ときめく胸に(作:黒鏡スキ)
始まりは、おっぱいだった。
ってこれじゃ変態っぽいな。
「ん? どうし……ってどこみてるのぉ! えっちぃ」
と、いけないいけない。
最近幼馴染みの成長がすごいからつい見てしまうんだ。
ずいぶん前から身長は止まってるんだけどな。
「その生暖かい目はなんなのさぁ。もぉ。どっちも気にしてるのにぃ」
「ごめんごめんって」
頭を両手で押さえてぷくっと頬を膨らませる彼女。
さりげなく胸を隠そうとして寄せてしまっている。あざとさ80ポインツっ!
ってそんなことより機嫌をどうにかしないと。
俺はそんな彼女の頭をポンポンっと手を置くような形で叩いた。
「むぅ」
いつも通りに彼女は両手をどかし、目を瞑りながら顔を少し上げて「なでてー」と自己主張。
当然、俺は撫でる!
付き合いの長い幼馴染みは大体これで不機嫌スイッチをオフにするからだ。
だけどーー
「はぁ……」
と、最近はため息をつかれる。
解せぬ! そして、悔しい!
まだ撫で力が足りぬか!
最近、妹で練習をしているのに一向に成果がでない。
子供の時みたいに二パーっ、と笑って欲しいものだ。
いや、高校生も子供のうちにはいるんだっけか。
まぁでも、今日の俺はひと味違うぜ!
「そういえば! 昨日きた転校生すごかったよな! あの金髪、地毛らしいぜ!」
秘技! 一方転換≪カエラレーター≫!
勢いにまかせて話のベクトルを変化させることで、あらゆるものリセットすることができる。
彼女の反応はいかに!
「はぁ……」
南無さーん! もうわからない!
最近の幼馴染みわからないわ!
悩みがあるとかか? でも、それなら普通に相談してくるしなぁ。前までは。
そういえば、最近は悩みどころか愚痴さえも聞いてない気がするぞ。
あーもーわからない!
帰ったら妹に聞こう。そうしよう。
「私……ダメ……す……。うぅ」
隣の幼馴染みがぶつぶつと俯きながら歩く。
前を見てないから危ないと思うのは俺だけだろうか?
まぁ、こういう事が続くようになってから車道側を歩くように意識し始めたりした。
意外とドジな面があるからな。
その分俺が気をつけなければいけない。
普段から一緒に登校しているが、これといって大きな変化は無い。
いや、無かった。今日までは。
学校につく少し手前あたりでそいつがいた。
金髪転校生。
そいつは、俺達を。幼馴染みを見つけると近寄ってきてーー
「おはよう。麗しの姫君。早速だが、君が好きだ。僕と付き合ってくれ」
手をさしだして告白。
いろいろとツッコミ所はある。
麗しの姫君~とか。
朝っぱらから告白~とか。
いろいろあるけど、俺はそんなことよりも気になることがあった。
胸がもやもやするんだ。
初めての感覚で……何か、嫌な予感がする。
その何かを探すように、彼女の方を見る。
口をあけて放心状態になっていた。
俺はそんな彼女の顔から視線を下の方へ移す。
胸。おっぱい。
すくすくと成長しはじめ、大きくてふわふわで柔らかそうな、俺が最近一番気になっている。
おっぱい。
それが無くなってしまうんじゃないか。
遠くへ行ってしまうんじゃないか。
奪われてしまうんじゃないか。
俺は再び彼女の顔をみて、胸がズキっと痛む。
そして、気づいた。
俺は幼馴染み(のおっぱい)が好きなんじゃ無いか。
そう思った瞬間、俺の体は勝手に動いてーー
パシーン
金髪転校生が差し出していた手をはたいていた。
始まりは、おっぱいだった。