また明日っ!(作:髭虎)
「はぁ……」
俺、こと乙灰 一は机に頬杖をついて黄昏ていた。アンニュイでニヒルな雰囲気を醸し出していた。意味知らんけど。
金曜日の朝ってこう、体が疲れてるんだよなぁ。昨日の告白事件のせいもあるかもしれない。
おかげでやたらと幼馴染を目で追いかけてしまう。いや、それは割といつものことか?
「おはよー、乙灰」
「おー……」
とりあえず俺は自分に芽生えた想いを確かめるため、他のおっぱいへと視線を移してみた。
「おーい、聞いてるかー?」
「おー……」
大きいもの、小さいもの、普通のもの。
上向いたもの、垂れたもの。
柔らかそうなもの、ハリのあるもの。
ウチのクラスは精鋭ばかりか!? 素晴らしいっ! 素晴らしい……はずなんだが、うーん何だろ、この何かが違うっていう感覚。いつもならこれで満足できるんだけど、すんごいモヤモヤするわ。
「はぁ……」
「おーい」
ん? 今、俺の目の前にあるやつは相当小さいぞ。まるでまな板だぜ! はっはっはっは――
「胸じゃなくて顔見ろやー!」
「うおぉっ!?」
瞬間、グリっという音ともに俺の視線は無理やり目の前の少女の顔へと固定された。
「痛い痛い痛いっ! ちょっ、今俺の首から鳴っちゃダメな音がした! 絶対ダメなやつした!!」
「おっと、加減ミスっちまった」
「おま、ばっか、このやろぉ」
痛ぇ、普通に涙出てきた。やっぱり貧乳にロクな奴はいねぇよ間違いない。
あ、でも流石に心配して首さすってくれるとこはポイント高いぞ。
「死んでる……」
「人の首で遊ぶな!」
前言撤回だ。このクソ貧乳め。
「で、何の用だよ?」
「えっと、お前って明日暇だったりするか?」
「ん? まぁ、一応なんの予定もないけど」
「そうか! じゃあ明日ちょっと付き合ってくれよ」
そう言ってこいつが取り出したのは最近話題になってる映画の割引券だった。
「おー、『ロボット転生〜全てを貫くチクビーム〜』か。これどうしたんだよ?」
「いや、友達に押し付けられたんだけどよ……え、なんでそんなに興味津々なんだお前」
自分から誘ったくせに、何で俺が引かれてるんだ……。まぁいいや、ちょうど気になってた映画だしな!
「あ、あとさ!!」
「うぉっ!?」
ちょっ、いきなり大声出すなよな。周りからめっちゃ注目されてるんだけど! 謎の羞恥プレイが始まったんだけど!?
「つ、ついでに服とか、色々見たいんだけど……」
「お、おう」
要するに……ただの買い物?
「別にいいけど……?」
「よっし、決まりだな!」
うーむ、分からん。何をためらってたんだこいつは。
頭に疑問符を浮かべながら、俺は自分の席に戻っていく彼女を呆然と見送っていた。
って待てぇい! この周りの状況をどうにかしてからいけよ、お前!!
そんな俺の想いが届いたのか、彼女が最後に振り返る。
「じゃあ、また明日なっ!」
「お、おー」
違う違う違ーう!
ていうか、まだ1時間目も始まってないんだが!?
その後、なんとなく授業に集中できないまま俺はこの日を終えるのであった。