再会
「幸いにも電気は通ってるところがほとんどだったから食べ物は大丈夫だなあ」
お互いの無事を喜びあった天馬と鏡華は、食事の準備をしていた。
時間は夜。モンスターも生物だとすると、この時間は眠っていると考えたがさすがに確信が持てなかったので最低限の明るさしか点けていない
「あんまり無駄遣いはしないでいよう。いつまでこの状況が続くかわからない」
「うん。できるだけ少ない量でお腹を満たせるようにしないと」
鏡華が起きてからまだ外に出ていないから、スーパーなどの食料が無事なのか確認を取っていない。もしかしたら天馬の家にある食料が全てかもしれない。
しかし幸いなことに、天馬は結構めんどくさがり屋な一面があり食料は1ヶ月分は買いだめする方だ
天馬には両親がいない、そのため生活費は自分で稼がないといけない。しかし天馬には本人も望んでいない”運”があった。それで宝くじで何千万と当てていた。なので食料などは好きなときに好きなだけ買うことができた。
「天馬のめんどくさがりがここで役に立つとは……」
「失礼な、合理的と言ってほしいな」
「どうだか」
めんどくさがりではあるものの、家事スキル自体は意外と高い天馬。あっという間にコスパの良い料理を二人前用意する
その間に鏡華は食器をテーブルに並べる
「天馬、将来定食屋でもやってみたらいいのに」
「お褒めの言葉感謝します。ほら、冷める前に食べよう」
この状況で食べられると思ってなかった温かい料理に、鏡華の目に涙が浮かぶ。どうしてもまだ緊張は残っていたみたいだ
きれいに食べ終わり、洗い物も協力してすぐに終わらせた
「じゃあ早速だけど、鏡華さん。今後はどうしましょう」
信じたくない状況にも、そろそろ向き合わないといけない。心を落ち着かせたところで、鏡華に切り出す
「身の安全の確保は最優先。あのモンスター達がどのくらい強くて、自分たちの実力がはっきりしない内は慎重に動くべき」
「その辺で見かけるモンスターは意外となんとかなったよ。だけど必ず倒せると言えるモンスターが全てじゃないのは確かだったな」
天馬が言うモンスターとは、例えばオークとかだ。ゴブリンは正直成人男性がぎりぎり倒せるくらいだと言うとなんとなくでも想像はつきやすいかもしれない。もちろんレベルにも寄るが
オークは天馬が見かけた限りでもレベルは10以上が当たり前。身体能力も100を超えているものが多く、まともに攻撃を喰らえば一撃であの世行きだ
「……ゴブリンでさえ逃げ出した私は、役に立たないかもしれないね」
「鏡華……ん?その刀って」
落ち込んでいる鏡華の横に立てられていたのは、家の蔵で見つけた名刀:天照だった
なんで今まで気付かなかったんだっていうほど、とてつもないオーラを感じる
「あぁこれは、多分おじいちゃんのコレクションだと思う。こんな状況になって、なにか武器が必要だと思った時に、一番手に馴染んだから持ってきた」
「ちょ、ちょっと見してくれないか?」
刀が放っているオーラが気になりすぎて、鑑定をかけてみることにした
「”鑑定”」
『ほう、この気配は神久夜か。1万年ぶりとなると、流石に懐かしいな』
「な!?」
鑑定をかけた瞬間、結果よりも早く声が聞こえてきた
すぐ隣から聞こえるような、でも遠くから聞こえているような不思議な感じだった
「誰だ!」
『私は天照。私のことより小僧、なぜ貴様から神久夜の気配がする。やつが人間と少しでも関係を持つとは思えん』
神久夜の気配?確かに神久夜と話したことはあるが、直接何かされたりはなかったんだけどな
『なに?神久夜と話したのか?』
え、なんで聞こえたの?
『今貴様は”鑑定”で私の心を覗き込んでいるも同然。ならばこちらから覗き込むことはそう難しいことじゃない』
まじか、そうホイホイと鑑定するものじゃないな
『まぁ鑑定のレベルが上がれば、覗き返せるものは少なくなるがな』
おーそれはよかった。結構重要な課題になりそうだ
あ、神久夜とは一回だけど話したよ、それ以降は顔も見てないけど
『ふむ、あいつも変わったのかもしれんな』
その後も色々話をし、思ったより収穫を得た
「鏡華、今聞いた情報を伝えようと思うんだが……明日にするか」
思ったより長く話し込んでいたのか、テーブルに突っ伏していた
眠りこけている鏡華をベットに運び、俺もそのまま眠りにつく
『やぁ!そこの君!元気?久しぶりだね!いや、この前のは記録映像だったからはじめましてかな?』
聞き覚えのある、元気な声。嫌でも覚えてる。別に嫌なことじゃなかったけど
「はじめまして、神久夜」
初めて会った時のような白い空間で、早めの再会を果たす