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第1話 まともに食事ができません

『LvMAX』……その者の強さを表す指標(Lv)が上限値に達していること。異世界に行った者をお手軽に強くするためにしばしば取られる技法。基本的にLvが高いということは各パラメーターも総じて高いということになり、それだけで他者を圧倒し精神的優位に立てる。また己の器を極限まで磨きあげたという努力により尊敬の眼差しを集めることができる。Lvが高いに越したことはないが一部お年を召された方はLvを上げると逆にパラメーターが下がったりする。要注意。



「ん……ここは?」


 目を覚ますと見知らぬ森の中にいた。木漏れ日は暖かく、爽やかな風が通り抜ける。とても気持ちがいい。本当にここは異世界なのだろうか。


「ステータスオープン」


 俺がそう言うとステータス画面が目の前に映し出される。こんなものが映し出されるとはやはり現実ではない。俺はそのまま自分の状態を確認することにした。


 Lv999

 HP99999/99999

 MP9999/9999

   力9999

  魔力9999

 防御力9999

 精神力9999

 素早さ9999

 命中力9999


 装備品

 女神の剣

 女神の盾

 女神の鎧

 女神の靴

 女神のペンダント


「うわっ……」


 ものの見事に頭の悪そうな数字が並んでいる。装備品も揃えてくれたらしい。これが女神の加護の力か。これでは相手が魔王でも苦戦のしようがないだろう。続いてスキルを見てみる。


 スキル

 全攻撃魔法習得・全言語能力習得・知覚特化・分析・無詠唱・自動回避・スキル奪取 etc.

 耐性

 魔法無効化・ステータス異常耐性・疲労耐性・衝撃耐性 etc.


 スキルがいっぱいあり過ぎて一覧で表示できない。女神さまも過保護なことだ。


「さて、これからどうするか」


 手持ちにあった地図を開くと自分の現在地が赤い点で示された。現在地から一番近い村まで50kmといったところか。


「しょうがない。歩くか」


 俺は異世界での慣らし運転ついでに村まで歩くことにした。途中で魔物と遭遇することもあるだろう。早めに戦闘に慣れておきたい。


 歩き始めて30分、とうとう初戦闘の時がやってきた。草むらの陰から緑色のぷよぷよしたものが飛び出してきたのだ。いわゆるスライムである。


「よーし。早速試してみるか!」


 俺は腰から剣を引き抜きスライムに向かって構える。


「おりゃーーーっ!」


 そのまま一直線に走っていき剣を勢いよく振り下ろす。スライムは身じろぎもできぬまま引き裂かれる……かに思えたが、剣が少し触れたところで粉々に弾けた。爆ぜた。爆散して蒸発した。


「ありゃりゃ。ちょっと力を入れすぎたか」


 それにしても凄い威力である。これなら向かうところ敵なしで命の心配もいらなさそうだ。俺は意気揚々と歩を進めることにした。




 3時間ほど経過した。時刻はお昼過ぎといったところか。お腹の虫が鳴り始めている。


「これ、ヤバいんじゃないか?」


 嫌な予感がし始めていた。先ほどから何度か食えそうな魔物に遭遇する機会があった。たとえ獣肉とはいえ肉は肉だ。背に腹は代えられまい。そう思って狩ろうとするのだが、どれもこれも粉々に爆散してしまう。どんなに手加減しても原形をとどめず、とても食えたものではない。

 では魔法はどうか。そう思い


「ファイアーボール!」


 と唱えたところで後悔した。己の体の3倍はあろうか。とてもボールとは呼べない炎の塊が地面を抉りながら魔物に向かって飛んでいき、消し炭にすると同時に辺り一面を火の海にした。もう二度と使うまい。とにかく獲物が狩れない。


「く、空腹が……」


 2時間後、一生懸命木に成っている果物と格闘する俺の姿があった。果物も手でもぎ取ろうとすると握り潰してしまうため直接口で食べる必要がある。もちろん腹は満たらない。


 さらに2時間後、地面に生えてる食べられる草と格闘する俺の姿があった。草も手で引っこ抜こうとすると粉々になってしまうため、直接口で食べる必要がある。食事のために地面を這う勇者の姿があった。


「人間の尊厳とは……」


 過ぎたるは及ばざるがごとし。俺は女神にそう言ってやりたくなった。



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女神への質問コーナー


Q なんでスキルに『空腹耐性』がないんですか?


A 空腹は最高のスパイスと言います。人間として食事をおいしく頂けるよう配慮いたしました。異世界の生活はいかがですか?一人でもご飯が食べられてますか?女神はとっても心配です。

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