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逆行

 粗末な農村の小部屋に、朝の光が差し込む。記憶の中の私の生家の、私がいつもいた物置部屋だった。


 目覚めると、私は12歳になっていた。


 背は縮み、すすけてよれた平民服を着た手足は棒の様に細く、肩口まででざんばらに切られた髪はいつものように売られてしまった。

 夏の終わりの肌寒い朝に掛け物一つなく寝かされていた子どもの頃の私。

 もとの16歳の時の体から比べるとあまりに貧相で、それが容赦なく自分が逆行したという現実を突きつけてくる。


「やってくれたわね……」


 逆行した私は洗脳も解け、カーライルに毒付く。彼は魔道具を使って私を12歳に戻したのだろう。頼んでもいないのに……


「また、地獄を繰り返せというの?」


 そう。私の人生は、最初から地獄だった。親から虐待され、12歳で隣国の変態貴族に売られて、四肢をもがれ玩具にされた。飽きたら襤褸(ぼろ)のように森に捨てられた。

 そこにシヴァと名乗る少年がやってきて、私を助けてくれた。彼は、探索魔法で魅了使いを探していたのだと言った。

 光魔法で四肢を再生し、抉られた目や内臓も元に戻してくれた。


 私は嬉しかった。初めて愛されたと思った。


 だけど、彼は私を洗脳した。


 彼の道具になった私は、彼に教育を受け、魅了魔法の使い方を教わり、隣国の王宮に潜入した。

 私の魅了魔法で次々に王族を籠絡し、王宮が大混乱しているうちに、兵士達を洗脳したシヴァが王を殺して王宮を乗っ取った。

 彼はその後も私を使って周辺諸国を乗っ取り、あっという間に一代で帝国を築いてしまった。


 私は完全にシヴァの道具となった。


 だけど、私はそれでよかった。道具でいれば、何も考えなくていいから。


 新鮮な空気を吸いたくて窓を開ける。この物置部屋で、私は幼少期から一人で寝かされていた。泣き叫んでも、寒さに震えても、両親は決して助けてくれず、それどころかうるさいと私を殴った。


 開け放った窓辺に飛んで来た小鳥を見つめる。小鳥もこちらを見つめ返す。


「……3回鳴きなさい」


 私が言うと、小鳥は愛らしい声でピーと3回鳴く。


「肩にとまって」


 小鳥はすぐに私の肩にとまる。


 シヴァに会うまで、存在すら知らなかった魅了魔法を、私は完璧に使いこなしていた。


 いや、完璧以上だ。


 前世では私が魅了魔法をかけるには、対象者との皮膚接触が必要だった。触りたくもない対象に接触し、能力以上の魔法を使うことで起こる割れるような頭痛に耐えながら魅了魔法を使った。

 しかし、今はそんな事しなくても、簡単に魅了魔法をかけられる。

 カーライルが私に流し込んだ膨大な魔力が、私の中で渦巻いているのがわかる。

 私の魅了魔法と、カーライルの洗脳魔法が、私の中で溶けて混合してしまったのだ。

 今の私は以前と違い、体に負荷をかけずに魅了を……それも洗脳魅了を使えるだろう。


「カーライル、過去は変えられるのかしら?」


 私は明るんできた空を見上げて呟いた。





主人公の逆行時の年齢を変更させて頂きました。詳細は活動報告をご覧下さい。

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