銀髪留学生、襲来(2)
やっとかけた。
久しぶりに描いた小説を見てみたらなーんか月刊週刊のランキングにちょっとのってたっぽい。ありがたやありがたやー。短期間に感想をくださった方が二名も!
インフル引いたのと検定が近いので次回も遅くなるかもしれない。
それと作者、イギリスなんてマシマズとか軍隊が最近よくなったけど弾の出る鈍器を担いでるとか現代で銃剣突撃したとかぐらいしか知りません。
日本と外国の差とか関係なくアイディアとか要望があれば感想下さい(感想乞食)
で霧だけ面白くなるよう頑張りますので、タイタニックに乗った気でいてください。
ことあるごとに菓子類をカゴに入れようとする妹に、お菓子は三百円まで、と言い放つと消費税まで計算してきっちりきっかり正確に上限ぎりぎりまでお菓子を入れる妹にあきれの溜息をつく。なんで普段はアホの子なのに、こういう時だけは計算が早いんだろうか。
そんな一幕もあり、無事に駅へとたどり着いた。
最近になって改装し、もともと古い民家の街並みや寺に神社なんかがあるからか、最近の田舎ブームからか外国からの観光客がやってくるので田舎と言う割には人は多く、このエリアだけは田舎っぽくはない。人に聞いた話だと、外国人の観光客には日本、山なんてグーグル先生に聞いてくる人もいるそうだ。確かにここは四方を山で囲まれているし、県外の親戚からはここは空が狭いなぁ、なんて言われる。
昔と比べ小奇麗になった駅のエスカレーターに乗りながら、如月に話しかける。
「で、駅のどこで待ち合わせ?」
「えーとね、祭のからくり屋台の模型のまえだってさ」
「ほいさ」
言われた方へと視線を向けると、そこには目的の人物がいた。
大きめのスーツケースをわきに置き、壁に少しもたれかかりながら立っている。
夏だからか、涼しげな短めの丈のワンピース。黒ベースのそれは、絹のような銀髪が良く映えていて深窓の令嬢を思わせた。外国人が珍しくないこの駅でも、彼女はひときわ際立っていた。そこには学校で永守に見せてもらった、銀髪転校生が居た。
どうやら妹は彼女と面識があったらしく、近寄って割と気さくな感じで話しかける。
「はーいシャーロットさん!」
「はーいキサラギ!」
呼びかけられた彼女は、妹の方を見て笑みを浮かべる。
満面の笑みでハイタッチする二人。まるで二人は、旧友の中の様で……
「おい如月。この人と知り合いだったのか?」
「知り合いっていうか、友達? 去年ぱぱの仕事先のイギリス行ったじゃん?」
「おん、そうだな。行ってたな」
「その時にどこ行こうかなーって迷ってたんだけど、シャーロットさんに出会って道案内とか観光地案内? してもらっちゃって、それがたまたまぱぱの知り合いの娘さんだったのよ。そのご縁もあって今回の話になったの。親同士が知り合いってのもあったけど、娘同士が友達ってのも決める理由になったみたいよ?」
「……何でうちの面々はホウレンソウができないのか」
「お兄ちゃん面倒くさいからってイギリス来なかったじゃん」
「いやそうだけども! そうだけどさー。イギリス行った時の土産話とかしてくれなかったじゃんか」
「え、しようとしたけどお兄ちゃん、受験で忙しいからって断ったじゃん」
「ほーりーしっと」
会話を続ける僕と妹に、おずおずと聞き出すシャーロットさん。完全に置いてけぼりになったせいなのか、その両目には少し涙をためている。
「キサラギ? こちらの人は?」
「あー、こちら、私のお姉ちゃんの睦月です」
「おい、さっきまでお兄ちゃんって言っていただろう。兄の睦月です、よろしく」
「キサラギにはお姉ちゃんがいたのね! シャーロット・アードレイです。お世話になります。これ、つまらないものですが」
「あ、これはどうも、って重ぉ!?」
そう言われて手渡されたのは山吹色の紙で包装されたお菓子。中身はなんなのか、妙にずっしりと重い。
そういえば、山吹色のお菓子って越後屋と悪代官の……
「まさかっ、賄賂か!? 賄賂なのかっ!」
慌てて開けてみると、そこにはスカ、と書かれた紙切れと目いっぱい詰まった石ころが。……石ころ? え、何で?
