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第4話 まともに討伐できません

『全言語能力』……全ての種族の言語が分かるスキル。言葉が通じない異世界において必須となる言語能力。しかし語学が堪能なものでもせいぜい2~3ヶ国語、天才と呼ばれる人でも10ヶ国語分かればいい方である。なので魔物も含めた全ての種族の言葉が分かるというのは、もはや賢者の領域を飛び越えて神の領域に達していると言っても過言ではない。ネゴシエーターとして活躍できるのではないだろうか?



「ほう、ここか」


 村の依頼を受けた俺はゴブリンの巣が見えるところまでやってきた。巣といっても少し森に踏み入ったところにある洞窟で、入り口には門番らしきゴブリンが見張っている。手に槍のような武器を持っていることからも只の獣にはない知性を感じ取ることができる。


「さて、どうしたものか」


 と考えてはみたが相手は魔物。遠慮はいらない。今こそ、この有り余る力を使う時ではないか。そうと決まれば正面突破だ。


「よし、いくぜ! ファイアーボール!」


 俺は二度と使うまいと思っていた魔法を洞窟の入り口に向かって遠慮なくぶっ放した。周りがほんの少し火事になるが目を瞑ろう。


「ウワーーッ! ナンダ!?」

「テキシュウダーー!!」


 魔法を放った俺はすぐさま距離を詰めた。ゴブリンたちの言葉が聞こえてくる。言語能力というのは魔物にも有効なのか。戦況が把握しやすくていい。


「テキハ、ドコダ?」

「シンニュウヲ、ユルスナ!」


 爆発音を聞きつけたゴブリンたちがわらわら出てくる。俺はそれを片っ端から撫で斬りにしていく。木っ端微塵こっぱみじんになって飛んでいくゴブリンたち。たまに後ろから刺されそうになるが『自動回避』のスキルのお陰で体が勝手に回避してくれる。有難いスキルだ。


「よし! 中に入るぞ!」


 出てきたゴブリンをあらかた討ち取った俺は洞窟内に踏み込んだ。途中ですれ違うゴブリンたちを次々に剣の錆にしていく。伊達に身体能力がカンストしているわけではない。


「マオウダーーー! マオウガ、セメテキタゾーーー!」

「オンナコドモヲ、マモレーーー!」


 洞窟の奥に進んでいくと、そんな不穏な言葉が聞こえてきた。いや魔王じゃなくて勇者なんですけど。


「ココハ、トオサンッ!」

「ゼンリョクデ、シシュシロ!」


 洞窟の奥の方にたどり着くと何人ものゴブリンが立ちふさがる。しかし彼らは手に武器など持っていなかった。ただ手を広げ立っているだけだ。奥を見やるとゴブリンの女や子供たちが震えながらこっちを見ている。どうやら洞窟のさらに奥から外に向かって脱出をしている最中のようだ。


「オマエタチ! イマノウチニ、ニゲロッ!」

「アンターーーーッ!」

「トーチャーーーン!」


 え? 何この状況。超やりづらいんですけど。なまじ言葉が分かるせいで。


「サア、コイ! マオウ!」


 ゴブリンはファイティングポーズをとる。完全にこっちが悪役である。


「うーーーーん……」


 少し考えた俺は持っていた剣を鞘に納めた。もう十分に討伐はした。懲らしめた。おそらく彼らはもうこの辺りには近づかないであろう。そう思った。


「もういい。行け!」

「エッ!?」


 俺は手でシッシと向こうへ行くようジェスチャーをする。ゴブリンたちは初めは半信半疑で目を逸らさなかったが、やがて半身でゆっくり動き出すと全員脱出するべく走り出した。


「もう、これでいいだろう」


 村長たちの依頼は果たせたはず。俺は歩いて村へ戻ることにした。


「確かにこれでは魔王だな……」


 道中の死骸を見ながら思う。初めからもっと話し合えばよかった、と。



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女神への質問コーナー


Q 魔物を討伐する時に魔物の家族とかがいると心が痛みます。どうしたらいいですか?


A できれば争い事はしたくないですよね。まずは話し合いましょう。それでもダメなら殴り合いましょう。新しい友情が生まれるかもしれません。女神はあなたがボッチになっていないかとっても心配です。

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