最強最悪の異世界弁護士 〜この世は金と女と魔法でなんとかなる〜
良かったら最後までみてね!!
私の名前は【クユリ・シェーウッド】
困っている人を助けたい一心で魔法弁護士の仕事に就こうと考えていた。王都から遠く離れた村出身の私が、この仕事に就く事が出来たのは私の夢を村の皆んなが応援してくれたからである。
資格試験にも無事合格し就職先に困っていた所、学院の先生から紹介されたのがこの人であった。
学院史上最高の天才【カグツチ・ヨドミ】
圧倒的魔力量と天才的頭脳で学院の修了過程を本来の半分で終わらせ、世に出た化け物である。
そんな凄い人の元で仕事ができるなんて、こんなに素晴らしい事はない……と思っていたこの時までは…。
《王都中央道》
「ハアハア、もうどこに行ったのよ、あの男は?」
息を切らしながら、栗毛の髪の毛をした少女が人を探している。
「クユリちゃん、今日も先生を探してるのかい?」
「クユリちゃん、この前はありがとね。ホーンラットの丸焼き持っていくかい?」
「うん、ありがとう。でも、また後でね」
道行く人に声をかけられながら、笑顔で対応する。どうやら彼女はこの街の人々に信頼されているようだ。
「栗毛っこ、先生ならさっき女2人侍らせてラブマシーンの方へ向かっていたぞ」
「また、あのエロ魔人がぁ怒」
馴染みの居酒屋の大将があの男の居場所を教えてくれる。
怒りで地響きを鳴らしながら到着したのは、《クラブ・ラブマシーン》あの男の行きつけのクラブだ。
「いらっしゃいませ、クユリ様」
「ハア、カグツチ先生はいますか、ハアハア」
「はい、奥のVIPに」
そう言われ支配人と思われる柔和な紳士に案内をされる。
中へ進むと部屋全体は豪華な装飾で彩られており目が眩しい。その中心ではお立ち台の上で下着に近い姿でダンスを披露する女達を見ながら、横にも女を侍らせて酒を飲んでいる男達がたくさんいる。
「サイアク」
その中心地を横切りながら、VIPルームへと近着き部屋の扉の前へ来ると、中から馴染みのある笑い声が聞こえてきた。
「ガハハハハ、スズちゃんのおっぱいは大きくて触りごたえがあるなぁ♡でもでもココアちゃんの控えめなおっぱいも俺は大好きだよぉ♡アハッアハッ」
「もう先生のエッチーーー♡」
はあ、殴りたい。
私は殺意の衝動を抑え、勢いよく扉を開ける。
「先生!!いつまでこんな所にいるんですか!約束の依頼人が事務所に来てますよ。早く戻って下さい!!」
「あ?」
そこには両腕を女の背中へ回し右手で乳を揉みながら、左手で酒を飲む男がいた。見た目は黒髪、黒目の刈り上げ頭。耳には大量のピアスと首には趣味の悪い金のネックレスをしている。
「なんだよ牛乳女、テメェ見てーな田舎娘の来るとこじゃねーんだよ、バカタレがぁ」
クソぅ、こいつは私のコンプレックスをいつも馬鹿にして。
「この時間依頼人が来るって言いましたよね!なんでこんな所にいるんですか!?」
「バカタレ!これも仕事じゃ、ねえスズちゃん♡」
そう言ってカグツチは右手にある女のたわわな胸を揉みしだく。
「きゃーー♡もうエッチーーー♡」
「ガハハハハハハハハハ」
よし、殺そう。
「お待ち下さい、お嬢さん」
クユリの本気の殺意に、隣にいた50代くらいの男が声をかける。
「私がカグツチ先生に依頼をする為、無理を言ってこのような席を設けさしていただきました。先生を責めるなら、私の方に非があると考えます。大変申し訳ございません」
「えっ、それは、その」
その男は身なりが整っており、貴族のような雰囲気も漂わせていた。言葉の節々に品もあり重みもある、どこかの有名な領主様なのかもしれない。
「ガハハハ、ほらほら詫びに乳放り出して踊れ踊れ」
「黙ってて!」
こいつは後で、一発殴ろう。