シャーロットさんの方を見上げると桜色の唇に指をあてがい、クスリと笑い綺麗な声で言う。
「越後屋、おぬしも悪よのう」
「それ、受け取る側のセリフだからね」
「えっ、こういいながら渡すんじゃなかったの!?」
「ちがうから」
家につくまでにシャーロットさんと軽く自己紹介をかわした。イギリスの大企業の重役の娘さんで、聞いた限りけっこうなお嬢様らしかった。シャーロットさんの一挙一動に気品を感じたのはそれが原因だろう。父親が言っていたように、日本語も問題なかった。むしろ、そこらの日本人より日本語について学んでいるのであろう。……少しずれているところもあるようだが。
家に着いた僕らは、とりあえずの荷物の整理としてシャーロットさんの寝床だけを確保する手伝いをし、家の案内だけを軽く済ませることにした。まぁ、同年代の年頃の女性なのだし、服なりなんなり異性には見られたくない物も多くあるだろう。
「こっちがトイレでその奥が風呂場。そのまま廊下に出れば、キッチンとかリビングに出るから」
一つ一つ丁寧にドアを開け中を見せながら簡単に解説する。家は少し珍しい三階建ての家で、三階から、ベランダと個室がひとつ、二回にはトイレと個室が四つ、一回にはユニットバスの風呂場、トイレ、ダイニングキッチンと仏間、客間がある。ちなみにユニットバスは別に風呂とトイレが一緒と言うことではなく、工場で作ったものをごっそり家の中に設置して出来た風呂の事だ。風呂とトイレ、ついでに言うと洗面台も一緒というタイプのものは三点ユニットと言う。
我が妹である如月は宿題があると言って部屋にこもってしまった。気まずいだろうが。初対面だぞ僕。
だが、予想に反してシャーロットは結構気さくに話をしてくれた。呼び捨てにしているのも、これから高校卒業まではとりあえず日本にいるとのことなので、その間は家族のように気さくに接してほしいと言われたからだ。特にお嬢様だからと言って、高飛車で人を見下している性格だという事もなかった。
「トイレ流すときはタンク横のこのレバーね」
「ねぇ、こっちのリモコンは何? しかも日本のトイレにはelectrical outletがあるの? 感電しない?」
そういってシャーロットさんは壁に取り付けられたウォシュレットや便座の温度調節のスイッチ、あと、壁の方にる電気系のケーブルや用を足した際に流す用の水をためるタンクの横についているパイプがあるあたりを指さしている。
エレクトリカル……とか何とか言っているから多分電気関係の事だろう。
「えれ……、何?」
「electrical outlet.あー…日本でいうー、コン…セント?」
「ああ、それね。と言うか、むしろイギリスにないんだ。冬場辛くない?」
「冬場のトイレは地獄ね。イギリスでは電気関係の物や配線は風呂やトイレにはおかないわ。水が掛って感電しちゃうじゃない。それでこのリモコンとelectrical outletは?」
再度質問してくるシャーロットに僕なりに噛み砕いた返答をすることにする。先ほどの会話で、彼女はこういう細やかな日本とイギリスの違いを楽しみたいと言っていた。現に今も目をキラキラと輝かせている。
「えーと、このコンセントはこっちの便座に電気をおくってて、今は夏場だから切っているんだけど、便座を温かくする機能があるんだ。で、こっちのリモコンはスイッチを押すと用を足す所に水をかけて洗浄する機能だよ。温度とか勢いも設定できるよ」
「おしり、って書いてあるのがそうなのね。でも、このビデ、っていうのと消音っていうのは?」
「えー、と。その、ビデっていうのは女性が用を足したときに、あー、ウン、前の方に水を充てるやつです、はい」
「へっ? そ、うなのね。言いにくいことを聞いてしまってごめんなさい。きさらぎにきくべきだったわ」
「いや、気にしてないから大丈夫」
そういうシャーロットの顔は少し朱がさしている。こういう顔もするんだなぁ、と、あって数時間しかたっていない僕が彼女の新しい面を見つけられたことに、少しばかりかうれしく思った。
こほん、と赤い顔のまま咳払いをして質問を続けるシャーロットさん。
「んんっ、じゃあこの消音の方はどうなのかしら」
「こっちは、小さい方とかする時にどうしても音が出ちゃうじゃん。その時にこのボタンを押すと、水を流すときの音が再生されて、音をかき消すことが出来るの」
「小さい方? 小さい方って何かしら」
ああ、これも知らないのか。日本のトイレ事情を女性に伝えるなんてなんという羞恥プレイなんだこれは。Mではない僕の心が悲鳴を上げる。
しかし、言わないわけにもいくまい。あのクソ親父に任されたと言う事は、しっかりと面倒を見ろと言う事なんだろうし。
「えと、その、お、おしっこ」
「へっ、はっ、そうね! たしかに音が出てしまうものね! でも自然の音なのだから恥ずかしがること何で無いんじゃないかしら!? 日本人はシャイだと言われているけれど、ここまでシャイにならなくてもいいんじゃないかな!?」
元の顔色に戻ってきたシャーロットだったが再び赤くなる。耳まで真っ赤だ。そして、トイレを出てすぐにある脱衣所兼洗面所に置いてある鏡に映る僕の横顔も、同じくらいまっかっかだった。
顔を赤くしたまま黙ってうつむいてしまうシャーロットさんに、僕もかける言葉を失う。この状態は妹が階段から降りてきて、「トイレで何やってんのお兄ちゃん。晩ご飯作ってよ」と言う声がかけられるまでの間、ずっと続けられるのであった。
評価と感想くれたら多分おそらくメイビー次話が早く上がる可能性があるかもしれない。
誤字脱字があれば報告下さるとうれしいのです。