告白(作:柴野まい)
必死で走り、展望台に到着した。
展望台にはそこそこに人がいて、俺のように息を切らしているやつは場違いだった。
展望台を見渡すと、端の方に芽衣がいた。
俺に声をかける資格はあるのかと一瞬葛藤する。
でも送り出してくれたあいつのためにも、俺は芽衣に声をかける。
声をかけると彼女は笑顔で、でも困ったような表情を見せた。
「はじめくん……」
「あの!俺はお前に言わなきゃいけないことがあるんだ!」
その言葉にびくりと体を震わせる芽衣。
「今まで無神経なことばかり言ってごめん。幼馴染だからって甘えすぎた」
そんなことを言われた芽依は目を丸くして、そして漫才を見たかのように笑う。
「そんなこと? そんなの転校生くんの初対面の人に対する態度に比べたら全然だよ」
「ああ、あの歯の浮くようなキザなセリフと動作……あれはやばい……」
思わず同調してしまった。
って、そうじゃない!
「その、小無音からお前がここにいるって聞いて、俺、言わなきゃいけないことがあって」
我ながら要領を得ない言葉だ。
さっきと同じこと言ってるし。
ほら、芽衣もぽかんとしている。
「俺はお前が好きだ! 幼馴染とか、おっぱいとかそういうところも以前多少はあったけど、俺は昔から優しいお前に惹かれたんだと思う」
しどろもどろになりながらも言葉をひねり出す。
「俺と付き合ってくれませんか」
言えた! 言えた!
心臓バックバクだし、走ったせいで口内乾燥していて、ちゃんと言えているのか自分でもよく分からないけど!
芽衣の方を見る。
そこには驚き、でも向日葵のような笑顔の女の子がいた。
ああ、俺の心臓がもたないな。
この笑顔で断られたらどうしようと不安がよぎる。
俺の強靭なメンタルでも立ち直れない気がするぞ。
「一くんはいつも幼馴染として私のそばにいてくれて、優しくしてくれて、でも胸のことばかり考えているよね」
ディスられた……。
「正直、小無音ちゃんのことが羨ましかったんだ。彼女が私の理想の幼馴染像。壁なんてないかのように接するあの平等さが。私は彼女の平等さのおかげで今ここにいられるんだ。幸せになりなさい、って。小無音ちゃんには一生頭が上がらない気がする」
そう言って俺の汗まみれの手を掴む。
「私も一くんのことが好き。不束者ですが、よろしくお願いします」
笑顔が目の前にある。泣き笑いだけれど。
俺も泣きたい。
周りからはまばらな拍手が送られる。
展望台の端で繰り広げられている俺と芽依の告白劇に、リア充爆発しろ!末永くお幸せに!という声も。
でも、展望台の端で俺たちは結ばれたんだ。
空の上からは、俺たちを祝福するかのように太陽が辺りを照らしていた。