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3話

色々と余計なことを考えてしまったが、ここは王宮の庭園であり、手入れの行き届いた大輪の花がそこらじゅうで顔を覗かせている。


あぁ、薔薇、綺麗だよね……

どうせなら自由に見て回らせてくれないかしら


そう思いながら、薔薇よりも私のことを見ているイベリシス殿下へと目を向ける。


しまった……目が合ってしまった……


「リリーは、薔薇は好きかい?」


私に真紅のように赤い薔薇(愛情)を手折って差し出してきた。私が受け取らないせいで、行き場を失った手が私の頭へと伸び、花かんざしのように添えられた。


ニコリと笑いながら黄色い薔薇を殿下へと手向ける


(わたくし)、殿下には黄色い薔薇(友情)を送りますわ」


さぁ!英才教育を受けてきたのだから花言葉の1つや2つ、知っているでしょう?今発揮する時がきたわよ!


「嬉しいよ!リリー、王宮の庭園の薔薇を全て黄色に変えてしまいたいくらいさ」


ハートの女王と同じ思考回路を持つこの殿下には、私の思惑など伝わらず、私の行為は徒労に終わってしまった


それもこれも全部聖会のせいだ……

何が悲しくてせっかくの休日を無駄にしなければならないのよ。

媚びを王家に売りたいがために聖女の神聖力を貸し出すという名目で、月に2、3回ほど王家に来ることになってしまったのだ。


それ以外にも、スケジュール管理はされているのだがそれはまた別の機会に……


薔薇を見ながら、物思いに耽っていると向こうから声が聞こえた。


「イベリシス殿下〜!リリ〜様!ロズィも御一緒させてくださいまし」


声の主は、ロズィ・イルノーメ公爵令嬢でイベリシス・リンドウェル殿下の婚約者候補として名を挙げられている。

それもそうでしょう、腰まで伸びる赤い髪は艶やかで切れ長のルビィのような瞳はとても魅惑的だ。


ちなみにロズィ令嬢は、当て馬役として登場する。



「ロズィ、母上から聞いてこちらにきたんだね?」


「そうですわっ!王妃様のお茶会に呼ばれたんですけれども、どうしても殿下に会いたくなって来てしまいましたの」


うるうるとしながら、上目遣いをする彼女はとても可愛い。悪役令嬢のような見た目に反して、彼女はなんと全攻略対象者から幼なじみや妹のような存在として登場する。


私に対しても、元平民という身分を気にせず接し、親切にしてくれるのだが、誰ともお近づきになりたくないという私の意思は未だに伝わらずにいるのであった


「王妃のお茶会……そうか…リリーをお茶会に招待して母上に気に入られれば婚約者候補に……」


不穏な言葉が聞こえ、思考を切り替え、咄嗟に言い返す。


「イベリシス殿下、わたくしお茶アレルギーですので至極残念ですがお断りさせていただきますね」


ここで聞こえないふりをすればどうせ後日お茶会の招待状が届くのだ。聖会に届けば、どのような理由でも出席を余儀なくされるだろう……死ぬこと以外かすり傷ね



少し驚いたような顔と共に殿下は呟いた

「リリー……!母上のお茶嫌いを知ってそのようなことを!?……なんて優しいんだ君は……」


「はい……?」

王妃様がお茶嫌い?

なら、どうしてお茶会を開くのよ!


「まぁ!リリー様も知っていたんですのね!

実はお茶会というのは、名前だけで本当はずっと皆さんでフルーツジュースを飲んでいるんですの」


「ロズィ、今度のお茶会にはリリーも連れて行ってくれないかい?きっと君が付いてくれればリリーも安心出来ると思うんだ」


「はい!?いや、私行くとは一言も言って」


言葉の途中でロズィが私の手を両手で包み込んできた


「お願いします!ぜっったい楽しいですわっ!!御一緒してくださいまし、愛しの聖女様」


ゴクリ……これはもう断れないムードでは??


「……都合が合えば……参加いたしますわ」


引きつった笑みでそう返し、あとはドレスの話をふられようが、殿下に全てを肯定されべた褒めされようが、適当に相槌をうち、王妃様に気に入られない作戦を1人、頭の中で思い描くのであった。


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