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恋とは甘いものかしら?  作者: 遠野翔
1/10

中編を予定しています。


2019/8/29 誤字脱字報告ありがとうございます。とても助かります!

私はアッヘンバッハ伯爵家の次女の、カティア=アッヘンバッハ。

 今年16歳になった私は、間も無く社交界デビューを迎えようとしている。


 私の夢はずっと、素敵なお嫁さんになることだった。平凡だと笑われるかもしれないけれど、私にとっては大事な夢で、社交界デビューはその第一歩


 素敵な奥さんになるために大切なことはいくつかあって、もちろん見た目が可愛いのも大事だけど、それだけではだめだわ。良き妻であるため、貴族に嫁ぐ妻ならば、賢いだけでなく気品や威厳があり、夫である主人を支えられる存在であるべきよね。


 アッヘンバッハ家には、跡取りとなる息子はいなくて、私とお姉さまのふたり姉妹。

 なので、きっとお姉さまは婿を迎えて、この家を継ぐことになると思う。そうなれば、私はきっと他の貴族の家に嫁ぐことになるでしょう?

 だから私は、いつか来たるその日のために、来る日も来る日も多くのことを学んできましたわ。


「おはようございます、お姉さま」

「おはよう、カティア」


 姉であるシシィ=アッヘンバッハは、私より2歳年上の18歳。

 私と同じピンクブロンドの髪だけれど、ストレートヘアの私と違い、少しふわふわとした毛質。青とグレーの入り混じった瞳は大きすぎず、優しい目元をしている。


 私たち姉妹は容姿が似ているけれど。性格は笑ってしまうくらい真逆なの。

 自分で言うのも何だけれど、私は社交的で友人も多い方だわ。でも、お姉様は大人数の友人と噂話を楽しむタイプではないわ。内気な性格が原因して、社交界デビューも遅れに遅れて、今年妹の私と一緒にデビューすることになっているくらいだもの。

 お姉様なりの理由はあるのだろうけれど。私からしたら、社交界でおもしろ楽しく過ごせるはずの2年間を棒にふるなんて、少し考えられないけれどね。


 貴族に生まれたのに、あまり貴族らしくないお姉様。

 優しくて、お人好しのお姉さま。そのおとなしい性格は、たとえ女で婿を取るからといって、跡取り娘にふさわしいとは思えない時もあった。

 お姉様と私の間には、少しばかり距離がある。お姉様のことは、嫌いではないけれど、一緒にいると苦手に感じることもある。姉妹なのにどうしてこんなに違うのかしら?


「お姉様、今日の午後にアンリお兄様がいらっしゃるって聞いたのだけど…本当なの?」

「ええ、午後からのダンスレッスンに付き合ってくれるって聞いているわ」

「ダンスのレッスンに?なら大変、もっと可愛いお洋服に着替えなくちゃ!」


 私は朝食を食べ終えると、早速部屋に戻ってドレスを選び直した。

 そして、ダンスフロアでアンリお兄様がくるのを待った。


 アンリお兄様というのは、我が家と特に親交の深いフライベルク伯爵家の長子で、私たちの幼馴染に当たる人。アンリ=フライベルク様。

 神秘的な輝きの淡いエメラルドグリーンの瞳に、少し長めのブロンドヘア。おとぎ話に出てくる王子様のように優しい人で、学園の成績も上位だと聞いたことがある。


 こんなに完璧な人が私の幼馴染だなんて、信じられる?


 褒めすぎかしら?でも、全て本当のこと。事実なのよ。

 こんなに素敵な人が身近にいたら、誰か他の人を好きになるなんてできなかった。

 そして、本当の私の夢は、完璧なアンリお兄様のお嫁さんになること。これこそが、私が夢見ていた素敵な結婚なの。


 本当なら、社交界デビューの時にはアンリお兄様にエスコートをお願いしたかったけれど、それは叶わなかったの。社交界で男性が女性をエスコートをするということは、血縁関係にない限り、恋人同士か婚約者だと思われてしまうから、と言う事情もあって。

 だから、数ヶ月後に控えた社交界デビューの日、私は従兄弟のウィルにエスコートしてもらうことになっているの。お父様は、お姉様のエスコートをするから。


 でも、社交パーティーのファーストダンスは、アンリお兄様にお相手してほしい。

 パーティーも終わりに差し掛かって、ダンスに疲れたら、こっそりとバルコニーへ行って、夜風に当たりながら、2人だけの時間を過ごせたらいいのに。


 そんな風に、私がこれから訪れるであろう未来に思いを馳せていると、誰かが私の肩をトントン、と叩いた。


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