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恋とは甘いものかしら?  作者: 遠野翔
3/10

今回は短めになります。


 社交界デビュー当日。


 私は真新しいピンク色のドレスを着て、逸る気持ちを押さえ込むように馬車に乗り込んだ。

 今日のためにこしらえたこのドレスは、適度に散りばめられたレースのフリルと、ふわっとボリュームのあるスカートがポイント。私はあまり背が高い方ではなく、年上の令嬢たちに比べたら慎ましい胸元をしているので、可愛いタイプのドレスで、今流行っているタイプを選んだ。

 アンリお兄様に釣り合うために本当は大人っぽいドレスを選びたい気持ちもあったのだけれど、無理をして似合わないものを着るより、等身大の私が一番綺麗に見えるものがいいはずよ。


 今日の私は、本当に完璧。頭のてっぺんからつま先まで磨き上げられ、ダンスの練習もあれからたくさんこなしてきたわ。アンリお兄様も、今の私を見たら、きっと一人の女性として私を意識してくれるはず。


 パーティーへ行ったら、どんな風にアンリお兄様に話しかけるか、考えていた方がいいかしら。いつもは。予想外のことが起きても落ち着いていられるのに、アンリお兄様のこととなると、慌ててしまって、全くお淑やかにできない。

 だから、今からその瞬間を想像して、練習しておきたいわ。


 頭の中で、会場に着いてからアンリお兄様を見つけて、挨拶をするところまでシミュレーションできたところで、誰かが馬車のドアを叩いた。


「カティア」

「お父様?どうされたのですか?」


 ノックしてきたのは、父だった。私が返事をすると、なぜかそのまま私と同じ馬車に乗り込むお父様。

 あら、私のエスコートをしてくれるのは、従兄弟のウィルではなかったかしら。

 そう言えば、今日彼の姿を一度も見ていないんだけれど…?


「ウィルお兄様はどうなされたのですか?」

「…実は、今日のお前のエスコートは、私がすることになった」

「お父様が?」

「ああ」

「では、お姉様のエスコートはどういたしますの?」


 我が家は、数年前に流行病でお母様を亡くしている。なので、喪が明けてからも、父はパーティーには一人で参加していた。けれど今年ようやく、私とお姉さまの社交界デビューが決まったので、長女であるお姉様はお父様が、次女である私はウィルお兄様がそれぞれエスコートすることに決まった。そう、数ヶ月前に聞かされていたのだけれど…。


「シシィは…別の馬車で向かう」

「別の馬車で?」

「ああ」


 そんな会話をしているうちに、馬車は動き出した。

 

 お姉様ったら、大丈夫なのかしら?

 お姉様付きの侍女は、少しおっちょこちょいなところがあるから、支度に不備でもあったのかも知れないわね。


 私はそんなことを考えながらも、初めての社交界デビューにすっかり気を取られていたので、深く考えることはしなかった。




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