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土下座

「あの……なんで土下座してるんでしょう?」


久しぶり、いやしっかり会うのは初めてなのに、いきなり神久夜に土下座をかまされた。

何か謝られることをした記憶はないのだが……


『無断での世界を救う義務の付与、世界の変化を未然に防げなかった事の謝罪です』

「あー……一応聞くけど、未然に防げるようなことだったの?」

『いや、正直事前に知っていたとしても防ぐのは難しかった。私の力では世界の混合を遅らせることしかできなかった……』

「世界の混合?」



神久夜はこの世界に起きていることについて、順を追って説明してくれた。

まずこの世には平行世界というものがいくつか存在している。並行世界はそれぞれ数十億年単位で増えたり減ったりするらしい。

今天馬たちがいる世界はかなり新しく、まだ出来て一億年経ったくらいだそう。過去に起こったであろうビックバンや隕石の形跡、恐竜の化石なども実際にあったように存在しているが、それは形だけ。

そして今、天馬のいる世界と別の並行世界が混合しようとしているらしい。それにより文明が栄える世界もあれば、滅びる世界もあるという。天馬の世界は後者だ



『混合し始めると、途中で止めることは誰にも出来ない。滅びるのを防ぐには、向こうの世界の要素を全て排除することしかないの。非情な考えなのはわかってるけど、自分たちの世界を守るためだから……』

「非情なこと……?向こうの世界の要素ってことはモンスターってことだろ?たしかに命ではあるけど、そんな非情と言うほどでは……」


あまりに苦い顔をしながら言う神久夜に、若干疑問を覚える。

確かに神からしたらすべての命は平等、という感じなのかなとも思ったけどそういうわけではなさそうだ。


『向こうの世界の要素……向こうの世界にはモンスターしかいないと思ってる?』

「ッ!?」

『向こうの世界にだってもちろん人間はいるよ。それに少し調べたんだけど、エルフやドワーフといった人間と似通ったものたちだっているんだ……そしてそれらも向こうの世界の要素となってこっちの世界に現れるんだ。ちなみに世界の混合はどちらかがベースとなって進んでいくの。今回ベースとなってるのはこっちの世界で、向こうの世界だと今のとこモンスターが忽然と姿を消していっているという感じらしいよ』



なるほど……それは苦い顔にもなる。直接言葉にしてないだけで、向こうの世界の人を皆殺しにしてくれっていっているようなものだ。


「ということは、2つの世界による生き残りをかけた戦争みたいなものか」

『まぁ、平たく言えばその通りだね……』



非常に重たい空気が漂う。

そしてもう一度土下座をしそうな勢いの神久夜の頭を力づくで持ち上げる


「なんでまた土下座しようとするんだよ……!」

『今のとこ土下座しか謝罪の意を表せられるものがない!床を破壊する勢いで頭を擦り付けますよ!』

「この床を破壊って衝撃で俺も被害受けそうな勢いなんだが!?わかった!じゃあ俺のスキルについて教えてくれよ!鑑定を使ってもよくわからなかったものがあるんだよ!」

『うん……それで、どのスキルなの?』


やっと頭を下げるのをやめた神久夜に、ステータスプレートを開いて見せる。

特に気になっていた【強化】と【魔法】の2つだ。色々なスキルを最適化して生まれたこの2つだが、あまり強そうなスキルじゃなさそうな感じがしてならない。


『ええと、まず【強化】は【身体強化】の極地みたいなものだね。【身体強化】は身体能力を五割上昇させるんだけど、【強化】は運を除く全ステータスを十割、つまり倍にするんだ。【魔法】はシンプルだね。イメージした魔法を使うことができるんだよ。手から炎を出して【火球ファイヤーボール】、とかね』

「まじ?」



神久夜の説明を聞いて、思った以上にすごい性能だということがわかった。

もしかしてこの世界になってすぐの時、あんな簡単に魔法を使うことが出来たのは普通の事だと思っていたけど、全然【魔法】の性能だったとは……才能〜!とか少しだけ浮かれていたのが恥ずかしくなってきた。



『”魔法はイメージ”なんて言葉が異世界が舞台の小説で出てこない?まさにその言葉を体現したスキルだね。あ、ついでにイメージの手助けとなるように向こうの世界の魔法知識を少しだけ共有しとくね。多分起きたら頭の中に入っていると思う。時間があるときに試してみてよ』

「ありがとう神久夜」




そういって背伸びして天馬の頭を撫でる。

その時目があったが、さっきの苦そうな表情とは打って変わって慈愛に満ちた顔をしていた。少しだけ気恥ずかしくなってすぐに目をそらした。


「これで魔法の知識を共有してるのか?」

『いや、これはただ撫でたかっただけ』

「は!?」


急にデレられて思わず体をそらす。神久夜ってそんなキャラだっけ?初対面のイメージのせいでおちゃらけまくる陽気な少女くらいに思っていたが……



「ん?てか少し視界がぼやけて……」

『あぁ、もう時間なのね。今回は無理やり意識を繋げたから、またこうして話すには少しだけ時間がかかるけど……死なないでね』



その言葉を最後に、目が覚めた。

見慣れた天井……が目に入ることはなく、鏡華の顔が間近にあった


「え!?」


思わず起き上がり、鏡華と激突する。

朝っぱらからでかいダメージを負いながらベットから出る。


「おはよう鏡華」

「おはよう、ご飯食べる?」

「今何時?」

「9時」

「うーん……食べようかな。少しだけ話したいことがあるし」

「わかった。作って待ってるから着替えて下りてきて」

「はーい」



なんてことはない普通の会話、こんな日々を誰もが享受できるような世界を取り戻すために神久夜に与えられた義務を全うする。それが誰かの命に手を掛けることになっても。


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