那に問いかけた。


「ああ、ついさっきな。お前によろしくっていってた。お前よくメルロの事知ってたな?」ヨハンは自分の妻がメルロを連れて帰ってきた時に、彼女がはっきりとメルロの事を認識していた事を思い出した。


「だってあの人有名なパン泥棒さんでしょ?そりゃ知ってるわよ。」とお前と呼ばれた彼女はにこやかな顔でヨハンに話す。


「でも、なんでお前、メルロと一緒に帰ってくる事になったんだ?」と昨日聞けなかった事を聞いた。


「それが…、昨日婦人会があったでしょ?その帰りに皆で酔っ払いに絡まれてね、その時にメルロさんに助けられちゃって、でもそのまま酔いつぶれたのよね。助けてもらった事もそうだけど、あなたの知り合いだったから連れて帰ってきたの。」と彼女は経緯をヨハンにはなした。


「でも、フフフ…、今思い出してもなんか可笑しかったのよね?」と笑いながらヨハンに話しかける。


「なんだよ。なんか楽しい事でもあった?」とヨハンはその可笑しい話に少し期待して返事を返す。


「さっき、メルロさんに助けられたっていったけど、最初はまったくの偶然だったようなのよね。突然私達と酔っ払いの間に入ってきたかと思ったら、すぐさま道端に寄りかかってそのまま寝ちゃってたのよね。その時点でかなり酔ってたようなの。」


「私達、そのまま酔っ払いと口喧嘩してたら、メルロさんが急に立ち上がってキョロキョロ辺りを見回すの。そしたら他の酔っ払い達がメルロさんに言いがかりとつけてたのよ。」


「『その人関係ないでしょ?やめさないよ』って私が言った後、メルロさんの胸倉掴んでた酔っ払いが、あっという間に引きずり倒されたのよ。」


「それをみた他の酔っ払いも飛び掛かっていくんだけど、皆メルロさんが触ったとたんに飛んでっちゃうの。メルロさん手を広げて首をかしげて「なにが起こったの?」って顔を周り見せつけたの。その後、酔っ払いの一人がメルロさんに後ろを取られて、まるで人形みたいにメルロさんに操られて他の酔っ払いなぎ倒してたわ。」


「それでも操られていた酔っ払いは、抵抗の為にメルロさんの足を踏もうとするんだけどね、メルロさんは寸前で躱して踏みかえして、向こうもやり返そうとして、また、躱されて踏まれるの。その繰り返しがまるで二人でステップを踏みながらダンスをしているように見えて、見てた私たちも笑えて来ちゃったのよね。」


「メルロさんに捕まってる人は足が駄目なら頭で抵抗しようとするの。なんどか頭突きを当てようとするんだけどメルロさんは躱すの。そしたらメルロさん相手のほほにキスしちゃて、した方もされる方も嫌そうな顔するのよ。何でやったんだって笑えたわw。」


「それでもメルロさんに捕まってる人は抵抗するの。でやぁ!って掛け声を繰り返して掴まれてる腕を振り回してメルロさんを殴ろうとするの。」


「でもメルロさん隙をついては相手の乳を揉んでるの。相手はでやぁ!でやぁ!でやぁ!であん(?)って感じっちゃってるの!もう可笑しくてw『キャーwおやじ狩りよーw』ってどこからか、なんか黄色い声援も飛んでいたわw意味違うのに妙に合っててほんと可笑しいw」


「そこからメルロさんったら歌いながら、酔っ払いを操って次々他の酔っ払いを倒していったんだけど、その様子がまた可笑しかったのw、まるで喜劇の舞台だったわ。」


「事情を知らない人たちも、そう思ってたんでしょうね。メルロさんが最後に操ってた人を気絶させてかしこまったお辞儀をしたら、みんな拍手喝采だったわ」


ヨハンは彼女の話を聞きながら笑っていた。


「なるほど、それは本当に面白そうな光景だな。」と彼は言いました。


「メルロさんって、どんな人?あんなに強くて、しかも人を操れるなんてすごい能力の持ち主よね。それに、お辞儀の後は、紳士的に私たちを気遣ってくれたわ。」と彼女はヨハンに普段のメルロの事を尋ねた。


ヨハンは考え込んでから答えた。


「いや、素面の時はそんな強いって感じじゃないな?むしろ、もめ事を嫌ってすぐ謝る方だし、大胆な事をするより姑息な事をする方だし、酒場でたまにやる腕相撲じゃいつもすぐ負けて悔しがってるよ。みんな酔うと人が変わるとかよく聞くけど、それだけ変わるのも珍しいな。」


ヨハンの言葉に対して彼女は納得の表情を見せた。


「そう?でもよかった。」


「?なにがだい?」ヨハンは首をひねる。


「強い人って皆自慢したがるでしょ?、でも、元々そういう人じゃないって分っただけでも親しみがわいてきたわ。」


メルロさんの酔っ払いとの一件は、彼女にとっても思い出深い出来事になったようだ。。

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