「それでも先生、今回はウエストクンデ村で貴族の馬鹿息子が狩りと称して女の子を弄んで殺してしまった痛ましい事件なんです。正義を貫く為にも絶対に助けてあげないと」
私の発言に今まで馬鹿な顔をして笑っていたカグツチが、真剣な顔になって私を睨んだ。
「バカタレが……」
「えっ?」
「ほうほうそれはそれは、大変な事件ですね。しかし大丈夫です。それはカグツチ先生がしっかりと解決してくれますよ、なんたって私がその馬鹿息子の父親なんですから」
「えっ、えええええーーーーーーーーー」
《カグツチ弁護士事務所》
「どうしてくれるんだ?」
「すいません」
時は過ぎ、私は事務所の中にある応接フロアの真ん中で正座をさせられている。
「お前のせいで、あの後向こうとの契約は破断になったぞ」
「すいません」
「大体大勢の人間がある前で、依頼内容を話しちまうような素人がどこにいるんだろうな?あぁ!!??」
「本当にすいません涙」
「テメェは来てから失敗ばっかじゃねぇか!あのクソ教師の推薦でスリーサイズに騙されて雇ったら、来たのは田舎が抜けねぇポンコツ牛女だよ!」
怒りが収まらないカグツチはクユリの顔の前で唾を飛ばしながら捲し立てる。それを涙の表情で聞きながらクユリは答える。
「すいません、先生がまさか向こう側のスパイをして情報収集してたなんて、そんなに仕事熱心だと思わなくて涙」
「お!?何勘違いしてんだ」
「えっ?」
「俺は普通に向こうの馬鹿息子無罪にして金もらおうとしてただけだぞ」
「はぁ??いてて、、そんな事正義が許しませんよ!!」
そう言ってクユリも立ち上がる!少し足が痺れているみたいだ。
「相変わらず甘い事言ってんじゃねぇよ!村の依頼の100倍の成功報酬が貰えるんだぞ!!着手金だけで半分貰えんだから断るわけねぇ〜だろ、バカタレ!!」
そう言ってカグツチはクユリの痺れた足を蹴る。
「ぎゃーーーーー!」
クユリは悶絶しながらもカグツチを睨む。
「大体あんな事件、馬鹿息子を無罪にできるわけないでしょ。」
「それを無罪にしてきたから、金稼げてんだろうが。俺の仕事を見てきてないわけないよなぁ??」
「う、うぅ」
確かに私は何度も見てきた。彼の圧倒的実力とその悪知恵を。だからこそ彼はこれだけの富を築きあげ信頼を勝ち得ているのだと。
「今回の事件は全部テメェがやれ、俺は一切手を出さん、わかったな?」
「は、はい」
そう言ってカグツチは3階の寝室へ上がっていった。
「終わりましたか?」
「あっ、ごめんねタイラちゃん、うるさくして」
カグツチと入れ替わりでキッチンから出てきたのは住み込みメイドの【タイラ】。掃除や洗濯、食事は全て彼女が行っている。彼女は犬種の獣人でありカグツチに恩義がありここで住み込みで働いている。
「クユリさんなら大丈夫です、頑張って下さい」
「うぅ、ありがと、タイラちゃん」
タイラの天使の笑顔で癒されつつ、なんやかんやで任された仕事を頑張ろうと決意するのであった。
《ウエストクンデ村》
「元々あの男は父であるロンシャッテ伯爵の領地で好き放題していました」
事件現場へ来た私と共に歩いているのは、今回の依頼人【マルティン・ウエストクンデ】である。
「私達とこの周辺の村々は、フラフラと訪れては贅沢三昧して村の生娘を漁るあの男に皆んな戦々恐々としていましたよ」
「そして今回はマルティンさんの娘さんが狙われたんですね」
「はい、【シャクナ】は私の自慢の娘でした。器量も良く早くに亡くなった妻の代わりに私をよく助けてくれていました」
そう言って涙する、マルティンにクユリはその肩に手を置き声をかける。
「大丈夫です、必ず娘さんの無念を晴らしてみせます」
「ありがとうございます」
大粒の涙を流しながら、マルティンはクユリの手を握る。その手に対してクユリは真っ直ぐな目で見つめ手を握り返し頷いている。
