もう一人のリリー
眩しい朝日に照らされて目を開けると、エドガーが心配そうに覗いてくる。
「大丈夫かい? うなされていたよ?」
リリーはエドガーに微笑もうとしたが、ポロポロと涙が溢れる。
「……とても、悲しい夢を見たの……」
エドガーは側に座って寄り添ってくれる。エドガーの作ってくれた揺れ長椅子に横になっているうちに眠ってしまったらしい。
朝の風から私を守るように、エドガーがかけてくれたコートが暖かい。
「悲しい夢? どんな?」
「もう一人の自分が、私の中に入って、私や貴方やオスカー……それに、他の沢山の人も助けてくれるの……だけど、彼女は、元の世界に帰ってしまうの。私が『行かないで!』って言ったら、彼女は私を抱きしめてくれて……『大切な人がいるの。貴女もそうでしょう?』と言って……帰ってしまうの……」
エドガーは黙って聞いていたが、そっと髪を撫でてくれる。
「君は、彼女と記憶を共有していたんだね。君は、とても悲しいの……?」
「ええ……彼女は、『貴女はこれまでの力を使えなくなる。私が元の世界に持って行かなくてはいけないから』と言っていたわ……彼女の魔力を、もう何処にも感じないの。私を守ってくれた彼女が、一緒にいてくれた彼女が、もう何処にもいないのよ……」
リリーの涙は止まらず、赤子のように泣いてしまう。
「……僕が、もう一人の君の代わりになれないかな?」
「貴方が……?」
エドガーが頷く。
「側に居てくれるの……?」
「ああ。側にいるよ。ずっと……」
エドガーは優しくリリーの手を包み込んだ。