MMOの思い出を語りたい/13年前、ネットゲームで本当にあったお話
私こと「うおのめ」は、MMOを創成期からずっとプレイしてきたわけだが、本当に様々な出来事があったなあと思い、ここに書き留めることにした。
コンチェルトゲート-フォルテ、というゲームをご存知だろうか。
2007年に始まり2013年にサービスを終えたMMOだった。
監修はスクエニ、運営はゲームポッド(なつかしい)が行っていた。
このゲームの特徴は、市場のようなものがなく、人々がすべて手渡しでアイテムを販売するという、今では考えられないような不便なシステムにあった。
けれどそれが沢山のつながりを生んで、「モンスターハンターフロンティア」がリリースされるまではトップを走るゲームとなっていた。
私はコンチェルトゲートのゲーム内で、モンスターを捕獲する職業についていた。
ある日私が大通りに座り込んで、捕まえた亜人の猫型人間を売りさばいていると(今思えば奴隷商?)あるプレイヤーが話しかけてきた。
けれどチャット欄に表示されたのは見慣れない、英語のチャットだった。
その客の名前は意味をもたないアルファベットの羅列だったから思い出せないが、仮にknightと呼ぶことにしよう。
わずかながらに英語の心得があった私はカタコトの英語でなんとか会話をしてみると、どうということはない、猫型亜人ペットを一つください、とのことだった。
私が料金を伝えると、彼は黙り込んでしまった。
どうやら資金不足の様子。
私が「では、取り置きしておくので、また資金ができたら戻ってきてください」というと、knightは無言で去っていった。
海外からアクセスしている人たちは当時から、不正や荒らし行為を行う傾向が強くて警戒されがちだった。
私もこのときは「無言で去るなんて、やはり海外勢は変り者が多いな。多分戻ってこないだろう」くらいにしか思っていなかったと思う。
けれど彼は、間もなくに戻ってきて言う。
「アイテムを売ってお金をつくってきました。一体ください」
私は不信に思った。
そのペットは見た目の愛らしさはあっても、強いわけでもなく、そこまでして入手しなければならないものでもなかった。
よほどその外見が気に入っていったのだろうかと思いながら、詐欺に十分気を付けたうえで取引を終えると、
「ありがとう」
とだけ言って、武器防具を売り払ったみすぼらしい姿でknightは去っていった。
それから2、3日後、彼から個人チャットが飛んでくる。
「この前はありがとう。君は英語が話せるんだね。一緒に遊ぶことはできないかな?」
そんな内容だったと思う。
私が了承して彼と合流すると、nanoという名前の小さくて可愛らしい恰好をしたプレイヤーが彼の隣にいた。
どうやらnanoは彼のリアル友達らしく、一緒にプレイしたいとのこと。
knightは私のことを「仲良しの日本の友人」などと得意になってnanoに紹介していたのを覚えている。
3人で早速にパーティーを組んで歩き出すと、間もなくモンスターとエンカウントした。
プレイヤーと各々のペットが画面にならび、戦闘が始まる。
するとnanoの後ろには例の亜人猫のペット。
レベルも低くて、そもそも弱い。
nanoはそれを回復したり、守ったりしながら戦っていた。
戦闘が終わったあとで私は
「その猫は俺がknightに売ったものかな?」
と尋ねると、nanoは
「はい、私が先日、誕生日だったから、彼がプレゼントしてくれたなの」
と返した。
語尾にnanoを付けるのは彼(彼女?)の口癖だった。
つまりknightは友達への誕生日プレゼントを手に入れるために、自分のアイテムや装備を売ってまでして、その猫型ペットを手に入れたということらしい。
私は胸を打たれて、二人のことをとても好きになった。
あえて、「それのためにknightは装備を売り払っていた」と伝えることはしなかった。
それから二週間ほど、私たちは自然と集まって、カタコトの英語で話しながら、笑いながら旅をした。
少々強引だけれどいつも陽気なknightと、いつも私に礼をいって、楽しいと笑っていたnano。
けれどそんな楽しい毎日は長くは続かなかった。
コンチェルトゲートの運営が「海外からのアクセスの禁止」を発表したのだ。
仕方のないことだった。事実として、海外からのアクセス者がリアルマネートレードで荒稼ぎをしていたからだ。
当時はRMTはどこのゲームの中にも、当然のようにあった。
私の知人などは、リネージュというゲームで月に数十万を稼いでいたらしい。
ともあれ、knightとnanoは間もなく、この世界から消えることになる。
私たちは最後に、広間の噴水の傍に腰かけてこんな話をした。
「僕たちはもう、今日で最後になると思う。僕たち海外の人間はアクセスできなくなるんだ」
knightがそう告げる。
「ああ、知ってる。寂しく思うよ」
そう返すと、今度はnanoが口を開く。
「私たちね、香港に住んでいるなの。私たちは日本が大好きで、いつか日本にいけるように勉強しているなの。でもね、私たちが日本が好きだっていうと、周りの大人たちに石を投げられたりするなの」
中国系の人たちの中には、日本人を恨んでいる者が少なからず含まれていることは知っていた。
けれど彼らは違った。
日本が大好きで、アニメも大好きで、そして私のことも大好きだった。
それから彼らと小一時間、他愛もない話を続けた。
二人がお気に入りのアニメはデスノートやナルト。
秋葉原にも行ってみたい、日本語でアニメが見たい。
そんな内容だったと思う。
「いつか日本にいって、君とまた一緒に遊びたいなの」
そう言って、nanoは私の方に向き直った。
「ああ、もちろんだよ。俺も、君たちのことを忘れない。きっとまた会える」
そう告げると、二人は立ち上がって、「ありがとう、楽しかった」といってログアウトしていった。
それ以来、私はゲーム内で困っている外国人をみると、なんだか彼らのような気がして手を貸すようになった。
もちろん、実際にゲームを荒らしたり、転売をしたりと悪質なことをする海外のプレイヤーは多い。
日本人にも海外プレイヤーから痛い目に合わされて、憎く思っている人もいるとおもう。
けれど、もし楽しそうに二人で駆け回る海外プレイヤーがいたら、彼らのことを思い出してあげて欲しい。
今は世界の情勢も変わり、彼らが香港で、あるいは日本で無事で過ごしていることを祈っています。