「ここが、現場です」
そう言って連れて来られたのは。
ウエストクンデ村から少し離れた森の中にある、大きな更地であった。近くには澄んだ池もある。
「私と村長の複数人で村を出て狩りをしている最中に、あの男はシャクナを連れ出したのです。狩りが終わり村に戻るとシャクナがいない事に気づいた私は必死に彼女を探しました」
マルティンはそう話しながら池の方へと歩いていく。
「あの男の乗った馬の蹄の跡を追いたどり着いた時には、シャクナは奴の腕の中で死んでいた状態でした。私は絶望し奴からシャクナを取り戻そうとしましたが、そのまま馬に乗り逃げて行ってしまいました」
「そんな……」
「アイツは抵抗するシャクナに無理矢理手を出そうとして、思わず殺してしまったんです。王都の調査隊も来てくれましたが貴族の息子という事で碌な捜査もせずに、その後行方不明になったあの男を探そうともしません。だから王都で1番と聞くカグツチ先生の所へ行き、ロンシャッテ家を相手取って訴訟を起こそうと、せめてシャクナの無念晴らそうと依頼させていただきました!」
「そうだったんですね…。大丈夫。任せてください!」
「王都でお会いできなかった時は断られるんじゃないかと心配しましたが、こんな辺境まで来ていただけて光栄です。
ところでカグツチ先生はどちらに?」
ぎくっ。
マルティンの発言に心が痛み、言い淀みながらもクユリは答える。
「せ、先生は今他の依頼が立て込んでまして、今日も王都の弁論会に出席してます。まずは私が下調べをして情報収集を行い、先生に報告する手筈になってるんですよ。ハハハ」
「なるほど、そうでしたか。それは良かった。そろそろ陽が落ちます。この後はウエストクンデ村でゆっくりとされて下さい。宿泊施設はないですが村長の家に泊まれるように話をつけておりますので、ごゆっくりお過ごしください」
「あ、ありがとうございます」
《ウエストクンデ村、村長宅》
「ごめんさないね、大したおもてなしは出来なくて」
「いえいえ、お構いなく」
日は落ち外は暗くなってきているなか、クユリは村長宅で歓迎を受けていた。
村長の奥さんが村の名物であるオオジカの煮込みを中心とした料理を食卓に並べてくれている。
「わあ、すごく美味しいです」
クユリは口いっぱいに頬張りながら満面の笑みで食べ続ける。
「久しぶりのお客さまじゃ、しっかり食べてくだされ」
村長もそんなクユリを見て、嬉しそうにしている。
「はい!」
「しかし今回のマルティンの件本当に残念じゃった」
悲痛な表情で村長は話し始める。
「マルティンはこの村唯一の治療魔法使いでな、狩りにはいつも同行してもらっておる。まさかその間に連れ出してしまうとはな」
「治療魔法は才能はもちろん技術と経験がいる難しい魔法ですよね、マルティンさんすごいなー」
「ホホホ、ここらでは見ないレベルの腕前じゃよ」
この村長からも情報書き出さないととクユリは質問を投げかける。
「ロンシャッテ伯爵の息子さんはよく来られるのですか?」
「この村はロンシャッテ領の中でも西の位置に面しておる。ロンシャッテ家が西へ遠征に出る時はこの村を拠点にして出ることが多く、その際あの三男【ハーラン】様に見初められてしまったのじゃろうて」
「なるほど、ではそんなに頻繁に来ていたわけではないと」
「ウチのほかにも複数村があるゆえな。しかしハーラン様は度々遠征がない日でも姿を見たものがあるとか」
「その見たという方はどなたですか?」
「わしもまた聞きやからのぉ、誰が見たかは定かでは…」
「そうですか…」
決め手が欲しいとなかなか悩んでいるが、これとなる証言が見つけられないでいる。
「マルティンは嫁さんも亡くし、今度は娘まで。本当に可哀想な奴だ。」
