入部は不純な動機
午前中校舎を見て周り、その後に自己紹介などをし
た。今日も午前中で終わりだ。そしてこの後は帰ってもいいし部活動を見学してもいい。
「テツは入る部活決まってるの?」
「いやまだ。運動部に入るってことは決めてるけどな」
昨日友達になった情歩が聞いてきた。ちなみにまだこいつしか話す奴はいない。しかもこやつはすでに友達をたくさん作り休み時間はどっかにいってしまう。そんな時は寝たふりをしてやり過ごしている。…チッ
「情歩は決まってんの?」
「うん!中学の時と同じ陸上部に入る!決まってないなら一緒に行ってみない?」
(陸上部か。あんまり興味ないけど。まぁ見学だけなら行ってみるか)
佐藤は漠然となにかしらの球技をしようとは考えていた。ただ走るだけってつまんなくない?としか思っておらず入るつもりは現在1ミリもない。
「行くか」
「よし!こっちこっち!」
情歩に連れられて陸上部が練習をしている校庭に向かった。
(やっぱサッカーは人気だな。女子の人数えぐ)
サッカー部は女子人気を獲得できる可能性があるところはとても、いやとっても魅力的だが高校から初めるのには向かないと感じている為サッカー部にも入る気はない。
サッカー部が占領している校庭の中央を抜けていくと部室棟とサッカーゴールの間でストレッチをしている集団がいる。陸上部だ。
「こんにちは!見学に来ました!」
「こんにちは」
「やぁ!よく来てくれたね!おーい椅子を用意してくれー!」
「は〜い!」
情歩が人懐っこくストレッチをしていた一人に話しかけた。笑顔で対応してくれた男の人の見た目は細身、身長は低めで短髪の爽やかな人だった。
俺達は用意された椅子に座った。
「俺の名前は鮫島奏多!2年だよ!種目は走り幅跳びと三段跳び!よろしくね!」
「石通情歩です!種目は400mでした!よろしくお願いします!」
(野球で言うポジションみたいなもんか)
「佐藤哲です。中学の時は野球部でした。よろしくお願いします」
「未経験者も大歓迎だよ!」
「いや、入る気はあんまりないんです」
「あ、そうなんだ!せっかくだから今日はじっくりみてってよ!」
「はい」
「石通くんは練習着持ってきた?あるなら混ざって少し走っていかない?」
「持ってきました!ぜひ!」
「着替えは部室使って!」
情歩は練習に参加するようだ。鮫島先輩と部室に向かっていった。そしてすぐに練習着に着替えた情歩が出てきた。
「じゃ、行ってくる!」
「おう」
いつの間にかストレッチが終わっていた集団に走って行った。
そして鮫島先輩がさっきまで情歩が座っていた椅子に座った。
「まぁただみててもつまんないと思うから俺と話でもしようか!」
「はい」
「じゃあまずは陸上部ってどんなイメージ?」
「色んな競技があって個人競技ってイメージです」
「うんうん!クラスとか学校の立ち位置的には?」
「う〜ん難しいですね。中心にいるやつもいるし静かなやつもいるし」
「そう!そうなんだよね!陸上部って陰も陽もいるんだよ!変なのも多いし!面白いよね!闇鍋って感じで!」
(確かにな〜そういった意味だとおもしろそうかも)
「あとはなんといっても陸上部は男女で部活が分かれてない!これだよね!」
(そうか!そうだった!なんか入りたくなってきたかも…)
「しかもマネージャーもいるしね!」
(マ、マネージャーもだと!?)
女子関係にやたらと反応する佐藤を見てこれは部員確保できるかもと思った鮫島は女子関係の話で佐藤をさらに誘惑する。
「ユニフォーム姿は最高だよ〜?」
(ユ、ユニフォーム…)ゴクリッ
その後も鮫島の誘惑は続いた。このままではまずいと思った佐藤は立ち上がった。
「今日は帰ります!」
(くっ!もうちょっとだったのに)
そして鮫島に一礼して走り出そうと振り返った時に目の前に一人の女子ってが一人立っていた。
佐藤の顔を覗き込み話しかけてきた。
「新入部員さん?よろしくね?」
そして天使の微笑み
「はい!よろしくお願いします!」
佐藤哲はこうして陸上部に入部したのであった。