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ラノベっぽい恋愛リレー小説  作者: 黒鏡スキ→髭虎→柴野まい→小鳥遊賢斗→∞
5/7

不器用だから(作:髭虎)

 ウロウロと、俺はベンチの近くを落ち着き無く動き回っていた。

 幼馴染からの連絡を待って十数分。手の中の携帯は、いまだ震えない。


「はぁ……どうすりゃよかったんだろうなぁ」


 あいつは──子無音は、俺にとってただの仲の良い友だちだ。バカ話をして、一緒にふざけあって、振り回して振り回されて。女の子として意識したのも、もしかしたら今日が初めてで。そりゃ嫌いなわけじゃない。でも、だからっていきなり告白されても俺は頷けなかった。頷けるわけがなかった。


 あぁ、きっと俺はひどい男なんだろう。

 あいつに目の前で告白されて、そこで思い浮かんだのは俺の幼馴染──芽衣の顔だったんだから。ちゃんとあいつを見て答えてあげられなかったんだから。


 そこまで考えたところで、不意に手元の携帯がピロンと通知音を吐き出した。

 慌てて開いた画面には、小無音・A・ツンデリアの文字。思わぬ相手に俺は内心凄まじく動転しながら、ゆっくりと通知をタップする。


『今日は、なんかごめん』


 情けねぇな、俺。

 勇気を出したあいつに、謝らせてしまった。その事実に頭が一気に冷えていく。


 ここで間違えたら一生後悔する。そんな確信があったから。

 俺はいつもの倍くらいの時間を掛けて、返信の言葉を打つ。

 

『謝るなら俺の方だよ』


『なら、私とまた友だちに戻ってくれる……?』


『俺の方からお願いしたい。

 こんな俺だけど、仲良くしてください』


 打ってから、今度はしばらく返事がなくて。

 早打つ心臓。背中を伝う嫌な汗。断られたらどうしようなんて考えながら……ピロン、と。返ってきた返事を恐る恐る覗き込む。


『そういうとこだよ、この女たらし』


 ひどい言いがかりだった。だけどあいつは抗議すら許してくれないらしい。俺が文字を打つより先に、あいつから短いメッセージが飛んでくる。


『でもまあ、うん。いいよ』


 思わず、指が止まった。

 相変わらず不器用で、それでいてどこか分かりやすい。文面から伝わってくる強がりに、今のあいつの顔が簡単に想像できてしまう。


『乙灰が好きな人は、私じゃなくて芽衣ちゃんみたいだからね、そこはもうすっぱり諦める。

 だから、これはお前の友だち(・・・・・・)としてのお節介』


 きっと泣いている。

 俺が泣かせた。だから、こんなにしてもらう資格なんて俺にはないのに。


『展望台に来て。そこで、芽衣ちゃんが待ってます。お前も告白してフラれてしまえ!』


 あぁほんとに──不器用なやつだなぁ。


 すぐに行く、と返信して。

 俺はあふれる気持ちを吐き出すように、遠くに見える展望台へと駆け出した。


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