「奥さんも亡くされたんですね」
「ああ、シャクナがまだ小さい時じゃった。村外れで野犬に襲われてな。小さかったシャクナを抱えて守り抜いておった、ワシらが見つけた時にはもう…」
「辛すぎますね」
「そういえば、あの時も狩りの帰りじゃったのぉ。マルティンが血相を変えて飛び出しておったわ」
「へー、珍しいこともあるもんだ」
そう言って次々と出される料理を私は食べ尽くして、ウエストクンデ村での調査は終了した。
《カグツチ弁護事務所》
「以上が、報告になります」
ドヤ顔で報告する、こいつの顔をぶん殴ろうと思った。
「テメェ、現場見て飯食って帰ってきただけじゃねぇか」
「そ、そんなことありませんよ。ハーランはひどい奴です。そんな奴の被害にあってマルティンさんが可哀想すぎます。だから、カグツチ先生の力でドドーンと賠償金いただきましょう!」
「平民が貴族を訴えるのがどれだけ大変かわかってんのか?周りは全部貴族様の味方だし、圧倒的証拠と無罪にする事が法に不利益であると思わせなきゃ、賠償金なんてとれんぞ」
「そ、それは、そんな逆境を乗り越えて、数々の功績、無敗記録を叩き出してきたのが先生じゃないですかぁ〜。カッコいい先生みたいなぁ♡」
色気もかけらもないセクシーポーズをしながら、クユリが全身をクネクネさせている。やっぱり殴るか。
「まぁ、テメェの話の中に金になりそうな話があったのは認めてやろう。言われた通りのもんは取ってきたな。」
「は、はい。でもこんなのどうするんですか?」
クユリは村から借りてきた、マルティンとシャクナの使っていた手拭いを差し出す。
「回復魔法は貴重だ。王都に出れば一儲けできる。なのにあんな辺鄙な村で一生過ごそうってのは何かメリットがあるってことだ。これは金の匂いがするな」
「えっ、待って下さい、今回はマルティンさんを助ける話じゃ……。」
「頭使え、バカタレ。この世の中力を持ってるのに善意のフリしてる奴こそ、裏で何やってるかわかんねぇんだよ」
そう言って俺は、いつも使うマントを羽織り事務所を出て行く。これから真の金儲けを行う為に。
《山の丘のとある教会》
「な、なんですか?ここは?」
「へへ、お気になさらずに」
クユリに連れて来られてマルティンが教会内に入ってくる。その中にいたのはカグツチともう1人。
「ロンシャッテ伯爵……。」
マルティンは予想もしていない人物の存在で驚きのあまり声が出ない。
「すいませんね、遠くまで御足労いただきまして」
「あなたは?」
「私ですか、私の名はカグツチヨドミ。弁護士をさせていただいております」
「あ、あなたが…」
まだ状況が掴めていないのか焦り気味のマルティン。
「今回私はたまたまですが、双方から同じ事件のご依頼を受けました。弁護士とは本来依頼人が勝つ為に全力を尽くす職業。しかし両方に縁があるとなっては心苦しい。ですのでこうやって示談交渉の場を持たせていただきました。」
「じ、示談……。」
マルティンは少しホッとした顔して、ロンシャッテ伯爵を見る。ロンシャッテ伯爵は眉ひとつ動かさずカグツチを見ている。
「私の愚息が犯した罪だ、それなりの補償はするつもりだ。」
そう答えるロンシャッテ伯爵に対してカグツチは不敵な笑みを浮かべながら話を続ける。
「イヤに聞き分けがいいですね。何か不都合なことでも?」
「なんだと?」
少し怒り気味で答えるロンシャッテ伯爵。
すると教会の奥から重装備をした長身の男が現れる。
「この方は王都騎士団第3部隊副隊長【クラン・フェブリ】さんです。こちらに今回の見届け人になっていただきます。」
「今紹介に上がったクランだ。聖母ラフィーネに誓ってこの会談を公正に見届け、保証人となろう。」
「(このカグツチという男、王都騎士団にもツテがあるのか……。)」
