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不良と遭遇

うへへへへへへ(発狂)

 昼休み。いつもは永守と一緒に教室の隅で食べている僕だが、四限目に体育のある水曜日だけは着替えずに体操服のまま体育館の裏で食べている。


 心地よく吹く風。夏特有の熱い午後の日差しは、体育館が遮ってくれる。大きな広葉樹の下に据え付けられた白い木製ベンチに腰掛けながら、先ほど自販機で購入したいちごみるくを一口飲んでからハンカチに包まれた弁当を広げた。


 今日の献立は焼き鮭、野菜炒め、つけもの、混ぜ込みご飯だ。鮭は減塩のものである。若いうちに体を大切にしないと、後から大変になるってじっちゃが言っていた。


 にゃあ。


 「今日も来たのか、シュレイディンガー」


 足元を見ると、目つきが悪い三毛猫がいた。珍しいことにこの三毛猫、《三毛猫》のくせしてオスなのである。


 尻尾で地面をたしたしとたたいている三毛猫は、餌を要求するのであった。


 「ほーれシュレイディンガー、焼き鮭だぞー?」

 「猫になんて名前を付けてるんだ」


 低い声、初めて聞く声だ。声をするほうを見ると、背の高い男子生徒がいた。ネクタイピンのが二年生のものだった。

 そして、鋭い目つき。これでもかと眉間によったしわは、どう見ても高校生のそれではなかった。むしろ、何人かすでに殺している目付きだ。割と整っている容姿が、余計にそう思わせた。


 「ひぇっ!? 不良!?」

 「出会い頭に失礼だぞ、後輩」

 「え、あ。ごめんなさい」


 確かに先輩がそういったとおり、出会い頭にこんなことをいうのは失礼だとおもったので、頭を下げて謝っておく。

 

 「それでいい、後輩。それより、どうしてそんな物騒な名前を猫につけてんだ」

 「シュレイディンガー? どこかのネット記事で、猫の研究をしていた科学者の名前だって」

 「確かに、それは間違いではないが……。猫を箱に入れて、半々の確率で殺すか生き残るかといった実験をしていた人物だぞ?」

 「うぇ!? そんな人だったの!? 名前変えようかな。うーん、オスカー?」


 新しい名前を考えてはみたものの、三毛猫はどうやら気に入らなかったらしく、ぷいと顔をそむけられてしまった。それを見た先輩が、ぶぶっと噴き出していた。


 もう、シュレイディンガーで固定なのか……。


 「ところで、先輩はなぜここに?」


 妙な気恥しさを隠しながら、先輩のほうへと向き直ってから質問をする。


 「その猫だよ、することもなかったんでな、ふらふらとついてきたらここへな」

 「へぇ、猫好きなんですか?」

 「まぁ、そこそこな。事情があって飼えないけど。というか、お前は俺と話していていいのか? 自分で言うのもあれだなんだが、悪人ヅラをしているだろう? 悪いうわさもあるしな」

 「猫好きに悪い人はいませんよ! それに僕は気にしないです」


 ちょっと食い気味にそういうと、若干ひきつった笑顔で、「おお、そうか。うれしいぞ」と言われた。


 ちょうど五分前の予鈴が鳴る。弁当も食べ終わったので片づけてベンチから立ち上がると、入れ代わりに先輩がベンチに寝転がった。


 「あれ、先輩教室戻らないんですか? 予鈴ですよ?」

 「俺は午後の授業の効率をよくするためのシエスタだ、ほれ、とっとといけ」

 「先進的ですね! って、さぼりじゃないですか!?」

 「人間には休息も大事なんだよ。遅れるぞ、はやくいけ。お前体操服のままだろ?」


 そういわれて自分の服を確認してみると、確かに体操服だった。


 「あ、早く着替えなきゃ。そうだ先輩名前教えてください、猫好き同盟ですよ!」

 「猫好きって……、俺は早瀬(いかづち)だ、後輩」

 「そうですか、僕は天羽睦月ですよ、同志先輩!」


 そう言い終わるか終わらないかで、僕は走り去る。


 しかし早瀬雷先輩か……。もしかして、鬼の雷? あのヤの付く職の方ともつながりがあって、もうすでに二、三人殺してからコンクリート詰めにして海に沈めたと噂の? ガチガチの不良じゃんか。ところで、ここは海の無い県なのに、どうやって沈めたのだろう。




 

懲りずに書き始めました。またそのうちに次話を上げます。

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