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第5話 まともに報酬もらえません

『自動回避』……その名の通り自動的に攻撃を回避してくれるスキルのこと。スキル保持者が意識していない方向からの攻撃を回避してくれるため、乱戦になればなるほど威力を発揮する。なお回避するスペースが無かったり本人の身体能力以上の動きはできなかったりするため過信は禁物。身体能力がデタラメにある場合は光速の回避行動をとっているように見えるかもしれない。



「いや~お陰で助かりました。ありがとうございます!」


 ゴブリン討伐の報告を受けた村長は満面の笑みで感謝の言葉を述べてきた。それだけ喜んでもらえれば、こちらとしても腹ペコで突っ込んだ甲斐があるというものだ。


「折角ですから何かお礼をしたいのですが、御覧の通りこの村には大した物が無く何を差し上げたらよいか……」


 村長は腕をを組んで考え込む。願ってもいないチャンスである。できれば食料をもらいたい。しかし何でも握りつぶしてしまうこの身では持ち運ぶのは至難の業であろう。もうこの際ご飯を食べさせてもらおう。


「あの、できれば食事をさせていただけたら助かります」

「なんと! そんなお礼で良いのですか? さすがは勇者殿、欲がありませんなぁ」


 村長は驚いていたが俺にとっては最良かつ緊急のお願いである。さすがに腹が減りすぎた。


 その日の夜、俺は村長の家の一室に泊めてもらい食事を運んできてもらった。おいしそうな野菜がたっぷり入った具たくさんのシチューである。あったかいご飯だ。

 運んできてくれた村の女の子が尋ねてくる。


「皆と一緒に召し上がらないのですか?」


 当然の質問ではある。しかし現状、俺の食事風景は行儀が悪すぎて他人にはお見せできない。


「いえ、実は私スプーンが上手く扱えなくて……」


 俺は言い訳をした。正確には『スプーンを握ると粉々になってしまって』が正しい。何とも恥ずかしい理由だが。


「では私でよければお手伝いしますよ」


 女の子から意外な提案がなされる。そうだ。よく考えたら、そういう解決方法があるじゃないか!しかも女の子にやってもらったら幸せな気分になれて一石二鳥じゃないか!


「お願い……できますか?」

「はい。喜んで!」


 女の子は快く引き受けてくれた。なぜか凄く緊張する。これは一体なんのプレイだろうか?メイド喫茶にいるかのような感覚だ。女の子はスプーンでシチューを掬い、俺の口元に近付けてくる。


「では、どうぞ」


 あと少しで俺の口に到達する、というところで――


 スキル『自動回避』が発動


 体が強制的に横にスライドした。スプーンは無残にも空を切る。


「え?」


 流れる微妙な雰囲気。


「さ、さあ勇者様どうぞ」


 もう一度トライする女の子。


スキル『自動回避』が発動


 体は再び横にスライドした。流れる気まずい雰囲気。


「勇者様、ふざけてます?」

「ゴメン。やっぱり俺には許されないことだったようだ……」


 俺に幸せな瞬間など許されなかった。常在戦場ってわけか? やかましいわ!! 女の子に重ねて謝意を述べ退出してもらい、俺は一人寂しく食事をすることになった。もちろん犬食いである。


「そういえば子供の頃、口でご飯を迎えに行ってはいけませんって言われたっけな……」


 俺は食事をしながら母親のことを思い出していた。



――――――――――――――――――――――

女神への質問コーナー


Q 勇者であるメリットがあまり感じられないのですが?


A 女神の加護を受けているとは言っても勇者は孤独な存在です。旅も厳しいものになると思います。女神もとっても心配ですが、困り事があったら相談に乗りますので何でも言ってください。私はいつでも近くで見ていますよ。

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