ロンシャッテ伯爵はクランの登場に驚きはしたが表情には出さない。さらに場の流れを支配しようと話を進めていく。
「先程も言った通り、私は愚息のした事について重く考えている。自分の領地で起こした事だが体面上大事にはして欲しくない。緘口令を条件に言い値の金を払い、謝罪もさせてもらいたい。」
「わ、私も、ほ、本当に伯爵様を困らせようという訳ではなく、娘の無念をと行動しただけで誠意をいただければそれで……。へはへ。」
「では、これで解決ではないか。それでいいのかカグツチよ?」
2人のやりとりを見てクランがカグツチに問いかける。
その目は早く本題に入れと訴えていた。
「はは、2人だけで盛り上がってもらっては困りますね。まだ主役が登場してないですよ。」
「主役?どういう事だ」
カグツチの合図でクユリが人を呼び込む。そこには行方不明のハーランと死んだはずのシャクナの姿があった。
「な、なんだと…。」「そ、そんなはずが…」
何が起こったかわからない2人を通り過ぎ、入ってきたばかりの2人の肩を抱く。
「さて主役も来たところです、そちらに座ってお話を進めましょう。大事な大事なお話をね」
全員が椅子に座りカグツチはその周りを歩きながら話を進めていく。
「まずはマルティンさん!」
「は、はい!」
緊張のあまり声が裏返るマルティン。
「何故待望の娘との再会を果たしたというのに、そんなに怯えているんですか?まるでゴーストやアンデットにあったかのように?」
「そ、それは」
言葉がつまるマルティンに対してロンシャッテ伯爵は助け舟を出すかのように間に割って入る。
「これはどういう事だ、カグツチ先生。茶番はよしてもらおうか」
「茶番とは?」
「私はあまり魔法に明るくてはないが、あなたは魔法の天才らしいな。姿を変える魔法か何かで騙しているのでは!」
「なるほど、ではこういう事を女性にさせたくないのですが本人からの許可を取っていますので見てもらいましょう」
カグツチは合図を出すとシャクナは無言で立ち上がる。
シャクナはハーランの方を向き、ハーランは無言で頷く。
そしてそのまま被っていたマントをとり、上着に手をかけ皆の前で裸になり始めるのだった。
「こ、これは」「ひ、ひどい…」
その姿を見たクランとクユリが驚きの声を上げる。
裸になったシャクナの体には無数の傷跡があり、傷がない肌の方が少ないまである。さらに喉元とアキレス腱には大きな傷跡があり何か意図を持って切られたものだとわかった。
「どういうことだ、カグツチ!」
クランが大声を出し問い詰める。
「わ、わたしは」
シャクナが声を出そうとする事にマルティンとロンシャッテ伯爵は驚きを隠せなくなっている。
「わ、私たちは、、こ、この人達の、せ…性奴隷にされていました……。」
顔歪めて涙を浮かべながらか細い声で必死に訴える。その姿に居た堪れなくなりクユリがマントを持って彼女に寄り添った。その横には彼女の手を握りしめるハーランがいる。
「な、何故声が出せる。それに歩けるはずが…。」
マルティンが思わず出てしまった言葉をクランは聞き逃さない。
「どういう事だマルティン?今の言葉と彼女の訴え、貴様この子を性奴隷にして痛ぶっていたのか!!恥を知れ恥を!」
「そ、それは」
助けを見るような目でロンシャッテ伯爵を見るマルティン。しかしそんなことお構いなしに伯爵はマルティンに言葉を放つ。
「我が領地で性奴隷だと…。奴隷制度は先王の号令で禁止となったはず、そのような悪しき風習を未だ続けているとはここで即刻首を刎ねてくれるわ!!」
そう言いロンシャッテ伯爵が腰の剣を抜きマルティンに斬りかかろうとする。しかしそれを止めたのはハーランであった。
「父上、私はあなたにもお聞きしたい事があります。」
「なんだと、出来損ないの三男の分際で…。私の邪魔をするな!!」
「私は以前から遠征の際西の果てにある、ウエストクンデ村を拠点に使用する理由がわかりませんでした。我が領土の位置を考えれば遠征時の拠点はもっと南でいいはず。しかし父上はウエストクンデ村にこだわり、さらには狭く戦い前は静かに集中したいからと、父上とベテランの側近達、その子飼いのみを連れウエストクンデ村に入り、その他の兵達は違う村を拠点とさせていました。」
ロンシャッテ伯爵は苦々しい顔でハーランの言葉を聞いている。
「しかし、それについて誰も疑問に思っていませんでした。何故なら我がロンシャッテ家は代々同じ理由、同じ分け方でで兵達の拠点配置が組まれていたからです。」
カグツチもその話に入る。
「昔からなんだろ、あの村で性奴隷を所持していたのは。でも先王の号令で禁止になっちまった。しかしあんたの性癖は歪んじまったまま、だからあの村でそのまま性奴隷を所持してたんだ。大変だないい歳こいて、拗らせちまった変態はよ。どうせ接待や他の貴族との交渉も使ってたんだろ、狩りてのはその性接待の隠語だ。その接待を頻繁にやりすぎてシャクナが抜け出すチャンスを作っちまったんだがな。」
ロンシャッテ伯爵は剣を落とし足から力が抜けるように跪く。
「もうあの村には王都騎士団が調査に向かってるよ。あのマルティンって奴は自分の1番気に入ったのを妻だの娘だの言ってキープしてやがったんだな。回復魔法を使って暴行しては回復、暴行しては回復を繰り返して奴隷達の体を弄びやがって。」
うな垂れるロンシャッテ伯爵の顔を掴み、カグツチが怒りの形相で叫ぶ。
「テメェら見てぇのがいるからよぉ、この世界の女達が救われねぇんだよ!!金の使い方も魔法の使い方もなっちゃいねぇ!!俺があいつら幸せにしてやんだから、法の裁きをしっかり受けてこいやボケカスが!!!!!!」
「ぁ、ぁぁ……。」
こうして教会での出来事は終わった。
数日後……
《カグツチ弁護事務所》
「えっ、魔法の残光で怪しいと思ってた?」
「ああ、そうだな」
タイラに肩を揉まれながらカグツチが答える。
「初めて会った時から異常に回復魔法の残光を感じたんだ。領主だから最前線に出るわけないし、なんでやと思ってたらその残光が方もない事務所にも残ってるから怪しいと思ってな。」
「残光なんて普通の人感じませんよ、でもそっかマルティンさんが事務所で待ってたおかげで、こいつら何かあるなと思ったわけですね。」
「まぁな、お前が持ってきた布切れからシャクナの方に大量の回復魔法をかけてるのが分かったから、それを辿って2人を救出、俺のスーパーな回復魔法で全快にしてあげた訳。まぁ古い傷は残ったがな。」
「村長さんや村全体がグルで性奴隷を隠してたなんて、ご飯美味しかったのにな。」
「ハーランが嗅ぎ回ってるのに気づいてシャクナを囮にして殺そうとしたけど逃げられたんだな。だからハーランがシャクナを連れ去って行方不明って事にして、この界隈で有名な俺を挟み示談。これで解決しましたよって周りの貴族にアピールしたかったんだろうな。」
「なるほど、じゃあなんでマルティンさんも同じくウチの事務所に依頼したんだろう?」
「それは、街歩いてて1番単純そうな弁護士に声をかけたら、たまたまお前だったらしいぞ笑」
「な、何ですってーーーー!!」
「ガハハハハハハ、見る目あるなアイツも」
「うぅ、むかつくー!!」
「まぁ俺はロンシャッテ家を新たに継いだ正義の味方ハーランの顧問弁護士として契約出来たし、金はがっぽり入るから丸儲けだけどな」
「えっ、じゃあボーナス出ます♡」
「鳥の餌でも食ってろ、バカタレ」
「ねぇ、カッコいいカグツチ様、お願いしますよーー♡」
終
頑張って修正するから、矛盾や感想ドシドシください。
他の作品もみてね♡